第339話 神様のお使い

  「〈サトミ〉は、「天跳駒」様が、空から落っこちた、ところにいたんだ。〈タロ〉様は、「天跳駒」様と普通に話していたよ。吃驚したけど、友達なんだと思ったの。〈タロ〉様は二人の神獣様と友達って、どう考えても特別だよね」


 「えぇ、特別な人だと思うわ。神獣様のこと以外でも。武道がお強いのは、鍛錬をあんなにされているから、納得出来るわ。でも、領地経営とお商売が、凄すぎるのよ。あんなこと誰にも、まね出来ないと思うわ」


 「そうですよね。領地も豊かになって、町も大きく広がりました。これも〈タロ〉様、お一人の手腕と言って良いぐらいです。まだお若いのに、信じられないような実績を上げられています。それに加えて、神獣様ですからね。神様に愛されているのでしょうか」


 「〈タロ〉様は、神様のお使いなの」


 「そう思っても、しょうがないと思うわ。でも、普段話している時は、神々しさはまるでないわね。エッチな少年としか、思えない時の方が多いのよ」


 「やっぱりそうなんだ。〈タロ〉様は、すごくエッチになってきたと思うよ。キスも、なんって言ったら良いのかな。濃い感じなってきて、エッチな気分にされちゃうの。我慢しているんだけど、そのうちバレそうなんだ」


 「ふぅ、そうですね。キスが上手になられました。何回もされましたからね。これも鍛錬の成果ですか。うふふ」


 「ふふふ、キスの鍛錬なんて、聞いたこともありませんわ。でも、最初の方とは全然違いますね。今はされると、気持ちが一度に持っていかれる感じです」


 「うん。〈タロ〉様にキスをされると、〈タロ〉様のことしか考えられなくなるんだ。〈タロ〉様が好きだから、どうしようもないんだ」


 「ふぅ、私も一緒です。それに、キスの後も的確に、弱点を突いてこられます」


 「そうよね。弱いところを、知られてしまいましたわ。それもあって、もう抵抗することが、出来なくなってきたの。誤魔化しているけど、どこまで持つかな、って感じよ」


 「〈サトミ〉は、恥ずかしいけど、〈タロ〉様の気持ちに応えてあげたいの。〈タロ〉様にお願いされると、拒めないんだ」


 「〈サトミ〉ちゃん、気持ちは分かるけど、まだ早いと思うわ」


 「そうですよ。私も学舎を卒舎するまでは、耐えようと思っています。赤ちゃんが出来たら、退舎なるのですよ。お金も、今までの時間も、あまりに勿体ないと思います。それを〈タロ〉様も考えて欲しいのです」


 「〈タロ〉様が、最後までしようとされているかは、分からないの。でも、危ないっていう雰囲気が、この頃、かなり強くなっているわ。〈タロ〉様は、何を考えておられるのでしょう。私達のことも、考えて欲しいと思うよね」


 「そうなんだよ。〈タロ〉様は、いつも〈サトミ〉に優しくしてくれて、一緒にいると幸せなんだ。でも、少し前に〈サトミ〉の胸を、急に触ったんだよ。そんなことをされたら、どうにかなっちゃうから、怖いんだ」


 「そうですよね。怖いですし、色んな意味で、切なくなってしまいますよね」


 「そう。だから、奥の手を聞いてきたわ」


 「えー、奥の手」


 「奥の手が、あるのですか」


 「そうよ。それは…… なのよ」


 「はぁー、そんなこと〈サトミ〉が出来るかな。とっても恥ずかしいよ」


 「ふぅ、かなりの勇気が必要ですね。最後の手段って言うことですね」


 「ふっ、〈タロ〉様には、本当に、恥ずかしい思いをさせられますわ。でも、奴隷の件みたいな、現実に脅威があります。私達にも、それなりの覚悟が求められていますわ」


 「〈アコ〉ちゃん、その奴隷の件って何なの」


 「それはね。〈サトミ〉ちゃん、…… というとても腹立たしいことがあったのです」


 「ふぁ、そんなことがあったの。〈サトミ〉が思ったとおり、許せない話だよ。〈タロ〉様は、王都でこんなことばかりに巻き込まれているの」


 「そればっかりじゃないわ。海方面旅団では…… っていう感じで凛々しくてかっこ良かったわ」

 「対抗戦では、〈タロ〉様は…… と活躍されました。ただ、お守りは恥ずかしかったな」


 「ふぁ、すごいな。〈タロ〉様は大活躍なんだね。誇らしいけど、〈サトミ〉は少し寂しいな。必ず王都で、〈タロ〉様と一緒に暮らさなくちゃ」


 「うふ、そのためにも、勉強が大事ですよ」


 「ひゃー、分かってます」


 「そうだわ。〈サトミ〉ちゃん、「天跳駒」様と出会った時の話をしてよ」


 「うんとね。「天跳駒」様は…… ってことになったの。そいでね。もうお一人と、交尾をされたんだよ。それがね…… だったの。〈サトミ〉は驚いちゃったよ」


 「はぁー、「天跳駒」様は、お二人もいらしたのですか。それで、あれされていたの。とんでもない事ですわ」


 「ふぅ、交わっておられたのですか。神獣様は、もっと違う方法でお生まれになると思っていました。普通過ぎると言うか、意外です」


 少しだけ、〈アコ〉と〈クルス〉は顔を赤くしていたが、〈サトミ〉は平気だ。

 交尾というものから、受けとる印象が二人とは違っているようだ。


 「次は、私が話しますわ」

 「二人に質問しても良いかな」

 「私の悩みを聞いてください」

 「ははは、もう笑わせないでよ」

 「ぐすっ、悲しい話ですね」

 「へぇー、そんなことになっちゃうの」

 「うーん、どうしてかしら。やっぱり、〈タロ〉様の話になりますわ」

 「三人に共通する話題ですから、そうなるんでしょう」

 「〈タロ〉様が、おもしろいからだと思う」



― それからも、三人は色々な話を、時には怒りながら、時には笑いながら、時が経つのを忘れて話した。深刻な出来事や、エッチな話題も混じっていた。朝日が水平線から顔を出して、ようやく三人は眠りについたようだ。 ―  

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