第278話 腕枕

 二人は、浴室の前に立ち、胸の辺りを手で隠している。

 隠さないと、先っちょが見えてしまうのだろう。

 僕が凝視しているから、僕に近づくのをためらっているようだ。


 僕はどうしたら良い。今直ぐ、二人の元へ行き、抱き上げてベッドに運んでしまおうか。

 でも、二人同時は無理だ。それに、今直ぐは無理だ。そこまでの関係では、まだないと思う。

 そんなことが出来るのは、複数回ベッドで過ごした後の話だ。


 僕は、二人の身体から視線を外して、下を向いた。


 ふぅー、こんな場面で、下を向いて良かったのか。

 どうするのが、男として正しかったのだろう。 

 せめて何か一言でも、言った方が良かったと後悔した。

 二人は、クローゼットから肩掛けをとって、肩に羽織ったようだ。

 これで、先っちょを隠くすのだろう。


 「〈タロ〉様、お風呂に入って喉が渇いたでしょう。お茶を入れますね」


 〈クルス〉が、先っちょを気にしながら、お茶の準備をしている。


 「ふー、何だか少し緊張しますわ。どこに座って良いのか迷ってしまいます」


 〈アコ〉は、少し迷って机の前の椅子に座った。

 僕は、二人の姿をベッドの上から、どうしても追ってしまう。


 スリップのひらひらした短い裾から、素足は大胆に見えているし、ショーツも透けているんだ。

 ぴちぴちした下着姿の肢体が、直ぐ目の前にあるんだ。そりゃ見るだろう。

 二人とも、透けることを考慮して、目立たないように白いショーツをつけている。

 でも、間近で見ると白いショーツの形が、クッキリと透けて、ほぼ見えている感じだ。


 〈クルス〉が、お茶を入れてようとして、少し突き出した白いショーツが、色っぽい。

 座って少し横に広がった〈アコ〉の白いショーツが、艶めかしい。


 「〈タロ〉様、〈アコ〉ちゃん、お茶をどうぞ。〈タロ〉様、こぼすといけませんので、椅子に座ってください」


 「分かった。〈クルス〉、ありがとう」


 「〈クルス〉ちゃん、頂くわ」


 僕達は、丸く座ってお茶を飲んだ。熱いお茶が、三人の火照った身体に沁み込んでいく。

 でも、僕はもっと身体が火照ってしまった。

 二人がお茶を飲む時に、少し濃いピンクの先っちょが、チラチラ見えてしまったんだ。

 まだ桜の蕾のような色をしている。この蕾を、僕が今開いてはいけないのだろうか。

 視線が、二人の胸を行ったり来たりして、止められない。


 「困ったよ」


 「私も困りましたわ」


 「私達どうしたら良いのでしょう。困りましたね」


 「どうしても、二人から見が離せないんだ」


 「知っていますわ。ずっと見られていて、まるで触られているようです。嫌ではないのですが、恥ずかしいです。気持ちがザワザワして、全然落ち着きませんわ。身体が熱いのです」


 「胸を隠そうとしたのですか、これだけ近くだと、上手く出来ませんね。もう良いという気になりそうです。普通にしようと思っているのですが。こんな下着姿を〈タロ〉様に見られているのは、普通のはずがありません。身体がフアフアしてしまって、火照りが治まらないのですよ」


 何かをしたいと思ってはいるけど、どちらかに見られながらするのは、気が進まない。

 イチャイチャしているところを見せられる方は、気分が良くないと思う。

 見られているのも、恥ずかしい。

 ただ、交互にキスをするくらいなら、出来る気もする。

 でも、キスしているところを、見られるのもな。

 テクニックに自信もないし、キスに集中出来ないと思う。

 二人は以前から、人前では絶対嫌だと言っているからな。

 無理にしようとして、二人がかりで抵抗されたら、わだかまりが残ってしまう。

 僕と二人の間に、見えない溝が出来ると思う。〈タロ〉様は、信頼出来ないと思われてしまう。


 「はぁー、こうしていても仕方がない。もう夜も遅いから寝ようか。明日は朝から、お披露目もあるしな」


 「そうですね。それが良いですわ。結婚すれば、何度も〈タロ〉様とお泊りすることになります。慌てる必要はありませんわ」


 「私も、そう思います。最初のお泊りは、このぐらいで良いのではないでしょうか。徐々に慣れて、もっと楽しめるようになりますよ」


 寝る態勢は、僕がベッドの真ん中で、左右に〈アコ〉と〈クルス〉だ。


 「〈タロ〉様、お願いを言っても良いですか」


 〈アコ〉が、布団に潜り込みながら、聞いてきた。いつもより、可愛い声を作っているようだ。


 「なんだい」


 「腕枕をして欲しいのですわ。お嫌ですか」


 「腕枕か。良いよ」


 「〈タロ〉様、私もお願い」


 〈クルス〉も、可愛い感じで頼んでくる。もちろん、僕に異存があるはずもない。


 「〈クルス〉もか。分かったよ」


 僕は両腕を広げて、そこに〈アコ〉と〈クルス〉が頭を乗せた。

 〈アコ〉と〈クルス〉は、「うふふ」「ふふふ」と小さな女の子のように笑っている。

 二人の火照った身体が、吃驚するほど熱い。

 少し当たっているおっぱいが、信じられないほど柔らかい。

 それに、二人の匂いをとても強く感じる。

 石鹸の残り香と女性の香りが、混じったような匂いだ。もう女の子の乳臭い匂いじゃない。

 背伸びして大人の仲間入りをした、乙女の匂いだ。

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