第213話 〈クルス〉は、秘密が多い

 〈クルス〉は、なぜか僕の乳首も、優しく触ってきた。そこには、あざも傷もないんだけどな。


 「ひゃぁ、そこは、くすぐったいよ」


 「ふふ、くすぐったいのですか」


 「そうだよ。〈クルス〉も、くすぐったいだろう」


 僕は、お返しに〈クルス〉のおっぱいを触った。


 「あん、〈タロ様〉、仕返しですか」


 「僕も、〈クルス〉を触りたかったんだ。くすぐったい」


 「んうん、くすぐったいのとは、違います。言いたくないです」


 「言いたくないの」


 「えぇ、言えません。秘密です」


 〈クルス〉の秘密を暴くべく、〈クルス〉のおっぱいを優しく揉んだ。

 〈クルス〉のおっぱいの、適度な弾力と大きさが、手に嬉しい。にやけてしまう。


 「あん、〈タロ様〉。私の胸を揉みたいのなら、それでも構いません。でも、私を抱きしめるのも、良いと思われませんか」


 〈クルス〉にそう言われたら、抱きしめるしかないな。

 抱きしめなかったら、〈クルス〉を良いと思っていない、感じになってしまう。

 僕は、〈クルス〉を引き寄せて強く抱きしめた。


 「あっ、〈タロ様〉」


 〈クルス〉は、自分で言っておきながら、吃驚したような声で僕の名前を呼んだ。


 「〈クルス〉、吃驚したの」


 「んうん、吃驚はしていません。〈タロ様〉に抱きしめられると、いつも心臓がドキッとしてしまうのです。仕方がないでしょう」


 「どうして、ドキッとするの」


 「言いたくないです。これも秘密です」


 「〈クルス〉は、秘密が多いな」


 「〈タロ様〉は、意地悪です。本当は、全てご存じでしょう」


 「そんなことはないさ。〈クルス〉、顔を上げてよ」


 「こうですか」


 おずおずと上げた〈クルス〉の顔を、僕は見詰めた。〈クルス〉も僕を見詰めて微笑んでいる。

 僕を待っているようだ。じらそうかと思ったけど、僕が待てない。

 直ぐに〈クルス〉の唇に唇を重ねた。


 ゆっくりと唇を動かして、〈クルス〉の唇をなぞった。

 手は、どうしても〈クルス〉のおっぱいに、向かってしまう。

 直ぐそこにあるのだから、我慢出来ない。


 「あぁん、〈タロ様〉。今日は、これでお休みなさいです。膏薬を塗るには、時間が経ち過ぎました。ほら、服を着せますから、もう私を離してください」


 〈クルス〉が、真剣な口調で言うので、〈クルス〉の言うとおりにした。

 〈アコ〉が薬を張ってくれたのも、確かにこの位の時間だった。

 〈クルス〉だけ、時間が長いのは、少しマズイ気がする。


 〈クルス〉に身を委ねて、服を全部着せて貰った。

 〈クルス〉は、嬉しそうに笑いながら、手早く僕に服を着せていく。

 服を着せることが、どうして、そんなに嬉しいのだろう。

 〈クルス〉の気持ちが読めない。


 次の日から、午前中の半分は鍛錬で、半分は懐刀の練習台となった。

 〈アコ〉と〈クルス〉は、もう僕を本気で突いてこない。


 殆どの時間は、適当に流している感じだ。

 声だけ、「えい」「やー」って言っている。〈サヤ〉に聞かせるためだ。

 〈サヤ〉が見ている時だけ、真剣な動きをしてくる。〈サヤ〉に怒られないためだ。


 二人とも、中々誤魔化すのが上手いな。これは「健体術」の授業の成果だと思う。

 いつもこうして、〈サヤ〉の授業をやり過ごしているのだろう。


 〈サヤ〉が見ていない時は、僕を触りにきたりもする。

 二人とも、小声でキャーキャー言いながら、とっても嬉しそうだ。

 胸元を少し開けたり、スカートを少し翻すと、僕の動きが止まるので簡単らしい。


 「〈タロ様〉は、致命的な弱点がおありですね。大変心配になりますわ」


 「綺麗な女性に襲われたら、ひとたまりもありませんね。どうするのですか」


 「えぇー、そんなことはないよ」


 「いえ。そんなことですわ」


 「大きくそんなことです」


