第294話 生

 〈アコ〉は両手で、自分の乳房を中に押し込めようと、ドレスを引っ張り上げている。

 強引にしないと収まらない感じだ。

 真ん中に寄せて、僕がひもを結びやすいように、してもいるんだろう。

 こうしないと、乳房が外側に暴れて、飛び出してしまうんだろうな。

 だから、自分でひもを結べないんだ。


 「この銀色のひもを結べば良いんだな」


 「そうです。そのひもですわ。蝶々結びにしてください」


 僕はひもを両手に持った。〈アコ〉の素肌が近い。って言うか、小指が触れてしまった。


 「あっ、いやっ、〈タロ〉様、触っちゃダメ」


 「ごめん。わざとじゃないんだ」


 僕はひもを結ぼうとするけど、集中が続かない。どうしても、おっぱいが目に入ってしまう。

 だって、おっぱいが目の前で、半分見えているんだよ。


 僕は、〈アコ〉に屈みこむようにして、必死にひもを結ぼうとした。

 肌に触れてもいけないし、おっぱいを過度に意識してもならない。

 大変困難なミッションだと思う。

 必死になっていたら、僕の前髪が〈アコ〉の鼻をくすぐったみたいだ。不可抗力だよな。


 「くちゅん」


 〈アコ〉が、くしゃみをしたら、胸がボーンと飛び出した。


 くしゃみによって、〈アコ〉の上半身が大きく動いたことと、〈アコ〉がドレスから手を離して、口を手で押さえたことが原因だ。

 僕も何も悪くない。


 ドレスの胸の部分が、ペロンと前にめくれて、〈アコ〉のおっぱいが丸出しになった。

 大きな胸がフルフルと揺れて、桜色の先っちょが、恥ずかしそうに色づいているのが見えた。

 戒めから解放された、おっぱいは、僕に「初めまして」と頷いている。

 初々しい様子で、震えているけど、なんて大きいんだ。

 〈アコ〉の殆どが、おっぱいに見えてしまう。


 生で見ると迫力が違う。スリップ越しは、しょせんスリップ越しだ。

 おっぱいが、ドレスから溢れている。存在感に溢れている。

 麗しの生メロンおっぱい、バンザイ。


 「きゃー、〈タロ〉様、見ましたね。本当に、もう」


 〈アコ〉は、慌ててドレスを引っ張り上げて、僕を睨んでいる。

 おっぱいは、ドレスの中へ入るのを、イヤイヤするように揺れていたが、最後は先ちょをピンと跳ねて収まった。生は終了だ。

〈アコ〉の顔は、まるで熟れたトマトのようだ。艶ややかに色づいている。


 「えー、僕は何もしてないよ」


 「私のお鼻をくすぐりましたわ」


 「そんな。わざとじゃないよ」


 「ふー、そうだとは思いますわ。でも、私は少し悲しい気持ちです。こんな形で、〈タロ〉様に見せるつもりでは、なかったのです」


 「見られて嫌だったの」


 「うーん、誤解しないでくださいね。〈タロ〉様に、もう直ぐ見せることになった、と思っていますわ。自然な流れでです。でも、こんな事故みたいな見せ方は。もっと素敵な雰囲気で、見て貰いたかったの」


 〈アコ〉は、「あぁ」って感じの顔になっている。

 もっとロマンティックな場面を想定してたんだろ。

 でも、それほどショックでもない感じでもある。

 遅かれ早かれ、僕に見られるのを、覚悟していたんだろう。

 スリップ越しなら、何回か見せていたからな。


 「そうか、残念だったな。でも、これも良い思い出になるよ。僕は嬉しかったな」


 「うー、〈タロ〉様。想い出は思い出でも、笑える思い出でしょう。そんなの私嫌ですわ」


 「〈アコ〉、心配するな。素敵な思い出を、これから二人で一杯作ろうよ」


 「ふー、そうですね。これだけが、思い出でありませんものね」


 〈アコ〉のドレスのひもを何とか結んで、母親の形見のドレスを改めて見た。


 うーん、このドレスも、夜と僕専用だな。どう見ても、水商売の女性が着る服にしか見えない。

 胸と背中が、開き過ぎている。素肌が見え過ぎているんだ。

 ひもが解けたら、おっぱいがポロンとしてしまうんだぞ。


 こんなドレスを着た〈アコ〉を、他の男には決して見せられない。

 見られたら、嫉妬しちゃうよ。 このドレスを着たら、誘っていることになってしまう。


 でも、さっきのドレスとは違って、〈アコ〉にとても良く似合っている。妖艶だ。

 きつきつのドレスが、ぴっちりと〈アコ〉の豊満な身体の線を、裸以上に見せている。

 まだ、少女の面影を残しているけど、身体はとっくに違う。


 かぶりつきたいほど、セクシーだ。ジューシーだ。

 汁が口の中から溢れて、僕の下半身まで滴り落ちるだろう。

 すでに身体は、完熟状態だと思う。触れたら、果肉が割れてもおかしくない。


 完熟メロンおっぱい、&完熟大白桃お尻に、栄冠あれ。果報あれ。


 〈アコ〉に、「回って見せてよ」と言っても回ってくれなかった。

 かなり、すねているようだ。少し唇を尖らせてもいる。


 僕は、〈アコ〉を抱き寄せた。大きく開いた背中に手を回す。


 「んうう、〈タロ〉様、背中に添えられた手が、少し熱いです」


 「〈アコ〉の背中も熱いよ」


 「ん、そんなことないですわ」


 「じゃ、こうすればどうだ」


 僕は、〈アコ〉の背中を撫でさすりながら、キスをした。

 背中の産毛を、すーと撫ぜると、〈アコ〉の身体がびくっと動く。


 「んん、何だか、身体の奥で、ぞわっとしますわ。そんな風に撫ちゃダメです」

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