第352話 受け止める

 「そうなんだ」


 「でも、今は諦めてはいません。私は欲が出てきました。一杯溢れています。〈タロ〉様、こんな欲深い私を、受け止めて頂けますか」


 「喜んで、〈クルス〉の全てを、受け止めるよ」


 その代わり、僕の出すものも喜んで受け止めてくれよ。一杯だぞ。


 「信じて良いのですか」


 「決して嘘じゃない。〈クルス〉が好きなんだ」


 たぶん、好きだと思う。〈クルス〉を、自分のものにしたい気持ちは、とても強い。

 誰かに渡すつもりは、これっぽっちもない。


 「あぁ、私も〈タロ〉様が好きです。私を離さないでください」


 僕は抱きしめたまま、〈クルス〉にキスをした。〈クルス〉の唇を割って、舌を絡ませた。

 〈クルス〉も、少しだけ舌を動かしている。

 〈クルス〉の額には、僅かに皺がよって、何かに耐えているようだ。

 でも、キスは止めようとはしない。


 僕は、もっと〈クルス〉を感じたくて、感じさせたくて、ブラウスのひもに手を伸ばした。

 ただ、キスをしながら片手では、上手くひもを解(ほど)けない。


 「うふ、わんちゃんの指では、ひもが解けないのですね。不器用ですね」


 「そうなんだ。解けないんだよ」


 「それでは、諦めるしかないですね」


 「そんな。解いて見せてくれよ」


 「えぇー、見せるって、裸をですか」


 「少しだけだよ。良いだろう」


 「良くないです。そんなの恥ずかしいです」


 「恥ずかしくないよ。僕の欲望を叶えて欲しいいんだ」


 「どうしてもですか」


 「うん。〈クルス〉のが見たいんだ」


 「ふぅ、私も「〈タロ〉様の欲を受け止めろ」って言うことですか」


 〈クルス〉は、少し強張ったような顔で、ブラウスのひもを解き始めた。

 顔は、不思議に赤くない。強張って白いままで、俯いている。


 ブラウスをはだけて、スリップをごそごそと、たくし上げている。

 首近くまでスリップをたくし上げたら、真っ白な〈クルス〉のおっぱいが、ぽろんと姿を現した。


 「うっ、〈タロ〉様。これで良いでしょうか」


 おっぱいを僕に見せているので、さすがに〈クルス〉は真っ赤になっている。

 恥ずかしそうな素振りが、とてもいじらしい。もっと、色んなことを要求したくなる。

 どこまでも、強要しそうで自分が怖い。〈クルス〉は、どこまで受け止めてくれるのだろう。


 「良いよ、〈クルス〉。すごく綺麗だ」


 僕は引き寄せられるように、〈クルス〉のおっぱいに手を伸ばした。

 白い乳房に、青い静脈が走っている。それを僕はゆっくりと指で触った。そして滑らせた。


 〈クルス〉が、ビクンと身体を振るわせて、「〈タロ〉様、触っちゃだめ」と消えるような声を出した。

 僕は聞こえなかった振りをして、おっぱいを優しく揉んでみた。

 きめ細やかなんだろう。しっとりとして、柔らかくて、そして張りもある。


 「ひゃん。そこを触るなんて、あんまりです。もう見せるのは終わりです。家の人達が、帰ってくる時間なので、これ以上はいけません」


 揉み続けているうちに、先ちょに触れてしまったみたいだ。

 〈クルス〉は、スリップを下に降ろして、おっぱいを隠してしまった。

 もっと見たいし、触りたい。これじゃ、欲求不満の塊だよ。塊がどこかで、詰まってしまう。


 だけど、無理は禁物だ。

 恥ずかしいのに、おっぱいを見せてくれた、〈クルス〉の気持ちを良く考えよう。

 そしたら、次も見せてくれるし、もっと長く揉ませてくれるはずだ。

 楽しみが膨らむな。あそこも膨らむな。


 「〈クルス〉、ありがとう。すっごく綺麗な胸だったよ。信じられないほど美しいから、正直感動してしまったよ」


 「もぉ、〈タロ〉様。褒め過ぎです。褒めたら、また見せると思っているでしょう。その手には乗りませんよ」


 〈クルス〉は、疑いの目で僕を見ている。やっぱ、賢いわ。

 小賢しい僕の策略なんて、全てお見通しなんだな。


 でも、僕は負けないぞ。

 例え、僕の頭脳では太刀打ち出来なくても、命のある限り足搔き続けるぞ。

 それが僕の譲れない矜持だ。そして、それがいつか明日のおっぱいを呼ぶんだ。


 「そんなことは、決してないよ。〈クルス〉の胸が、美しいのは揺るがないんだ。それに、恥ずかしいのを、僕のために我慢してくれたんだと思う。感謝しているよ」


 「ふぅ、もう止めてください。洗脳されそうで怖いです」


 「えぇ、洗脳。人聞きが悪過ぎるぞ」


 「でも、そうでしょう、〈タロ〉様。私が胸を見せるなんて、昨日までは考えもしませんでした。〈タロ〉様は怖い人です。私をどこまで、変えたら気が済むのですか」


 「ん、僕に〈クルス〉が、変えられるはずがないよ。逆だよ。僕が変えられたんだよ」


 「もう、このお口はペラペラと。もう閉じて、甘い毒を吐かないでください」


 〈クルス〉は、僕の方を向いて、ゆっくりと目をつぶった。


 そうか。自分の唇で、僕の口を塞ぐつもりなんだな。

 見え透いたその手は、悪くないので引っかかってしまおう。

 ほらやっぱり、僕は〈クルス〉の手の平で、スケベな踊りを踊らされているだけだ。

 惚れた女には、敵わないってことだろう。コロコロされるし、して欲しい。

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