第222話 モジモジさせている

 「ん、〈タロ〉様、次は肩を揉みます。どの辺りが、疲れていますか」


 〈クルス〉は、何だか照れているような声で聞いてきた。

 話の内容は、照れるような要素はないから、僕と接している箇所の関係だろう。


 〈クルス〉は、今、僕の腰の上の方に座っている。まあ、背中だ。

 お尻が背中に接しているというより、お尻の前の部分が接している感じだ。

 どうも、〈クルス〉のあそこが、ショーツ一枚隔てて、僕の背中に当たっているみたい。


 そう理解したら、何だか背中が熱くなってきたぞ。

 これは、僕が意識したから熱く感じるのか。それとも、本当にあそこが熱いのか。

 どっちなんだろう。


 「そうだな。首に近い方が疲れているかな」


 〈クルス〉は、肩を揉んでくれている。

 優しく労わってくれているのが、〈クルス〉の手の平から伝わってくる。

 握力が、それほど強くないので、揉み解すというより、押している感じだ。

 僕の肩に手の平を置いて、少し馴染ませてから、手の平全体で押してくれている。

 速攻で、すごく効くという感じじゃないけど、じんわりと疲れが取れていく気がする。


 〈クルス〉の綺麗な手で揉まれると、身体の疲れも、心の疲れも、合わせてどこかへ飛んでいってしまう。


 ただ、〈クルス〉は肩を揉むために、前傾姿勢を強いられて、少し辛い格好になっている。

 肩を揉むなら、僕が座った状態で揉むのが普通じゃないのかな。


 たぶん、〈クルス〉は分かっていながら、この体勢を選択したんだと思う。

 手の平だけではなく、下半身も使って、僕の疲れを取ってくれているのだろう。

 現に、僕の背中は、〈クルス〉のあそこに温められて、もう疲労感は溶けてなくなってしまった。


 それとも、〈クルス〉は僕と密着したかっただけかも知れない。

 その方が良いな。僕は、当然〈クルス〉と密着したい。

 〈クルス〉との付き合いも長くなってきたから、以心伝心で、僕の気持ちが伝わったのなら嬉しいな。


 「んん、〈タロ〉様、次は首を揉みます。上の方と下の方、どちらが疲れていますか」


 「うーん、どっちなんだろう。自分の身体のことだけど、良く分からないんだ」


 「ん、構いませんよ。それなら、全体を揉めば良いのです」


 〈クルス〉は、そう言って、僕の首に両方の手の平を沿わせた。

 〈クルス〉の手の平は、僕の素肌をすうーと触ってくる。

 〈クルス〉の細くてヒンヤリとした指が、僕の首を撫でている感じだ。


 そして、〈クルス〉はもっと前傾したから、あそこが強く押し付けられてしまっている。

 今までは、体重を全て僕にかけてはいなかったけど。前傾姿勢がきつくなったから、体重を膝で支えられなくなったのだろう。


 「んん、この体勢では、私の体重が殆ど〈タロ〉様にかかってしまいます。体勢を変えましょうか」


 〈クルス〉は、僕の上で身体を少しモジモジさせている。

 思っている以上に、あそこが当たっているから、困っているのだろう。

 自分のしていることが、相当エッチなことだと、ようやく分かったのかも知れない。


 「いや。このままが良いよ。さっきも言ったけど、〈クルス〉は、軽いから問題ないよ」


 「ん、そうですか。分かりました。〈タロ〉様が、望まれるとおりにします」


 今更、エッチな体勢だから、止めますとは言えないんだろうな。

 〈クルス〉が選んだ体勢だからな。それでも、最後は僕が選んだことにしたいようだ。

 エッチなことをしたがっていると思われるのが、嫌なんだろう。

 僕に暴走されると困るのだろうし、好色な女だと思われたくないんだろうな。


 〈クルス〉は、エッチな女なのかな。そうじゃないと思うけど、少しはそうかなとは思う。

 僕に触れるのが、すごく嫌なわけじゃないという意味でだ。


 ハッキリしているのは、僕がエッチだということだ。


 〈クルス〉に首を触られて、あそこを押し付けられたら、僕のあそこはもう持たない。

 生気がみなぎって、元気になってしまった。フワフワのソファーに突き刺さってしまっている。


 嘘です。すいません。見栄を張りました。突き刺さってなんか、いません。

 フワフワなのに、極小の圧に負けて横向きに、ひしゃげているだけです。

 〈クルス〉が、身体をモジモジさせるから、その動きでフワフワに擦れて堪りません。

 生命の元の液体を、図らずも出してしまいそうです。

 どうしましょう。パンツが汚れて湿ってしまいます。


 出たのが、〈クルス〉にバレたら、さすがに恥ずかしいぞ。

 ださないようにしないと、ダサい。


 生命の元の液体を、出さないように、腰を浮かして刺激から逃げねばならない。

 フワフワの刺激から、距離を置こう。


 そうすると、今度は〈クルス〉のモジモジが、激しくなってきた。


 「あっ、あっ、〈タロ〉様、そのように、動いてはいけません。腰を突き上げたりしないでください」


 〈クルス〉は、相当焦った感じで、僕に言ってきた。

 僕が腰を浮かしたから、あそこに当たる圧が増大したようだ。

 おまけに、圧を逃がそうとするモジモジ動きが、あそこにかかる刺激を増やす結果になったんじゃないのか。

 〈クルス〉の顔は見えないけど、真っ赤になっていると思う。

 〈クルス〉、モジモジするのは逆効果だぞ。

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