第305話 〈ヨヨ〉先生の悩み

「武体術」の授業は、ずっと板箱の《大泥ウサギ》だ。


 少し工夫して、板箱を動かすことになった。ただ、動かし方が悲しい。

 板箱を生徒がひもで引っ張って、動かしている。ほこりが舞って、すごく遅い。


 動かしている時に、「ミュ」「ミュ」と声を出せと言われた。

 《大泥ウサギ》の鳴き声らしい。愛らしい鳴き方だ。

 生徒が鳴きまねする度に、大きな笑いが起こる。先生も笑っている。

 鳴き声を出している生徒も、笑って満足にひもを引っ張れない。


 なんて、友好的で朗らかな授業だろう。

 《大泥ウサギ》も、きっと泥の中で笑っているだろう。「ミュ」「ミュ」。


 板箱を使ったこの授業は、冬休みまで続くらしい。後少しだ。



 今回の「楽奏科」の授業は、〈ヨヨ〉先生のコスプレショーはお休みだ。

 ネタがないんだと思う。


 先生の表情も、心なしか暗い。コスプレ出来ないのが、悔しいんだと思う。

 自分の発想力のなさに、憤慨しているのかも知れない。


 だから先生は、怒りに燃えた真っ赤な服を選んだのだろう。

 鮮やか過ぎる赤が、目に痛い。直視出来ないほどだ。

 先生の胸元も、直視出来ない。パックリと谷間が見えている。

 張りつめ過ぎて、股間が痛い。


 今日の先生は、言葉少なだ。殆どしゃべられなかった。

 アンニュイな雰囲気で、頬杖をついておられた。

 前屈みになっているから、おっおぱいがスライムみたいに、零れだしてきそうだ。

 ひょっとしたら、少し零れていたのかも知れない。襟が、不規則な形になっていた気もする。


 谷間に見えるおっぱいは、つきたてのお餅のようだ。

 今直ぐ、先生をつきまくってみたい。そして、食べてみたい。

 今日の「楽奏科」の授業は、妄想にとりつかれた生徒の演奏が、ただ教室に流れていたと思う。  《大泥ウサギ》も、きっと月面でお餅をついているだろう。「ミュ」「ミュ」。


 もう冬と言っても良い季節だ。〈ヨヨ〉先生の服も、冬服になるのだろう。

 冬服では、露出が少なくなる。先生のアイデンティティの危機と言えるだろう。

 エロくない先生なんて、〈ヨヨ〉先生じゃない。

 心無い、生徒の心の叫びが、先生を苛なんでいるのだろう。

 冬服で、どうエロくするのかが、〈ヨヨ〉先生の目下最大の悩みかも知れないな。



 休養日に、〈アコ〉を呼び出した後、〈クルス〉を《赤鳩》まで迎えに行った。

 《赤鳩》の門を潜った〈クルス〉は、いつもと様子が違っていた。


 いつもより、制服のスカートが、信じられないほど短い。

 どうやら、限界まで裾上げしたようだ。 膝上二十cmくらいにはなっている。

 これはもう、ミニスカートだ。前よりも、五十cmくらい短いぞ。


 〈クルス〉は、どうしたんだろう。僕と〈アコ〉は、顔を見合わせた。

 〈アコ〉は、プルプルと頭を横に振っている。〈アコ〉にも、〈クルス〉の変りようが謎らしい。


 歩き出すと〈クルス〉は、直ぐ僕の腕に手を絡めてきた。

 この前も絡めてきたけど、それは二人の時だ。

 今は〈アコ〉がいるのに、おっぱいをグイグイと押し付けてきている。

 僕の肘で、おっぱいをグリグリしているような、すごい押し付け方だ。


 〈アコ〉はポカンと口を開けて、後ろからついてきている。けど、ついてこれていない。

 〈クルス〉のあまりの変化に、戸惑っているようだ。僕もそうだ。吃驚が止まらない。


 「〈タロ〉様、どうでーす、僕ちんのおっぱいは、柔らかいでーすか」


 〈クルス〉が、僕ちん、おっぱい、って言ったよ。それに、語尾がおかしい。


 「そ、そうだな。柔らかいよ」


 「あはぁ、良かったでーす。もっと僕ちんの身体を感じてくださいょー」


 そう言うと、〈クルス〉は僕の手の平を、自分の股間に持っていった。

 えー、股間を触らせたぞ。股間だぞ。どういうつもりだ。

 〈クルス〉の股間は、服の上からでも、ほんのり熱を持っている感じがした。


 「えー、〈クルス〉どうしたんだ」


 「だって、僕ちんは、〈タロ〉様に感じさせて欲しいのでーす」


 「い、いや。ちょっと待ってよ。ここじゃ、皆が見ているぞ」


 「そうだネ。ここでは、落ち着かないでーすネ。それじゃ、屋根裏部屋に行きましょー。あそこなら良いよネ」


 僕と〈アコ〉は、引きずられるように、〈クルス〉に屋根裏部屋へ連れて行かれた。

 一体全体、〈クルス〉はどうしたんだろう。頭の中を何度も?が飛びかう。


 階段を上がる時も、〈クルス〉は変だった。


 「〈クルス〉、腕を絡めたままじゃ、この狭い階段は昇れないよ」


 「うーん、それはそうでーすネ。それじゃ、僕ちんが先に昇るのでーす」


 〈クルス〉は、僕の前を昇り始めた。スカートの裾が短いから、もう見えそうになっている。

 階段を何段か昇ったら、〈クルス〉が、急に前屈みになった。


 屈んだから、短いスカートの中は全開状態だ。フルオープンだ。目の前が、全てお尻だ。

 〈クルス〉のお尻は、丸見えになっている。

 ショーツは、薄い生地で黒色だ。周りは、レースで縁取られている。


 大人の女性の下着って感じのものだ。〈クルス〉は、こんな下着を持っていたんだな。

 いつ買ったのだろう。

 

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