第293話 ドレスのひもを結んでください

 もう、このドレスは良いや。次のを見せて貰おう。

 やっぱり、外では着ない方が、良いという感想になるな。


 「うふ、もちろんですわ。〈タロ〉様のお好きな時に、声をかけてください。次は、お母様の形見を着ますわ」


 こんなことを言われたら、どこかで、着てくれと言うしかないな。

 そうだ。ウエストが、問題なんだから、ウエストを無くせば良いんだ。


 ウエスト部分を切り取って、へそ出しルックにして貰えば良いんだ。

 メリハリも出来るし、セクシーさも出るぞ。これなら、〈アコ〉に似合う可能性もある。

 ついでに、丈も詰めてミニが良いな。

 トリミングされた白いプードルみたいになって、すごく可愛くなるかも知れない。


 でも、これじゃ、やっぱり外では着れないな。夜専門、僕専用のドレスになってしまう。

 夜専門なのは、へそを出してくれているのだから、周りの布も剥がなければならない。


 それが夫婦の阿吽の呼吸だと思う。

 誘いを無視するのは、失礼極まりない。相手に悲しみを与えることになる。

 僕専用なのは、今と同じだから問題ないか。


 ただ、不思議と〈アコ〉が、気に入っているドレスだから「へそを出せ」と、言い出すタイミングが難しいな。

 へそを曲げるかも知れない。


 「〈タロ〉様、ドレスのひもを結んでください」


 雪だるまドレスの有効利用を考えていたら、着替えシーンを見逃してしまった。

 僕は、なんて迂闊な男なんだろう。目の前に起こっている現象に、誠心誠意向き合えていない。

 臍(ほぞ=へそ)を噛む思いだよ。


 「はーい。今行くよ」


 〈アコ〉は、背中を僕に向けている。白い色が、やけに目立つな。

 うーん、〈アコ〉に渡した形見のドレスに、白い部分なんてあったかな。

 大部分が水色だった気がする。


 近づいたら、分かったぞ。〈アコ〉の背中が、大きく見えているんだ。


 「〈アコ〉、すごく大胆なドレスだな。背中が殆ど見えている。半分裸にしか見えないよ」


 僕はあまりの驚きに、思っていることが、つい口をついてしまった。

 吃驚したので、言葉を選べなかったんだ。


 「うぅ、胸が入らなくて工夫したんです。そんな風に言わないでください」


 工夫か。背中を大きく開けて、胸周りを無理やり広げたんだな。


 〈アコ〉の白い背中が、目の前に広がって圧倒される。

 ビーナスラインと言われる、背中の中心の縦筋も、女性らしい優美な線を描いて艶めかしい。

 とてもセクシーな、大人の女性が目の前にいる感じだ。実際そうなんだろう。


 「言い過ぎたよ。もう言わない。でも、背中にはひもがないね」


 「ひもは、前なんです」


 前で結ぶドレスは、珍しいんじゃないかな。

 前で結ぶようにしたのは、自分で着られるためなんだろうか。

 それとも、胸が大き過ぎて、無理やり詰め込む必要があるためか。


 「じゃ、前を向いてよ」


 「うぅ、でも。前を向くのに、かなり勇気がいるのですわ。もっと隠せると思っていたのです」


 〈アコ〉は、中々前を向かない。手で胸を隠してもいる。どうしたんだろう。

 こんなことをしてても意味がない。時間が過ぎるだけだ。早くして欲しいな。


 「〈アコ〉、こっちを向けよ」


 僕は強引に〈アコ〉を振り向かせた。


 「あっ、乱暴にしないで。胸が出ちゃいますわ」


 〈アコ〉は、胸を手で隠してはいるけど、手の隙間から、白いおっぱいが見えている。

 正確には上乳部分だ。先っちょが、もう少しで見えそうなほど、露わになっている。

 ドレスからおっぱいが、今にも、プルンと零れてしまいそうだ。

 こんなに背中を開けているのに、まだ胸が大き過ぎるのか。


 胸の部分も開けて、それを装飾用のひもで、強引に結ぶ必要があるんだな。

 これが、〈アコ〉の言っていた工夫なんだ。


 しかし、胸の真ん中を大きく空けたから、おっぱいの奥の方も、否応なしに見えてしまう。

 おっぱいは、ドレスに包み込まれて、大きく前方に突き出してもいる。


 手が邪魔だ。早く全貌を見てみたい。


 「〈アコ〉、手を離さないとダメだ。ひもが結べないよ」


 「うぅ、分かりましたわ。あまり胸を見ないでくださいね」


 〈アコ〉は、顔を赤くしながら、手をおずおずと胸から外した。


 「ごくっ」


 僕は思わず唾を飲み込んだ。


 〈アコ〉のおっぱいの上半分と、内側の横半分が、殆ど見えている。

 背中も胸の部分も空いているから、スリップは邪魔で脱いでいるらしい。

 スリップが、見えちゃうからな。着替えを見逃したのが、真に悔やまれる。


 ドレスは、〈アコ〉の先っちょで、辛うじて引っ掛っている状態だ。

 実際には、今の先っちょにそんな硬度はないから、そう見えてしまうということだろう。

 ちょっとでも触ったら、先っちょが、直ぐ見えるってことでもある。


 ものすごいドレスだな。


 「うー、〈タロ〉様、そんなにじっと、胸を見ないで」


 「ごめん。でも見ちゃうよ。それに見ないと、ひもを結べないじゃないか」


 「でも、〈タロ〉様、瞬きしてないんですもの。私、少し怖いですわ」


 僕が怖い。瞬きをするのを忘れて、見入っていたらしい。目も充血しているのかも知れない。

 目を血走らせながら、至近距離からおっぱいを凝視しているんだ。それは怖いわ。

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