第223話 ずっと我慢の人生

「ちょっと、待って。〈クルス〉の方こそ、もう動かないでよ」


 〈クルス〉が、モジモジ動くたびに、プニュっとした熱い部分を、僕の背中が感じてしまう。

 それに、腰を浮かしても、フワフワの刺激から半分も逃れられていない。

 反って、敏感な先端部分を刺激してしまっている面もある。


 〈クルス〉、動くのを直ぐ止めてよ。あぁ、僕はもう持たないよ。


 「んうん、〈タロ〉様が動くから、私が動いてしまうのです。じっとしていられません」


 「〈クルス〉、動けば動くほど、マズいことになるよ。二人とも刺激に負けてしまうぞ」


 「ああん、〈タロ〉様。そんなことを言われても。それでは、どうすれば良いのですか」


 「僕は疲れがふっとんだから、揉み治療はもう止めよう」


 「はっ、そうですね。それが良いですね。二人とも汗びっしょりですもの。これで治療は終わりにします」


 〈クルス〉は、ハァハァと息を吐きながら、僕の上から降りた。

 思っていたとおり、顔は真っ赤だった。身体中に汗をかいて、かなり色っぽい。

 少し恥ずかしそうな顔で、まだモジモジしているぞ。


 僕の顔も赤いと思う。汗は一杯出したけど、ぎりぎりのところで、出さずに済んだ。


 「〈クルス〉、息が弾むほど治療をしてくれて、ありがとう」


 「はぁ、はぁ、〈タロ〉様に、お礼を言われるほどのことでは無いです。途中で止めてしまいましたし」


 「それでも、〈クルス〉の揉み治療のお陰で、疲れが取れたよ。また、疲れたら頼むよ」


 「分かりました。でも今度は、〈タロ〉様には、椅子に座ってもらいます。

 今日みたいに、お腰に乗るのは、結婚してからにします」


 「えぇー、そうなの」


 「えぇ、今日みたいのは、まだ早いのが分かりました。結婚したら、もっと揉んであげますから、今は我慢してくださいね」


 〈クルス〉は、冷めかけた頬をもう一度赤く染めて、意味深なことを言ってきた。

 顔が真っ赤になったのは、仰向けの状態を想像したんじゃないのかな。

 僕はした。


 でも、婚約中は椅子なんだ。それでは、全然エッチじゃない。

 お預けを食わされてしまった気がする。


 今の言い方は、いくら頼んでも、もうしてくれない感じだな。

 結婚後の楽しみにするしかないのか。

 僕も、パンツを汚して湿らすわけにもいかないから、仕方がないのか。


 我慢出来るかな。

 今度は、出すのを我慢出来そうにないし、我慢した方が良いのか。

 結婚後は、出すのを我慢しなくて良いのか。

 いや、あまりにも早く出すと、〈クルス〉を落胆させるだろう。

 結局、ずっと我慢の人生になりそうだ。

 自由自在に放出したいな。


 「〈タロ〉様、汗がすごいので、お顔を拭いてあげますね。ハンカチは持ってはいませんよね」


 「うん。持ってないよ」


 「うふ、分かっていますよ。二枚持ってきていますので大丈夫です」


 〈クルス〉は、僕の汗を丁寧に拭いてくれた。その後、自分も拭いている。

 汗を拭くために、広げた胸元が白く光って目に眩しい。汗をかいて全身が濡れている感じだ。

 胸元と、濡れている感じが合わさって、すごく色っぽいぞ。


 僕は横から、〈クルス〉を抱きしめた。


 「きゃっ、〈タロ〉様、まだダメですよ。まだ汗を拭いています。もう少し待ってください」


 「〈クルス〉、もう待てないよ」


 「もう、しょうがないですね。抱きしめたままで良いですから、もう少し手を緩めてください」


 〈クルス〉は、僕の手から自分の手を抜いて、汗を拭くのを再開した。

 僕が邪魔をしているのに、顔は怒ってはいない。嬉しそうに見える。


 「〈タロ〉様、一応拭けました。でも、今の私は汗臭いですから、匂いは嗅いじゃダメですよ」


 〈クルス〉は僕の方に顔を向けて、ニコッと微笑んだ。

 顔が、もう良いですよ、と語りかけている。

 ただ、〈クルス〉の胸元は、大きく広げたままで、上乳が少し見えているぞ。


 僕は、〈クルス〉を片手で引き寄せ、〈クルス〉の上乳を強く吸った。

 後が残るように、わざと強く吸ってやった。


 「きゃっ、〈タロ〉様、いきなりそこですか。良いですけど。最初にするのは違うと思います」


 「ははぁ、そうかな」


 「〈タロ〉様は、やっぱり意地悪ですね。私を吃驚させようとしたのでしょう」


 「そうじゃないよ。僕の印が消えていたから、最初に、印をつけなくっちゃ、と思たんだよ」


 「んうん、そう言われると怒れませんね。私に印を付けて満足されたでしょう。次は、強く私を抱きしめてください」


 緩めるとか、強くとか、〈クルス〉は注文が多いな。

 〈クルス〉は大人しい方だと思うが、何か振り回されている気がするな。

 だけど、それも悪くはないと思う。


 僕は、言われたとおり、〈クルス〉を強く抱きしめた。


 「んうん、〈タロ〉様に抱きしめられるのと、とても幸せな気持ちになります。私の疲れには、〈タロ〉様が一番効きます。私の心は安らぎを覚え、正しく生きていると強く感じます。〈タロ〉様は、どうなのですか」


 「そうだな。〈クルス〉と同じだよ。〈クルス〉といると安心するし、元気が湧いてくるんだ」


 「うふふ、同じですか。それなら、もっと強く抱きしめてください」


 僕は、言われたとおり、〈クルス〉をもっと強く抱きしめた。力一杯だ。

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