第338話 【許嫁女子会(奥の手)】

 【許嫁女子会(奥の手)】


 「三人でこうしてお茶するのは、ずいぶんと久しぶりだわ。〈サトミ〉ちゃんと会うのが、待ち遠しかったの。今日は一杯お話をしたいわ」


 「〈サトミ〉も、二人とお話しするのが楽しみだったんだ。少しドキドキしているぐらいなんだよ。一杯おしゃべりしたいね」


 「私もこの日を待っていました。〈サトミ〉ちゃんも、私もお泊りするので、遅くまでお話出来ますね。話したいことが沢山あるので、すごく楽しみなのです」


 「うん、ほんとそうだね。最初はね。メイドさんの面接はどうだったの。〈サトミ〉はね。上手に出来なかったの。面接する方なのに、あがっちゃったんだ」


 「あれは困りましたね。いきなり面接しなさいと言われても、上手く出来ませんわ。私も質問が、とっさに出てこなくって、かなり間が空いちゃいましたわ」


 「本当にそうですね。私達に付くメイドさんなので、私達が面接することは分かります。でも今まで、このような環境ではなかったので、戸惑(とまど)いが大きかったです」


 「そうだよね。〈タロ〉様と結婚するのは、もっと先だと思っていたから、急に言われて吃驚しちゃったよ。アワワって感じだよ」


 「〈アコ〉ちゃんは、貴族でお付のメイドさんもいたので、それほど戸惑いは、なかったのではないですか」


 「そうでもないのよ。確かにお付のメイドさんはいたけど、一人だけだったし、私が決めたわけじゃないわ。子供の時の話なんですもの」


 「そうですか。子供だったら、自分では決められないですね」


 「でも、そのことが役に立ってはいるわ。前にメイドだった人を選んだの。気心が、ある程度分かっているから、信頼出来ると思ったのよ」


 「えっ、メイドさんがいたのは、《ハバ》の町でのことでは、ないのですか」


 「そうよ。そのメイドの〈リド〉は、とても可哀そうなの。私のお付だったと言うだけで、《ハバ》で迫害を受けて、《ラング》に逃れてきていたのよ。酷い話でしょ」


 「それは酷い話ですね。《ラング》の町で、幸せになって欲しいですね」


 「全くだわ。メイドに採用したら、涙を流して喜んでくれたわ。生活の基盤が出来て、安心したと言っていたわ」


 「〈サトミ〉ちゃんは、誰を採用したの」


 「〈クルス〉ちゃんも、知っていると思うけど、〈サトミ〉はいつも一人なんだ。同じような年の子とは、話をしたことがないの。だから、〈ドリー〉さんが、一番年上の人にしなさいって言ってくれたの。〈サトミ〉より、二十歳も上なんだよ」


 「へぇー、親みたいな年なんだ。でも、それも良いと思うわ。何でも頼れそうですもの」


 「じゃ、〈クルス〉ちゃんは、どんな人を選んだの」


 「私は、とにかく元気な人を選びました。私は病気勝ちでしたので、周りの人は元気な人が良いと考えたのです。単純な理由ですね」


 「それで良いと思うわ。何と言っても、健康が一番ですもの」


 「はぁー、メイドさんを選べてほっとしたけど、もう直ぐしたら結婚式なんだね。もう、二年ぐらいしかないよ。〈サトミ〉は、まだ現実感がないんだ」


 「私が一番最初なので、少しずつ現実感が出てきましたわ。〈カリナ〉さんや〈ドリー〉さんの式に、参列した影響もあるのと思うな。もう今から、色々考えているのよ。結婚式のことを考えるのは、とっても楽しくて止まらない感じなの」


 「私も、〈カリナ〉さんや〈ドリー〉さんの式を見て感動しました。〈プテーサ〉さんの式も素晴らしかったです。〈タロ〉様と結婚出来るだけで良いと思っていましたが、少し私も欲が出てきました。私も皆のように、輝いてみたいと思うようになっています」


 「へぇー、二人とも、もう考えているんだ。〈サトミ〉は遅いのかな」


 「心配しないで良いのよ。〈サトミ〉ちゃんは、一個下だからこれからだわ」


 「そうよ。〈サトミ〉ちゃんには、私達より時間があるもの」


 「そうだよね。まだ、時間はあるんだ。〈サトミ〉は、ゆっくり考えるよ」


 「考えると言えば、〈サトミ〉ちゃん。冬休み中に学舎の試験があるわ。試験を受ける学舎は、決まったのかしら」


 「うぅ、それは言わないでよ。〈タロ〉様には、学舎に受からなくても怒らないで、って言ってあるの」


 「〈サトミ〉ちゃん、そんなことを言ったの。冬休み中、勉強を見てあげるから、諦めてはダメですよ」


 「うぅ、ありがとうだけど、辛いな。〈クルス〉ちゃん、お手柔らかにお願いします」


 「ふふ、王都には学舎が沢山あるから、心配はいらないわ。私もおやつを差し入れてあげるから、頑張ってね」


 「はぁ、頑張ります」


 「うふふ、〈サトミ〉ちゃんが、楽しめないので、この話はこの辺で止めましょう。次は何と言っても、神獣様ですね」


 「「天跳駒」様のことですね。〈タロ〉様には、色々呆れますけど、あれは本当に呆れましたわ。〈タロ〉様は、すごいお方だと思っていましたが、神獣様のことは、どう考えたら良いのでしょう」


 「「天智猫」様に続いて、「天跳駒」様ですからね。絶対普通じゃあり得ません。神話の世界です。〈タロ〉様とは、一体どういう人なのでしょう。お人柄は分かってきたつもりだったのですが、怖くなってきました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る