第336話 ツンと上を

  でも、僅かに〈サトミ〉のおっぱいが、真ん中から見えてきた。


〈サトミ〉のおっぱいは、大きくはないと思う。

ただ、身体の方も小さいから、決して比率では小さくない。

それに、ツンと上を向いた形がとても魅力的だ。理想的な形だと思う。


〈サトミ〉は、このままじりじりと、手をはがしていると、余計に見られることにようやく気付いたようだ。

 いきなり、パッと手をおっぱいから離した。


 僕はその瞬間を狙っていた。

 鬼速で、おっぱいを両手で触って、おっぱいの真ん中にキスをした。

 神業だといえよう。日頃の鍛錬の賜物だ。僕の努力が結実した瞬間だ。


 「きゃー、〈タロ〉様、ひどいよ。〈タロ〉様のエッチ」


 〈サトミ〉は大きな悲鳴をあげて、慌てて両手で胸を隠した。


 「ごめん。つい」


 「つい、じゃないでしょう。見せるだけって言ったのに。〈タロ〉様は触って、キスまでしました」

 

 「ごめん。つい」


 「ごめん、では済ませませんよ。〈タロ〉様は、責任を取ってください」


 「責任って」


 「どんな〈サトミ〉でも、胸にキスした責任を取って。お嫁さんにするんです」


 「あへぇ、それはもう、そうとう前から、決まっているよ。僕達は許嫁なんだよ」


 「知っています。〈サトミ〉が言っているのは、決められたんじゃなくて、〈タロ〉様が〈サトミ〉をお嫁さんにしてくれるってことです」


 「それは、僕の意思ってこと」


 「そうです。〈タロ〉様が自分から、〈サトミ〉をお嫁さんに欲しいっていうことです」


 うーん、結構難しいことを言っているな。

 許嫁っていうことじゃなくて、僕の気持ちが大事だということなんだろう。

 でも、責任を取るってことは、少しそれに反しているとも思う。

 〈サトミ〉も混乱しているんだろうな。


 それと、こんなことを言い出したのは、兄が恋愛して結婚したからだろう。

 〈サトミ〉も、恋愛がしてみたいんだろうな。


 「そうか。僕は〈サトミ〉のことを恋人だと思っているんだ。恋人でもない人の胸に触ったり、キスしたりしないだろう。違うかい」


 「ふぁ、〈サトミ〉は恋人なの」


 「えぇー、僕はそう思っていたのに、違うの。〈サトミ〉は恋人とは思ってくれてなかったんだ」


 「ううん、違うよ。そんなことないよ、〈タロ〉様。〈サトミ〉も恋人と思っていたんだ。でも、不安だったの」


 「そうか。〈サトミ〉を不安にさせていたんだ。ごめん。これからは、〈サトミ〉を不安にしないように頑張るよ」


 「ほんと、〈タロ〉様。信じて良いの」


 「僕のことは全て信じて欲しい。必ず〈サトミ〉をお嫁さんにする。死んでも守るよ」


 「あはぁ、〈サトミ〉は嬉しいよ。でも、〈タロ〉様、絶対に死んじゃダメだよ。死んだら、お嫁さんになれないもん」


 僕は、〈サトミ〉をヒシッと抱きしめた。純粋な〈サトミ〉を守ろうと思ったんだ。

 一途な〈サトミ〉に応えようと思ったんだ。

 こんなことを女性に言われたら、男なら抱きしめるに決まっている。一生離しはしないだろう。


 でも、〈サトミ〉はチョロ過ぎるな。

 「全て信じて欲しい」っていう男に、少しも信じられるヤツはいないのに。

 「死んでも守る」と軽々しく言う男ほど、舌が乾かないうちに裏切るもんだ。そんなヤツは、根っこのないクソ野郎だ。


 〈サトミ〉が良い子過ぎて、真直ぐ過ぎて、とても心配になる。

 僕が、ずっと抱きしめてあげなくてはいけない。


 「あ、あの。〈タロ〉様、〈サトミ〉を離して欲しいの。〈サトミ〉を離して後ろを向いてください」


 「んー、何で」


 「〈タロ〉様、わざとやってません。〈サトミ〉は裸なんですよ」


 「あっ、そうか、ごめん。直ぐ後ろを向くよ」


 〈サトミ〉は、そんなにバカじゃなかった。僕の方がバカっぽいな。

 僕が後ろを向いたら、直ぐに〈サトミ〉はスリップを着出した。衣擦れの音がしている。

 ドレスを肩まで引き上げて、僕にまた頼んできた。


 「〈タロ〉様、背中のくるみボタンを留めてください」


 「うん。分かった」


 僕がボタンを留めると、〈サトミ〉はドレスを直しながら、僕の方を向いた。


 「〈タロ〉様と〈サトミ〉は恋人だけど、〈サトミ〉の嫌なことはして欲しくないの。約束して貰えますか」


 「うん。〈サトミ〉分かった。でも、〈サトミ〉の嫌なことってどうしたら分かるの」


 「んー、それは〈サトミ〉にも、直ぐには分からないんだ。これから変わっていくと思うの。だから、〈タロ〉様が、〈サトミ〉にしたいことがあったら、聞いて欲しいの」


 「分かったよ。それじゃ、今、唇にキスをして良いかい」


 「あれ、〈タロ〉様、言わなかったかな。唇のキスは、いつでも良いの。〈タロ〉様の好きな時に、して良いんだよ」


 そうか。そうだったかな。何時でも良いんだな。

 人前でしたら、〈サトミ〉はどんな反応するのか、一度やってみよう。

 顔を真っ赤に染めて、僕の胸の中へ隠れてしまうんだろうな。

 そして、「〈タロ〉様、〈サトミ〉に、いけないことをしないで」って、上目づかいで言うんだろうな。

 その時、〈サトミ〉の手は、僕の身体のどこを触っているのかな。どこを握りしめているのかな。

 楽しみだな。ぐへへへっ。

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