 「隙が出来るのは、二人の時だけだよ」


 「本当ですか。直ぐには、信じられませんわ」


 「証拠はあるのですか」


 「〈サヤ〉の服が、乱れる時もあるけど平気だよ」


 「うーん、〈サヤーテ〉先生を、他の女の人と同列には語れませんわ。大変お綺麗なのですけど」


 「確かに〈サヤーテ〉先生は、お綺麗ですけど。かなり普通の女性とは違います。証拠にはなりえません」


 「おぉ、〈サヤ〉のことを、そんな風に言っていいのか。知らないよ」


 「今は良いのです。〈タロ様〉は、私達を裏切ったりしませんわ。そうでしょう、〈タロ様〉」


 「私も〈タロ様〉を、心から信頼しています。私達が不利になるようなことは、しませんよね」


 「分かった。言わないよ」


 「うふ、素直な〈タロ様〉は好きです。もっと弱点を克服させてあげますわ」


 「ふふ、〈タロ様〉、言うことを聞いてくれましたね。私が練習台になってあげます」


 それから、二人はもっと大胆に、胸元を大きく開けたり、スカートを摘まみ上げるようになった。 

 そして、僕を撫でまわすように触ってくる。


 「これはどうですか」「見ていますか」と嬉々として言ってくる。

 とっても楽しそうで、はしゃいでいる感じだ。


 でも、美人の刺客が、僕を襲うことがあるのだろうか。

 そんな、映画やアニメのような嬉しい出来事は、ハッキリ言ってないと思う。

 そもそも、刺客に襲われるような、恨みは買っていないはずだ。


 〈アコ〉と〈クルス〉が、今やってくれている練習は、全くの無駄だと思う。

 でも、言わないでおこう。

 眼前に繰り広げられる光景は、大変エッチだ。大好物なんだ。

 僕は、ニヤニヤするのを必死に押さえて、二人の相手をしよう。

 気持ち悪がられて、止められたら困る。


 二人は、なぜか楽しいらしいし、当然ながら僕も楽しい。

 惜しむらくは、タッチは股間にして欲しい。それは贅沢過ぎるか。ズボンが湿っても困るしな。


 午後からは、自由時間だ。


 当たり前だけど、〈アコ〉と〈クルス〉と三人で過ごす。

 両手に花だ。すんごく楽しい。でも、三人だから、キスも出来ない。


 手を繋ぐのも、直ぐ傍で人が見ています、とやんわり断られた。

 また、変な噂が流れるのと、困るんだろう。悲しいな。


 三人で、おしゃべりをするだけだ。三人で、他愛のない話をする。

 海を眺めたりもするが、海は何もない。雲の方がましだ。雲は形を変えて流れて行くのが面白い。 三人で、ワイワイ言いながら、雲を観察する。

 〈アコ〉と〈クルス〉と一緒なら、何でも楽しい。


 〈アコ〉の母親と船長が二人でいる時は、邪魔をしに行く。〈アコ〉の要望だから仕方がない。

 もし、妊娠でもしたら大騒動だ。この世界には、避妊する手立てが殆どないからな。


 そうすると、船長が泣きそうな顔をする。けれど、〈アコ〉の母親はそうでもない。

 邪魔をするのは、船長のためでもあるんだ。船長は、暇つぶしの相手に過ぎない。

 〈アコ〉の母親の周りにはいないタイプだから、目新しいだけだと思う。


 夜は一人で寝るだけだ。〈アコ〉と〈クルス〉は、治療のためとか、何か理由がないと来られないらしい。

 何もないとエッチなことを、しにいくと思われるらしい。

 夜二人切りなら、確かに、エッチなことを必ずするだろう。当たっているな。


 僕の方からもいけない。〈アコ〉と〈クルス〉は同室だから、二人切りにはなれないんだ。

 それに、三人でエッチなことをしていると、思われる恐れもあるらしい。

 三人か。それも悪いとは言えないな。ありかも知れない。


 こんな風に船上で数日過ごして、僕達は王都に戻ってきた。




          第二章完




 ※ 第四章「忙しい下半期」編に、続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る