第191話 女の子座り

 誓って、嘘じゃない。〈サトミ〉には、白が一番似合っているよ。なんと言っても、〈サトミ〉が、一番可愛いからな」


 「あはっ、〈サトミ〉が一番なんだ」


 〈サトミ〉は、目と口元が、ニマニマって感じになって、すごく喜んでいるようだ。

 機嫌が、直って良かった。

 褒めたら直ぐに喜んでくれる、素直な〈サトミ〉は、何て良い子なんだろう。


 「そうだよ。〈サトミ〉が、一番好きだ」


 「あはっ、〈サトミ〉も〈タロ〉様が、世界中で一番好きだよ。〈タロ〉様、検証はもう終わりなの、〈サトミ〉は元気になったよ」


 「そうか。それじゃ、今度は座った状態で、検証しよう。〈サトミ〉、ソファーの上で、女の子座りをしてみてよ」


 僕は、ソファーから降りて、しゃがんだ状態で検証することにした。

 目線が低くないと、白いショーツが見えないからな。

 あっ、ちゃんと検証出来ない、の間違いだ。


 「〈タロ〉様、しゃがむの。良いけど、近いな」


 〈サトミ〉は、ちょっとブツブツ言いながらも、ソファーの上で、女の子座りをしてくれた。

 ちょこんと座っている様子が、何だかとても可愛らしい。

 太ももが、ふくらはぎと当たって、形を変えているのが、結構そそるぞ。


 手で、股間を隠す仕草が、いじらしくて、少しエッチだ。

 でも、隠したら検証にならないな。グフェフェ。


 「〈サトミ〉、検証の邪魔だから、手を退けてよ」


 「えー、〈タロ〉様。手を退けるの。見えちゃうよ」


 「検証のためなんだ。一瞬で良いから」


 「もうもう、〈タロ〉様。ちょっと、だけだよ」


 〈サトミ〉は、顔を真っ赤にして、ほんの一瞬だけ手を退けてくれた。

 ワンピースの裾の奥に、確かに三角形の白い物が見えた。太ももの付け根も見えた。


 「〈タロ〉様、そんな真剣に、〈サトミ〉の足を見ないでよ。睨まれているみたいだよ」


 「ごめんよ。そんな真剣だった」


 「うん。怖いほど真剣な目をしてたよ」


 「そうか気をつけるよ。女の子座りの検証は、手で隠さないと、下着は見えてしまうな」


 「ふぅ、〈サトミ〉は、検証しなくても分かってた。もう、検証は終わりにしようよ。〈タロ〉様が、怖い顔になるし、恥ずかしいから、もう良いでしょう」


 「そうか。それじゃ、仕方がないな。もう終わりにしよう」


 「うん。〈タロ〉様。〈サトミ〉は、一度家に帰ってから、試食会へ行くよ。〈タロ〉様も来るでしょう」


 「うん。僕も行くよ。そこで、また逢おうか」


 「分かりました。それじゃ、〈タロ〉様、一度、さよならするね」


 「検証につき合ってくれて、ありがとう。〈サトミ〉、また後でね」


 そんな怖い顔になっていたか。ド真剣に観察してたからな。

 集中し過ぎて、無表情になっていたんだろうな。失敗だ。

 今度は、ニヤニヤ笑いながら、観察する必要があるな。それは、それで怖いか。


 検証は、まだ体育座りも、立膝もあったのに、誠に残念だ。無念だ。心残りだ。

 この挫折した経験を、何かに生かそう。生かしきれない気もするが。


 試食会には、大勢の人が集まっている。多すぎて、分からないほどだ。

 重臣や臣下達は、もちろん。〈リク〉、〈カリナ〉、〈カリタ〉達もいる。

 向こうにいるのは、〈ハパ〉先生と〈ハヅ〉と〈サヤ〉だ。町の商店の人達までいる。

 一体何人招待したんだ。これじゃお祭りだよ。


 あまりの人の多さに、茫然としていたら、許嫁達が駆け寄ってきてくれた。


 「〈タロ〉様、こんばんは。すごく大勢の人ですね。吃驚しましたわ」


 「〈タロ〉様、こんばんは。魚を焼いているせいもあるのでしょうが、熱気がすごいですね」


 「〈タロ〉様、こんばんは。お魚を焼いている匂いが、すごく美味しそうだよ。〈トラ〉と〈ドラ〉が、悪戯しないか心配してたけど、お腹一杯で良かった」


 ふと、〈サトミ〉の足を見たら、珍しく生足じゃない。

 服は、さっきのオレンジのワンピースだけど、ぴったりとした厚いタイツみたいなものを、はいている。どういうことなんだ。


 どういうことも、なにも、ワンピースとタイツの組み合わせだ。

 〈サトミ〉の方を見ると、「えへっ」って言う顔で僕を見ていた。

 後で、ギリギリ吐かせてやろう。


 塩魚と干物は、急造のかまどを作って、数か所で焼いているようだ。

 かまどの前に、焼いた魚を求める行列が、出来ているのが見えた。

 お酒の樽も、数か所に配置されている。

 領主としての僕が、太っ腹で提供したものだ。出費が痛い。


 早くも、樽の傍らで、お酒を飲んでいる人も見える。

 鍛冶屋の〈フィイコ〉と、〈入り江の姉御〉母娘だ。

 魔王と妖狐が、相まみえるか。絶対に、近づかないようにしよう。


 僕達も、塩魚と干物を貰おうと、行列のお尻の方へ歩いていく。

 でも、途中で、〈アコ〉の母親達三人に、呼び止められた。


 僕達の席を、特別に用意してあるので、そこに来て欲しいとのことだ。

 もちろん、塩魚と干物も用意されているし、お酒もあるとのことだった。

 僕は領主で、お酒も提供しているのだから、ビップ待遇は当然か。


 僕達は、席に案内されて、それぞれが椅子に座った。

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