第186話 キスの嵐

 〈ドリー〉は、何度も頭を下げながら、大広間から出て行った。

 〈カリタ〉も、〈ドリー〉の真似をして、頭をペコペコ下げている。

 けれど、その頭にはクエスチョンマークが、三つほど浮かんでいるのが見えていた。


 〈カリタ〉は、一生〈ドリー〉のお尻に敷かれるんだな。

 それはそれで、幸せなのかも知れないな。

 〈ドリー〉のお尻が、どんなのかは、知らないけど。

 大きいのだけは確かだ。


 「作戦も上手くいったし、僕達も解散しようか」と許嫁達に告げると。


 「作戦で傷を受けた人員の手当てが、まだ済んでいませんわ」


 「そうだよ、〈タロ〉様。〈サトミ〉は、まだ心が痛いよ」


 「そうです。このままでは、後遺症が残っていまします」


 「えっ、さっきは、〈ドリー〉に、笑いかけていたじゃないか」


 「あれは、私達が怒っていたら、〈ドリー〉さんが気に病むでしょう」


 「そうだよ。〈ドリー〉さんは、何も悪くないもの」


 「〈ドリー〉さんは、祝福してあげたいのです。

 そのために、私達はあんなお芝居をしたのですよ」


 「ぴぃー、それじゃどうしたら、許してくれるの」


 「許す、許さない、ではありませんわ。心の傷を癒して欲しいのです」


 「そうだよ。〈タロ〉様、〈サトミ〉は優しく抱きしめて欲しいな」


 「私達の心の傷を治せるのは〈タロ〉様しかいません。安心させて欲しいのです」


 そういうことで、許嫁達は、順番に僕の部屋を訪れることになった。

 心の傷を治すとか、安心を与えるって、どうしたら良いんだ。良く分からないぞ。

 いつもみたいに、おっぱいや、お尻を触ってはいけないんだろうな。

 どうしよう。困ったな。


 「〈タロ〉様、お邪魔します。〈サトミ〉です」


 あっ、悩んでいたら、パンツを履き替えるのを忘れていた。

 困ったことに、少し湿っているよ。


 「〈サトミ〉、辛いことをさせて、ごめん。僕はどうしたら良いのかな」


 「〈タロ〉様、もう謝らなくて良いよ。〈サトミ〉は、もう怒ってないから。

 〈サトミ〉は、〈タロ〉様と触れ合いたいんだよ。〈タロ〉様、抱きしめてよ」


 僕は、〈サトミ〉に近づいて、〈サトミ〉を抱きしめた。

 〈サトミ〉の希望どおり、ふんわりと優しくだ。

 〈サトミ〉の胸は、大きくは無いが、それでも十分存在感がある。

 プリプリしている感じで、跳ね返してくるようだ。


 ただ、湿っているから、出来るだけ、下半身は押し付けないようにしよう。


 「〈タロ〉様が、暖かいよ」と言って、〈サトミ〉は僕の腰に手を回してくる。

 〈サトミ〉の顔は、僕の胸辺りだ。

 これじゃ、〈サトミ〉の顔が見えないな。


 このまま、〈サトミ〉を抱きしめていたら良いのかも知れないが、何かもっと〈サトミ〉を喜ばせることが出来ないかな。


 そこで、僕は〈サトミ〉の膝裏に手を入れて、〈サトミ〉をスッと持ち上げた。

 お姫様抱っこって言うヤツだ。

 〈サトミ〉は、ちっこいから余裕だ。

 〈サトミ〉の身体は、温かくて柔らかい。ミルクみたいな、良い匂いもする。

 いけない、少し興奮してきた。


 それと、パンツから、出来るだけ離す方が良いから、これは正解だな。


 「キャ、やだ。〈タロ〉様。あぅ、〈サトミ〉を、どうするつもりなの」


 「こうして、抱っこしたら、〈サトミ〉の顔が、直ぐ近くで見えるだろう」


 「もうもう、こんなことされたら、〈サトミ〉は、恥ずかしいよ。胸のドキドキが止まらないよ」


 「そう言うなよ。〈サトミ〉の可愛い顔が、見たいんだよ」


 「うー。〈タロ〉様は、〈サトミ〉の顔が見たいの。〈サトミ〉は可愛いの」


 「そうだよ。〈サトミ〉は、とっても可愛いよ」


 「あはっ、〈サトミ〉はね。すっごく嬉しいよ。〈タロ〉様、大好き」


 〈サトミ〉は、顔をピンク色にして、僕の首にしがみついてきた。

 僕の目を、ウルウルとした潤んだ瞳で見ている。僕のパンツも潤んでいる。


 僕は、〈サトミ〉を抱っこしたまま、顔をゆっくりと近づけて、〈サトミ〉の唇に「チュ」「チュ」とキスをした。

 〈サトミ〉は、目を瞑っているので、長いまつ毛が目立って見えた。

 カールしたまつ毛は、僕がキスをするたび、フルフルと細かく震えていた気がする。


 「はあっ、〈タロ〉様。もっと」


 言われたとおり、僕は〈サトミ〉に、何回も「チュ」「チュ」とキスをした。

 唇の他にも、おでこや、ほっぺにも、顔中に「チュ」「チュ」とキスをした。


 「クゥ、〈タロ〉様。あっ、ダメだよ。きゃ、くすぐったいよ」


 〈サトミ〉は、くすぐったそうに身を捩っているけど、顔はずっと僕の方を向いている。

 目は笑っているし、嫌がってはいないと思う。


 僕は、再度〈サトミ〉の顔中にキスの嵐を降らせた。


 「やん、やん、〈タロ〉様。もう止めて。

 二人が待っているから、〈サトミ〉は、もう行かなきゃ。

 〈タロ〉様、降ろしてくださいな。続きは、また今度でお願い」


 「〈サトミ〉、分かったよ。心の痛みは癒えたかい」


 「うん、もう痛くないよ。

 〈タロ〉様に、優しく抱っこして貰ったし、キスも一杯して貰ったから。

 〈サトミ〉の心は、〈タロ〉様で溢れそうだよ」

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