第372話 あまり変わらない

 対等になれる日は、来るのだろうか。


 〈アコ〉は、僕が少し考えているうちに、素早く服を着てしまった。

 着る時には、どうしてだが、おっぱいを手で隠してはいない。

 少しの間、おっぱいが丸見えになっても、〈アコ〉は微笑んでいたように思う。

 僕に見られることより、スピードを優先したんだろう。

 それか、僕に見られても気にしなくなったのか。

 見れるのは良いけど、平気になられるのは、どうなんだろう。


 僕達は、「二年生になっても、あまり変わらないな」と話をしながら、事前に買ってきたお弁当を食べた。

 お茶は、〈アコ〉が用意してくれている。


 「〈アコ〉、口移しで、お茶を飲ましてよ」


 僕は、〈アコ〉を横から抱きしめて、耳元でお願いしてみた。


 「もう、〈タロ〉様、良いですけど。あまり時間はないですよ」


 〈アコ〉は、お茶を口に含んで、僕の唇に唇を合わせてくれた。

 僕は、〈アコ〉の唇ごとお茶をずずっと吸い出す。

 手は部屋着の中へ差し込んで、〈アコ〉のお尻を撫でてみる。お尻も良いな。

 こっちも手に吸い付いて来るぞ。ただ、タプタプじゃなくて、ブルンブルンって感じだ。

 巨尻だからな。


 「きゃっ、スカートの中に、手を入れないでください」


 「ダメかい」


 「んんう、良いとは言いませんわ」


 ダメとは言わないので、良いってことだな。


 「あっ、下着の中に手を入れるのは、ダメですわ」


 「ダメなの」


 「はい。絶対ダメですわ」


 「〈アコ〉のお尻は素晴らしいから、もっと触りたいよ」


 「んんう、いくら褒めてダメですわ。今は、下着の中までは許しません」


 「今は」


 「そうですわ。それに、もう時間がありません。私を送ってください」


 確かに、もう〈クルス〉を迎えに行く時間だ。

 この次に期待をしよう。



 〈クルス〉と、屋根裏部屋に上がってきた。屋根裏部屋の温度は、午前中より上がっている。


 二つの拠点は、議論と意気込みが、熱くなり過ぎているんじゃないのか。

 そんなに熱いと、ふとしたことで火傷しちゃうと思う。ほどほどにしておいて欲しいな。


 僕が服を脱いで。上下の下着姿になった時、ふと〈クルス〉を見た。

 〈クルス〉は、部屋着に着替えようと、スリップ姿になっている。


 もう、僕に向こうを向いて欲しいとは言ってこない。

 スリップ姿を僕に見られても、そんなに気にならないのだろう。

 裸の上半身を見せているので、今更なんだろうな。


 僕はスリップ姿の〈クルス〉を、背後から抱きしめた。

 午前中に湧き上がった衝動で、我慢出来なかったんだ。

 午後の相手になったことが、災難だと〈クルス〉は諦めて欲しい。


 「きゃっ、〈タロ〉様。何をなさるのですか」


 「ずっと、〈クルス〉を抱きしめたかったんだ」


 「それは嬉しいのですが、着替えるまで待ってください」


 「いや、待てないよ」


 〈クルス〉の頭を手で傾かせて、強引にキスをした。


 「きゃっ、また強引ですね」


 「怒ったの」


 「私を見て分かりませんか」


 どういうことだろう。〈クルス〉は僕に寄りかかって、顔を向けている。

 その表情は、笑ってもいなし、怒っているようにも見えない。良く分からないな。

 考えているうちに、目の前の耳が気になってきた。


 「いゃっ、〈タロ〉様。耳にキスしないで」


 〈クルス〉は、慌てて僕から離れた。これは僕でも分かる。もうしないで欲しいと言うことだ。  

 それだと、さっきは続けて、キスをするべきだったのだろう。僕は悪くない。

 〈クルス〉の綺麗な形の耳が、いけないんだと思う。


 「怒ったの」


 「はい。耳はいけません」


 〈クルス〉はそう言いながら、部屋着を着てしまった。残念だ。

 もっとスリップ姿を見ていたかったな。僕は何か失敗したんだろう。


 「〈タロ〉様、座りましょう。聞きたいことがあるのです」


 「何が聞きたいの」


 「噂で聞いたのですが、魔獣の討伐に行かれるのですか」


 「そうだよ。《黒鷲》の伝統行事だそうだ」


 「必ず行かなくては、いけないのですか」


 「そうなんだ。逃げれば一生、悪評が付き纏(まと)うらしいんだよ」


 「私は、とても心配なのです。〈タロ〉様は、私のために魔獣を討伐されました。でも命が危なかったのですよ」


 「でも、今回討伐に行く《大泥ウサギ》は、魔獣だけど危険じゃないんだ。死ぬようなことは、ないらしいよ。武体術の授業だからな」


 「それは、そうなのでしょうけど。心配になります」


 「〈クルス〉に貰った、お守りがあるから大丈夫だよ」


 「私のお守りですか」


 「そうだよ。これには、〈クルス〉の真心が、詰まっているんだろう」


 「そうです。私は一杯入れました。溢れるぐらい入っています」


 〈クルス〉が、僕にしがみ付いてきたので、僕も〈クルス〉を抱きしめた。

 〈クルス〉は、「〈タロ〉様」と言って僕の顔を見詰めてくる。

 僕は〈クルス〉の唇を、優しく包むようにキスをした。

 そして、〈クルス〉の唇を一杯吸って、音をたてた。

 屋根裏部屋には、僕と〈クルス〉が唇が吸い合う、熱い音が鳴っていたと思う。

 たぶん、温度は三度上昇したはずだ。〈クルス〉のうなじに、汗が流れたのが、その証拠だ。

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