第187話 僕の印

 「〈タロ〉様、お邪魔します。〈タロ〉様の部屋は、以前と何も変わっていないですね」


 「〈クルス〉、辛いことをさせて、ごめん。僕にどうして欲しい」


 「〈タロ〉様、もう謝って頂く必要はありません。今は怒っていいませんよ。

 頭をもう一度、撫でて欲しいです」


 僕は、〈クルス〉の背中に回って、〈クルス〉の頭を撫でた。

 頭を撫ぜるだけでは、間がもたないので、髪も触ることにした。


 「〈クルス〉、髪も撫でるよ。良いかい」


 「はい。〈タロ〉様、お願いします」


 髪を撫でるのなら、〈クルス〉の背中の方に回ろう。

 背中に回るのは、髪を撫でやすいからだ。後ろ髪を含めて、髪全体を撫でられる。

 それと、濡れたパンツも、バレにくいしな。


 「〈クルス〉の髪は、とっても艶があって、サラサラだな。良い匂いもする」


 「もう、〈タロ〉様は。匂いは嗅がないでください。恥ずかしいです」


 「良い匂いがするから、しょうがないよ。思わず嗅いでしまうんだ」


 僕はこう言いながら、背中から〈クルス〉を抱いて、髪にキスをした。

 後ろから、両手を〈クルス〉のお腹、〈クルス〉の乳房の下あたりで、クロスして抱きしめながらだ。


 〈クルス〉の匂いは、甘い林檎のような香りだ。

 ただ、女の子の甘い香りから、女の人の誘うような甘い香りに、変ってきた気がする。

 頭の中が、痺れるような感覚になってしまう。


〈クルス〉が、僕を嗅がないことを祈ろう。アンモニア臭がするかも知れない。


 「〈タロ〉様。舌はダメですよ」


 〈クルス〉はそう言いながら、首を曲げて、僕の方に振り返った。

 頬を赤く染めて、瞳は潤んでいるように見える。

 細い首筋が、白く光って艶めかしい。


 僕は、乳房の下でクロスしている両手に力を込めて、〈クルス〉を引き寄せた。

 もう、下乳を触ってしまっているけど、許して貰おう。


 〈クルス〉は、少し身じろぎしたが、僕を見詰めたままだ。


 僕のあそこが、お尻に当たったんだろう。

 ちょうど割れ目で、大きくなったからな。隙間が無いと、大きくなれないんだ。

 〈クルス〉のお尻の肉圧に、負けていたってことだ。

 本体と同じで、根性がないな。

 おまけに湿っているし。


 僕は、〈クルス〉の唇に、そっと口づけをした。

 〈クルス〉は、じっとしたまま動かない。

 まだ、足りないって、〈クルス〉の濡れた唇が語っている。


 僕は、口づけをしたまま、〈クルス〉の唇をくまなく愛撫した。

 〈クルス〉は、「ううん」「んうん」とうめいて、僕の手首を掴んできた。


 〈クルス〉は、僕の肩に後頭部を預けて、のけ反るような姿勢をとっている。

 僕は、無防備にさらされた〈クルス〉の白い首に、キスを何度もした。

 〈クルス〉は、「あっ」「あん」とうめいて、僕の手首を強く握ってくる。


 〈クルス〉は、もっとのけ反って、白い首を僕に、見せつけているようだ。

 僕に、私の首をもっと愛撫しなさいと、命令しているのに違いない。


 もう、濡れたパンツのことは、気にならない。


 さらに、〈クルス〉の鎖骨に、キスをして、「チュウ」と口づけの跡をつけた。

 一度では、収まらななくて、三度だ。

 〈クルス〉の命令だから、仕方がないんだ。


 〈クルス〉は、「いや」「だめ」と声を出して、僕の腕の中で身をくねらせていた。


 腕の中の〈クルス〉は、熱をまとって、僕の胸も、下半身も、そこらじゅうを刺激する。

 〈クルス〉の、しなやかな身体が、悩ましく動くんだから、刺激が強すぎる。

 もっと〈クルス〉服の奥、鎖骨の先の上乳に、いこうかと思ったら、〈クルス〉の声が聞こえた。


 「もう、〈タロ〉様は。そんなところを吸って、跡がついちゃいます」


 〈クルス〉の鎖骨に、僕のつけたキスの跡が、薄く赤く残っているのが見えた。


 「ごめん。ついちゃったよ」


 「えっ、見えます」


 「大丈夫。普通にしてたら、服で隠れるよ」


 「良かった。それなら、何とかなりますね。ですが、どうして、こんなことをしたのですか」


 「〈クルス〉に、僕の跡をつけたかったんだよ」


 〈クルス〉は、口づけの跡を愛おしそうに、触りながら言った。


 「私に、〈タロ〉様の印をつけたのですか」


 「そうだよ。僕の印だよ」


 「あぁ、〈タロ〉様、私、とても嬉しいです。私は、〈タロ〉様のものなのですね。

 でも、次回からは、印は目立たないところに、お願いします」


 うーん、目立たないところって、どこだろう。

 服で隠れる場所だけど、上乳かな。〈クルス〉は分かって言っているのかな。


 「〈アコ〉ちゃんが、待っていますので、今日はこれでお終いです」


 「〈クルス〉、了解したよ。安心出来たかい」


 「はい。〈タロ〉様の思いを、私の身体に残して頂きましたので、とても安心出来ました」

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