第313話 目隠し

 僕が痛がっている姿が、そんなに嬉しいのか。

 脇腹より、その奥にある僕のハートがブロークンだよ。


 「ちぃ、痛いぞ。やったな」


 「ふふふ、〈タロ〉様、それは違いますよ。あくまでも練習ですわ。本気で悔しがられてもね」


 「うふふ、〈タロ〉様、痛いですか。痛くないと懲りませんからね」


 きぃー。何て偉そうで、嫌味な言い方だ。


 「うぅ、もう不覚はとらないぞ」


 「ふっ、返り討ちにしてあげますわ」


 「はっ、〈タロ〉様は、まだ懲りていなのですね」


 二人は、また僕の集中を乱しにきた。

 〈アコ〉は、胸元をもっと開け出した。胸の谷間が見えている。

 あぁ、あの谷に手を突っ込んでみたい。フニュフニュなんだろうな。


 〈クルス〉は、スカートを何回も、大きく捲り上げてきた。

 もう少しで、下着が見えそうだ。今日は、何色なんだろう。めくり上げて確かめたいな。


 「えぃ」


 「やぁ」


 「ギャー、痛い。痛い」


 今度は、僕の太ももに痛みが走った。両太ももだ。少しずれたらと思うと怖すぎる。

 あそこだったら、どうすんだよ。泣きそうだよ。


 「ふっふっふっ。〈タロ〉様は、弱点が全然克服出来ていませんわ。どうしようもないですね」


 「うっふっふっ。懲りるということを、ご存じないのですか。泣きそうになっていません」


 きぃー。バカにされたよ。何て卑怯な手を使ってくるんだ。僕には、防ぎようがないぞ。


 この後も、二人は練習の中で、僕の集中を乱してきた。僕は、十回程度突かれたと思う。

 パターンは分かっているのに、どうしても引っかかってしまう。もう諦めの境地だ。


 ただ、怪我の功名で、浮き身を覚えることが出来た。

 当たったと感じた時に、素早く重心を移動して、ダメージを軽減出来るようになったんだ。

 逆に言うと、当てられるのを防ぐことは、放棄したってことだ。

 当てられるのが、前提なんだ。悲しいな。


 でも、これは何というのか、一つの練習の成果なんだろう。難しい体術を、覚えたんだからな。

 複雑な思いは、あるけど。


 「ふふ。良い汗をかきました。気分が良いですわ。この辺で、練習を終わりましょう」


 「うふ。〈タロ〉様を一杯突けて爽快です。満足しましたから、終わりですね」


 きぃー。キィー。あんたらは、気分が良くて、満足なんだろう。

 僕は、気分が悪くて、不満足なんだよ。


 でもしかし、二人の機嫌が良くなったのだから、まあ良いか。

 僕の身体を何回か突いて、二人が幸せになるのなら、それでも良いか。

 僕が、じっと耐えれば良いだけだ。

 もうダメージを少なく出来きるので、何度でも突いてくれよ。


 ただし、突かれた分は、後で絶対に突き返してやるからな。倍返しでは済まないぞ。

 拘束突きをお見舞いしてやるぞ。あっ、拘束は間違いだ。高速だ。いや、拘束もありか。

 同じようなことを考えた気もするな。どっちしても、突きまくるってことだ。


 夕食を食べる前に、僕はシャワーを浴びようとしていた。

 シャワーと言っても、ただの水だ。温水ではない。結構冷たい。

 でも、船上では相当な贅沢だ。船員は海水しか使えない。ベタベタしたままで我慢している。


 シャワー室に入ろうとしたら、〈アコ〉と〈クルス〉が入ってきた。

 えぇ、どういうことだ。何をするつもりなんだ。


 「〈タロ〉様、この太いリボンで目隠しをしてください」


 「私達も一緒に、水を浴びますわ。船で真水は貴重ですので」


 「えぇ、一緒に水浴びするの。良いの」


 「そう言いましたわ。だから目隠しが必要なのです」


 「私達の裸を見せないためです」


 「えぇ、でも。僕の裸は」


 「ふふ、もう見ていますわ」


 「うふ、お披露目の時に、お風呂で見ましたよ」


 はぁー、嘘だろう。


 「えぇー、あの時、一緒にお風呂へ入ったの」


 「そうですわ。覚えていないですか」


 「〈タロ〉様は、酔っぱらっていらしたのですよ」


 あぁー、もったいないことをした。どうして、僕は酔っぱらってたんだろう。

 僕のバカ野郎。残念過ぎて、頭が回らない。悔し過ぎて、思考が途切れてしまう。

 もう好きなようにしてくれ。


 「はぁー、目隠しをすれば良いんだな」


 「そうですわ。後ろを向いてください。私がしてあげますわ」


 「〈アコ〉ちゃん取れないように、しっかり結んでおいてね」


 「恥ずかしいから、あんまり裸を見ないでくれよ」


 「ふふふ、〈タロ〉様も裸を見られるのは、恥ずかしいのですか。良い機会ですわ。私達の気持ちを味わってください」


 「うふふ、自分は恥ずかしいのですか。私達にしたことを、反省してください。ジロジロ見てあげますよ」


 「えぇ、そんな」


 僕達三人は、一緒にシャワーを浴びた。

 僕は、あそこが見られないように、壁にくっつく様に立っている。

 シャワー室が、狭いことも一因だ。


 狭いから、〈アコ〉と〈クルス〉の身体が、何回も僕に当たった。


 上半身に当たる柔らかいものは、きっとおっぱいだろう。

 下半身にあたる柔らかいものは、きっとお尻だろう。


 大きくてフニュってしているのは、きっと〈アコ〉だろう。

 小さめでプニュってしているのは、きっと〈クルス〉だろう。


 想像が広がるな。二人は、今、素っ裸でどこを洗っているのか。

 プルンとおっぱいかな、プリンとお尻かな、それとも、プチュと……かな。

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