第346話 ライトブール

 「うぅ、〈タロ〉様を信用しますわ。約束は必ず守ってくださいね」


 「任せておけよ」


 この取って置きの、エピソードトークをどうしよう。


 「はぁー、落ち込みますわ」


 「そんなに気にするなよ。また、王都で買ってあげるよ」


 「それは、ありがとうございます。ただ、落ち込んでいるのは、違うことですわ」


 お尻のことだよな。僕は大きいのが嫌いじゃないから、気にしなくて良いのにな。

 大きい方が、女性らしいと思うよ。


 「そうなんだ。まあ、馬に乗って、もっと水車を見れば気も晴れるよ。早く行こう」


 〈アコ〉は、馬に乗ろうと、あぶみに足をかけている。

 お尻の破れ目が広がって、ライトブールのショーツがはっきりと見えた。


 「あっ、〈タロ〉様。そんなにジロジロ見ないでください。お願いですわ」


 「うん」


 僕は、当然〈アコ〉のお尻を、グイっと押してあげた。

 バランスをとるため、当たり前に中心を押した。

 破れ目から、僕の親指が侵入するけど、それはしょうがない。決まり切ったことだ。


 「きゃっ、〈タロ〉様、止めて。〈タロ〉様の指が。私のいけない場所を触っています。真ん中を押したらダメですわ」


 それでも、気にせずグイグイ押してたら、〈アコ〉は諦めたらしい。

 早く馬に跨った方が、触られる被害が少ないと判断したようだ。

 跨ろうと、〈アコ〉が大きく股を開いた時、また「ビリ」っと音がした。

 一度破れると、連鎖が止まらないのだろう。


 破れ目から見えるライトブールは、快晴の空の様に、僕の前に広がっている。

 あまりに輝かしくて、僕は軽い眩暈(めまい)に襲われてしまう。

 冬だけど、天晴なせい春の光だ。

 僕は、このライトブールの絶景を、心に深く刻み込んで忘れないだろう。


 「あぁ、また破れてしまいましたわ。〈タロ〉様が悪いんですのよ。私のお尻のせいじゃありませんわ」


 「そうなのか。でも、〈アコ〉は正妻だから、安産型で良いんじゃないのか。町の人も、それが良いと言ってたじゃないか」


 「そうですけど… 。〈タロ〉様は、それで良いのですか」


 〈アコ〉は、振り返って、心配そうに僕を見ている。

 〈アコ〉を心配させてはいけないな。僕の手で、安心させてあげよう。

 僕は、〈アコ〉にキスをしながら、お尻を撫で回してあげた。

 〈アコ〉の大きなお尻が、魅力に溢れていると言う、僕からの宣言だ。


 〈ベンバ〉は、道端の草を黙々噛んでいる。

 自分の上で行われている戯れには、一切興味がないのだろう。

 お前らがしたいことをしているなら、こっちも好きにするってことだろう。

 動かないのなら、文句は言いません。


 「ううん、〈タロ〉様、こんなところで、止めてください。人に見られたらどうするんです」


 「ん、どうもしないよ。こんにちは、って言うだけだよ」


 「はぁー、〈タロ〉様、それはちょっと。私は恥ずかしいですわ」


 「そうなの」


 「ふぅ、〈タロ〉様は、私が人前でキスやお尻を触られても、平気な女になって良いのですか。慎みが全くない、嫁がお好みですか」


 うーん、〈アコ〉の言うことも、もっともだ。それは嫌だな。

 「昼は淑女、夜は娼婦」が男の理想だからな。

 ご都合主義だけど、それが多くの男性の本音だと思う。


 「分かった。〈アコ〉の言うとおりだ。僕が間違っていたよ」


 「はぁ、それでしたら、私の胸とお尻から、手を退けてください。〈タロ〉様、言ってることと違ってますわ」


 何か柔らかくて、気持ちが良いと思っていたんだ。

 自分で、知らないうちにおっぱいにも手を伸ばしていたんだな。

 自然と出来ているのが、何だか誇らしいぞ。


 「ごめんなさい」


 僕は渋々、おっぱいとお尻から、手を離した。あぁ、手が寂しいな。

 目の前に極上のボディがあるっていうのに、どういうことなんだ。

 僕は伯爵なんだから、やりたい放題じゃないのか。現実は、厳しいとしか言いようがない。

 辛くても受け止めるしかないのか。

 早く、〈アコ〉の火照った身体を受け止めたいし、僕の熱いものを受け止めて欲しいよ。


 「〈タロ〉様と〈アコーセン〉様は、仲良し子良しなんだな。お子も、もう直ですな。ありげてぇこった」


 農場を見て回っていたのか、農長の〈ボニィタ〉がひょっこり現れた。

 このおっちゃん、どこかで覗いてたんだろう。

 これ以上、スケベな進展はないと判断して現れたのに違いない。


 とぼけた顔をしているが、少し興奮しているように見える。

 ただその様子が、おっさんなのにスケベっぽくないぞ。

 まるで、牛や馬の交尾が上手くいきそうで、喜んでいるって感じだ。

 僕は種馬ではないし、〈アコ〉も繁殖牝馬じゃないぞ。


 でも、〈アコ〉は、そう感じていないようだ。

 顔が真っ赤になって俯(うつむ)いてしまっている。

 ここは、恥ずかしながらなくても、良いと思うけどな。


 むしろ、怒って良いんじゃないか。

 「私は安産型の大きなお尻をしているけど、決して産むマシーンじゃありません」って言っても良いと思う。

 セクハラだよ。


 「農長、お疲れ様。でも変な目で見るなよ。子供はまだ早いぞ」


 「これは、失礼しましただ。分かっておりやすって、そんな簡単につかねぇもんですだ」


 つかねって、このおっちゃん。あからさま過ぎて、冗談にもなっていないぞ。

 確かに僕も〈アコ〉も哺乳類だけど、もう少し言い方があるよな。

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