第196話 何て大きいんだ

 「えー。もう少し触りたいよ」


 「んうん、おねだりするみたいに、言わないでください。今日は、もうお終いです」


 仕方がないな。お終いなのか。それじゃ、代わりにお尻を触ろう。

 僕は、そろそろと〈アコ〉のお尻に手を伸ばした。


 お尻を触ろうと思って、密着したから分かったけど、〈アコ〉の両手からおっぱいがはみ出している。

 僕の胸に、〈アコ〉の両手と、その周りの柔らかいものが、一緒に当たるので分かってしまった。 

 改めて、言おう。両手でも、真ん中しか隠せていないぞ。


 「何て大きいんだ」


 「うっ、〈タロ〉様まで、大きいと仰るなんて、あんまりです」


 「えっ、悪いことじゃないよ」


 「でも、〈タロ〉様。町の人達が、私を見て大きいって笑うのですよ」


 「なんだそれは。〈アコ〉を笑うなんて、許せないな。誰が笑ったんだ。懲らしめてやる」


 「うぅ、そこまでして頂かなくても、良いのですが。笑われると、悲しくなりますわ」


 「酷いヤツらだな。〈アコ〉のおっぱいは、大きくて、とても素晴らしいのに」


 「はぁ、胸ではありませんわ。お尻です」


 「えっ、お尻なの。〈アコ〉のお尻って、そんなに大きかったかな」


 本当は、僕も結構大きいと思っていた。

 ただ、このタイミングで、バカ正直に伝えることは避けようと、咄嗟に判断した。

 我ながら、大正解だと思う。


 それに、お尻が大きいのも、〈アコ〉の魅力の一部だと思う。

 小さいと大きなおっぱいとの、バランスを欠いてしまう。

 お尻とおっぱいの、バランスが取れてこそのナイスバディなんだよ。


 何に向かってかは分からないけど、大いに力説したい。

 いずれにしても、〈アコ〉は、笑われるような体型は、していないはずだ。


 「うぅ、〈タロ〉様は、やっぱり、私の胸ばかり見ていたのですか」


 「いやー。〈アコ〉の胸に視線がいくのは、しょうがないじゃないか。それに、お尻をずっと見ている方が変だよ」


 「それはそうですけど。〈タロ〉様は、私のお尻を大きいと思いますか」


 〈アコ〉は、お尻が大きいことを随分気にしているな。

 おっぱいが、こんなに大きいのは、気にしてないんだろうか。

 まあ、今はとても聞けない話だな。


 「大きくないよ。ちょうど良い大きさだと思うよ」


 「〈タロ〉様、適当に答えていません。私のお尻の大きさを、ちゃんと分かって言ってますの」


 「えーと。分かって言ったつもりだけど。そう言われると、自信が無くなってきたよ」


 「それでは、今直ぐに、私のお尻の大きさを確かめてください」


 やけに真剣な言い方だったので、確かめないわけには、いかないな。

 〈アコ〉の背後に回って、お尻を見ようとしたが、如何せん暗すぎる。


 「〈アコ〉、見ようと思ったけど、暗くて見えないよ」


 「うーん。それでは、手で確認してください」


 えっ、触れってことか。僕に異存はないが、良いのか。


 「分かったよ」


 僕は、しゃがんで〈アコ〉のお尻に手を這わしていった。

 大きさを確認するんだから、お尻の周囲をまずは触った。


 〈アコ〉のお尻は、突き出すような形で、左右に丸い山がある感じだ。

 おっぱいより、柔らかくないが、その分張りがあると思う。


 おっぱいも良いが、〈アコ〉のお尻も素晴らしいぞ。

 周囲をすーっとなぞるように、触っていると〈アコ〉が、もぞもぞとお尻を左右に振ってくる。

 〈アコ〉、僕を誘っているんじゃないよな。


 「んうん、〈タロ〉様、くすぐったいですわ。ちゃんと確認してますの」


 「しているよ。今、外側を確認したんだ」


 外側から、内側に手を移動させて、お尻を揉んでみた。

 僕の手に反発して、お尻がプルンと揺れた。

 揉むたびに、プルン、プルンと揺れる。

 連続で揉むと、プルンも連続になった。

 素晴らしい復元力だ。永久に揉めそうだ。


 「あっ、あっ、はん、〈タロ〉様、私のお尻を玩具にしていません。真面目に確認してください」


 「ごめんなさい」


 真面目に確認すると、確かに〈アコ〉のお尻は大きめだ。けれど、異常に大きいほどじゃない。

 骨盤も大きいようで、俗にいう安産型だとおもう。


 〈アコ〉は、安産なのか。


 「〈アコ〉。町の人達が笑ったのは、〈アコ〉のお尻が大きくて、嬉しかったんじゃないのかな」


 「はぁ、どうして、私のお尻が大きいと、嬉しいのですか」


 「それは、元気な子供が生まれると、思ったんじゃないか」


 「はっ、そう言えば、女性に「腰が張っているから良い」と言われましたわ」


 「そうだよ。〈アコ〉の体形をバカにしてたんじゃないよ。〈アコ〉に期待しているんだよ」


 「私のお尻をバカにされたのでは、ないようですね。悩みが、一つ減りましたわ。〈タロ〉様、ありがとうございます」


 「〈アコ〉、良かったな」


 「でも、少し傷つきました。今さっき、〈タロ〉様は、私のお尻が大きいと言いましたわ。やっぱり、大きいと思っていたのですね」


 「えぇー。そんなこと言った」


 「間接的にですが、言われました」


 「そうかな。でも、〈アコ〉のお尻は、僕が大好きなお尻だよ。これは、絶対嘘じゃない。断言出来る」


 「うふ、〈タロ〉様は、私の大きなお尻が好きなのですね。先程の確認を、大変熱心にされておられましたので、嘘じゃないと私も思いますわ」


 「分かって貰えて、良かったよ」


 「〈タロ〉様が、好きでいて下さるのなら、もう大きいのは気にしませんわ。ただ、キスしてくれないと、許してあげませんよ」


 〈アコ〉が、そう言うのなら仕方がない。

 僕は、〈アコ〉を引き寄せ、頭を抱くようにして、キスをした。

 唇全体を包み込んだり、少し舌を出して、〈アコ〉の唇を愛撫する。

 しばらくキスを続けてから、顔を見ると、〈アコ〉は嬉しいのか笑っていた。


 「ふふふ、〈タロ〉様。私は、まだ満足していませんわ。もっと、もっと、してくれないと、許しませんよ」


 今度は、〈アコ〉の両手を握って、引き寄せてからキスをした。

 舌を出して、〈アコ〉の唇を割って入ろうとしたけど、〈アコ〉の舌でブロックされた。

 ただ、〈アコ〉も、僕の唇全体を包み込んだり、少し舌を出して、唇を愛撫してくれたので、まあ良いか。

 今夜は、濃厚な気分じゃないんだろう。


 「うふ、〈タロ〉様。私、今日はもう満足しましたわ。母が、帰って来る頃ですので、逢引きはここまでにしましょう」


 「へぇっ、許してくれないの」


 「ふふふ、〈タロ〉様は、ずっと私に、キスをし続ける運命なんです。諦めてくださいな」


 そう言ってから、〈アコ〉は僕の手を握って、屋上から降りる階段に向かった。

 〈アコ〉に、始終主導権を握られているような気がするな。


 でも、どこかの場面で、必ず主導権を奪い返してやるぞ。

 僕は、月光に固く誓った。もっと固くなるように祈った。

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