第392話 爪が真っ黒

 「〈タロ〉様、入りますわ」


 「お邪魔します」


 「〈サトミ〉が、ゴシゴシしてあげるね」


 三人が、スリップ姿で浴室に入ってきた。

 〈アコ〉と〈クルス〉は、ちょっと顔が赤い。でも、〈サトミ〉はそうでもないな。

 ニコニコ笑っている。僕を洗えるのが、そんなに嬉しいのか。


 僕は、先っちょを見ないようにしつつ、先っちょを捜すという、アクロバティックな視線を三人に送っている。

 どう考えても、これは破綻しているな。


 「はぁー、〈タロ〉様。目の動きが、とっても気持ち悪いので、もう見ても良いですわ」


 「そんなに変な目の動きをされますと、頭が痛くなりますよ。今さらですから」


 「あはぁ、〈タロ〉様。照れてるの」


 そうなんだ。何だよ。僕が一番気にしてたのか。ちょっと情けないぞ。


 僕は視線を先っちょに固定して、手探りで湯船から出た。

 ただ、三人いるから、視線は定まらない。

 それに大切なことがある。あそこを、タオルで隠すことを忘れてはならない。

 タオルは僕の生命線だ。何と言っても、自信がないからな。見られたくない。


 「〈タロ〉様、私は爪を洗いますわ。手を私に預けてください」


 〈アコ〉は、女の子座りをして、僕の手を太ももに置いている。

 〈アコ〉のムッチリと熱い肌の感覚が伝わってきた。

 それから、〈アコ〉は石鹸を手に取り、手の平の内側で、泡を作り出し始めるようだ。


 もちろん、「石鹸もどき」じゃない。本物の石鹸だ。泡に脂は浮いてない。


 〈クルス〉も、女の子座りで、まず泡を立ててようとしている。

 〈サトミ〉は、タオルを泡立てて、僕の背中を洗ってくれるつもりのようだ。


 「〈タロ〉様、こっちの手で、私に手にある泡をかき混ぜてください」


 手の泡をかき混ぜると、〈クルス〉は、くすぐったそうに目を細めている。


 「〈サトミ〉は、背中を洗うね」


 〈サトミ〉は、「うんしょ」って言いながら、思ったとおり背中を洗ってくれ出した。

 人に洗って貰うと、何でこんなに気持ちが良いのだろう。〈サトミ〉だから、そう思うのかな。

 〈アコ〉は僕の手を太ももから上げて、出来た泡に持っていった。


 「〈タロ〉様、私の手を引っ掻くように、爪の中を洗うんですよ」


 「私の手にも、爪を立ててくださいね」


 今、僕は背中を〈サトミ〉に洗って貰っている。

 そして、爪を〈アコ〉と〈クルス〉の手の平で、洗って貰っている状態だ。

 三人に奉仕されているようで、王様の気分になるな。


 ただ、手を上げている状態なので、しばらくすると、両手が疲れてきた。


 「もう、爪は良いかい。少し腕が疲れてきたんだ」


 「そうですか。洗えたか、確認しますね」


 二人は、手の泡を湯で流して、僕の爪の中を見ている。


 「まあ、良いでしょう。見た感じ綺麗になりましたわ」


 「こっちの手も、泥が取れています」


 僕も、自分の爪の中を目を凝らして見てみた。

 確かに、僅かにあった薄い灰色の汚れは、しっかりと取れているようだ。


 流した湯で濡れため、二人の先っちょは、目を凝らさないでもハッキリと見えている。

 当たり前だけど、灰色ではない。ポツンと二つ、薄いピンクだ。

 白いスリップが、ほぼ透明になって透けて見えるのは、裸よりエロいぞ。


 僕のタオルが、三角形のテントを張ってしまう。一人用のテントサイズだ。

 ソロキャンプしか、出来ない大きさが悲しい。今までは、夜はずっとソロだ。

 いつになったら、ツインで寝られるんだろう。

 

 後ろを振り返って、〈サトミ〉を見ると、ちょうど泡が胸に二個ついている。

 これは意図的に隠しているのだろうか。聞いてみたいところだ。


 「〈タロ〉様、前も洗うね」


 「えっ、前はいいよ。自分で洗うよ」


 「だーめ」


 〈サトミ〉は、僕の言葉を嬉しそうに無視して、胸を洗い出した。


 〈サトミ〉は、僕の背中に身体を密着させて、胸をゴシゴシ洗っている。

 密着しないと手が、胸まで届かないようだ。

 でもだ。おっぱいが、当たりまくっているぞ。意図的じゃないのか。

 背中で、柔らかいのがクニクニと動いている。テントが、高くなってしまうぞ。


 「〈タロ〉様、気持ちが良い」


 「うん。気持ちが良いな」


 〈サトミ〉は、「うんしょ」「うんしょ」と言いながら洗ってくれている。

 でも僕は、背中のおっぱいのことしか、頭にはない。

 僕は、今、おっぱいで背中を洗われているんだ。胸を洗われている感覚は、どこにもない。

 今の状態は、もちろん、気持ちが良い。背中が。


 「きゃー、〈タロ〉様。大変ですわ」


 「まあ、爪が真っ黒です」


 「えっ、何のこと。爪はさっきまで、洗ってたじゃないか」


 「何のことって、見たら分かるでしょう。足の爪が、こんなに汚れていますわ」


 「手の爪の泥で、気づくべきでした。足の爪は、もっと危ないと」


 「えっ、危なくないし、そんなに汚れていないよ」


 「〈タロ〉様の目は、節穴ですわ」


 「良くそんなことを言えますね」


 〈アコ〉と〈クルス〉は、石鹸を泡立てて、僕の足の爪を洗い出した。

 ぶつぶつと何かを呟きながらだ。ふーん、そんなことで怒られても。


 「ひゃぁ、くすぐったいよ」


 「我慢しなさい」


 「動かさないで」

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