第370話 伝統に背く

 そう思っていたら、新学期早々、武体術の授業で《大泥ウサギ》の討伐が計画されていた。

 夏になったら、泥が悪臭を放って、とてもじゃないが生息地へたどり着けないらしい。

 おまけに、生息地はかなり遠方にあって、そこまで行くだけでも大変なようだ。

 あぁー、そんな場所に行きたくないな。


 「二年生の諸君。今学期の武体術の授業は、ズバリ《大泥ウサギ》だ。それ以上でも以下でもない。くれぐれも伝統を重んじて、逃げ出さないようにしてくれ」


 新学年の最初の授業で、何とも気が滅入る話をしやがる。テンションが、だだ下がりだ。


 「先生、逃げたらどうなるのですか」


 さすが〈フラン〉だ。物おじせずに何でも聞くな。


 「評判が落ちると思う。困難に挑むという《黒鷲》生の、伝統に背くことになるんだ。逃げたという事実が、一生ついてまわるぞ」


 ひゃー、何てプレッシャーをかけるんだよ。これは、過去に逃げたヤツいるんだな。

 逃げるのは、デジタルタトゥーみたいなもんじゃないのか。

 一生消えることがない悪評が、泥にかかっているんだな。




 気が重いまま、休養日を迎えた。

 今回の休養日の午前中に相手をしてくれるのは、〈アコ〉だ。

 ぜひ、大きなおっぱいで僕を癒して欲しい。


 一階の〈南国茶店〉の暖炉と、二階の拠点も二部屋とも、暖炉を焚いているのだろう。

 屋根裏部屋は、三つの暖炉の熱風が煙突に集まって、熱いくらいになっている。

 僕と〈アコ〉は、部屋着に着替えたけど、冬なのに汗をかくほどだ。

 〈南国茶店〉は繁盛しているんだろうし、二つの拠点は熱い議論を戦わせているんだろう。


 「〈タロ〉様、聞きましたわ。魔獣の討伐に行かれるのですね」


 「そうなんだ。《大泥ウサギ》なんだよ」


 「〈タロ〉様、お身体だけは大事にしてくださいね。私のお守りは、まだ持っていますか」


 「もちろんあるよ。討伐にも、必ず持っていくよ」


 「ふふ、そうですか。私は祈っていますわ。だから〈タロ〉様は大丈夫です」


 「おっ、僕は大丈夫なの」


 「そうに決まっていますわ。〈タロ〉様は、必ず私のところへ、帰ってきてくれます」


 「それはそうなんだけど。《大泥ウサギ》は魔獣だけど、それほど危険じゃないらしい。それより、泥で心がやられるらしいんだ」


 「まあ、泥なんですか。どんな泥か、想像がつきませんね」


 「そうだよな。僕も想像出来ないんだ。でも、〈アコ〉に貰ったお守りがあるから、乗り切れると思っているんだ」


 「〈タロ〉様、私、嬉しいですわ」


 こう言いながら、〈アコ〉は僕の方に顔を向けてくる。

 これは私に、何かしなさいというサインだろう。

 僕は、横に座っている〈アコ〉を抱き上げて、膝の上に乗せた。


 「きゃっ、〈タロ〉様。また私に、こんな格好をさせるのですか。こんなに足を開くのは、恥ずかしいんですよ」


 「でも、この体勢にすると、一番〈アコ〉の顔が見えるんだ」


 〈アコ〉の顔は、僕の目の前にある。ぷっくりとした唇が、少し開き気味になっていると思う。

 でもそれより、何と言っても、メロンおっぱいが、直ぐ近くに二つも鎮座されておられるぞ。

 早く、御尊顔を拝ませて頂きたいものだ。


 「んんう、近過ぎるのも恥ずかしいですわ。そんなに見ないでください」


 「そう言わずにもっと見せてよ」


 僕は〈アコ〉の耳元で囁(ささや)くように言った。


 「はぁん、〈タロ〉様、また耳元で囁くんですね」


 「〈アコ〉は、こうされるが好きなんだろう」


 好きかどうかは知らないが、こうすると〈アコ〉の抵抗が弱まるのは、分かっている。

 そうすると、やっぱり好きなんだと思う。〈アコ〉の感じるポイントなんだろう。


 「はぁっ、お願いですわ。もうよしてください」


 耳元で囁くのは効果があると思うけど、僕としては、あんまり楽しくはない。

 低くした声で話すだけなんだ。もっと、直接〈アコ〉と触れ合いたい。


 「仕方がないな。それじゃキスをするよ」


 「はい。待っていたんですよ」


 目をつぶった〈アコ〉の唇に唇を重ねた。〈アコ〉の唇は少し熱くなっている。

 顔も熱い感じだ。さっき耳元で囁いた時に、真っ赤になっていたから、そのせいだろう。

 それに部屋も暑いしな。


 もっと触れあいたいから、〈アコ〉の部屋着の裾から手を入れて、スリップ越しにおっぱいを揉んでみよう。

 揉んでみたら、今日の〈アコ〉が着ているスリップは、いつもと違っているのが分かった。

 胸元が、大きく開いているんだ。僕の手が、〈アコ〉の素肌に沢山触れている。

 これじゃ、もうスリップとは言えないかも知れない。

 名称は知らないけど、セクシーランジェリーの一種だと思う。


 僕は大きく開いた胸元から、〈アコ〉のおっぱいへ向けて手を侵入させた。

 隙間(すきま)から入れたので、自由度は少ないけど、先っちょにも触ることが出来る。


 「はぁん、〈タロ〉様、隙間から手を入れるのですね」


 「嫌かい」


 「下着が伸びてしまうので、嬉しくないですわ。これ、高かったんです」


 「そうなのか」


 「〈タロ〉様、そんな悲しそうな顔を、しないでください。下着を脱ぎますから、その方が良いでしょう」

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