第161話 気になる女の子に意地悪をする

 〈アコ〉の言ったことは、本当なんだろうか。

 ベッドの上で考えていたら、〈クルス〉が入ってきた。


 「〈タロ〉様、お気分はどうですか。お身体に不調はありませんか」


 「心配してくれて、ありがとう。もう、大丈夫だよ」


 「急所を蹴ってしまって、すいません。痛かったでしょう」


 「さっきも言ったけど、〈クルス〉が謝る必要は無いよ。調子に乗った僕が悪いんだ」


 「でも、すごく痛かったでしょう」


 「仕方が無いよ。〈クルス〉が嫌がってたのに、触り続けた罰があったたんだよ。

 もう、痛みは全く無いよ」


 「はぁー。良かった。転げまわっておられた時は、すごく心配でした」


 「心配かけて、ごめんね。それに、ちょっと胸を触り過ぎた。ごめん」


 「そうでした。思い出しました。〈タロ〉様、触り過ぎです。

 安心したら、怒りがフツフツと湧いてきました」


 「えっ」


 「〈タロ〉様は、私の胸をあんなにいやらしく触って。

 横に〈アコ〉ちゃんがいるのに、私がどんな思いでいたか分かっていますか」


 「すいません」


 「私に意地悪して、何が楽しいのですか」


 「意地悪じゃないよ。〈クルス〉に、そんなことしないよ」


 「それでは、なぜ、私が強く止めて言ったのに、触り続けたのですか」


 「それは。〈クルス〉が色っぽい声を出すから」


 「それは、責任転嫁ではないのですか。私が悪いのですか」


 「違います。すいません。

 上手く説明出来ないけど、〈クルス〉の胸が触りたかったんだよ。

 どうしても、触りたい気持ちが、止めらなかったんだよ。

 〈クルス〉の反応が、嬉しかったんだよ」


 「もう、結構です。説明になっていませんね」


 「すいません」


 〈クルス〉は、僕の目を、しっかりと見詰めて話を続けてきた。


 「男の子は、気になる女の子に意地悪をするといいます。

 〈タロ〉様が、私に意地悪をするのは、それと同じなのですか」


 「えっ」


 「ええっと、好きなのに、逆に意地悪をして、虐めてしまうことがあると聞きました」


 〈クルス〉はモジモジとした様子で、恥ずかしそうに聞いてきた。

 ここは、〈クルス〉の話に乗っておこう。


 「そうかも知れないな。僕が、〈クルス〉のことを好きなのは間違いないからな」


 「好きなのは間違いないですか… 。

 そう言われると、もう怒れませんね。

 私を好きだから、意地悪をするのですか。

 私の身体を触って、私が声を出したり、反応するのが、嬉しいのですか」


 「自分では、良く分からないけど、そうかも知れない」


 「そうなのですか。

 ふー。〈タロ〉様が、私の身体を触りたいのは、一定理解できます。

 〈タロ〉様に触られるのは、決して不快ではありません。

 私も〈タロ〉様が大好きだから、いつも触れ合っていたいのですよ。

 でも、限度があります。私が止めてて言った時は、それが限度です。

 それ以上、意地悪をしないでください。

 私も出来るだけ限度を広げますけど、〈タロ〉様も限度を守って欲しいのです。

 お願いします。

 〈タロ〉様と結婚すれば、私の限度は無くなります。

 その時は、どうぞご自由に私を触って頂いて良いのです。

 けれど、これだけは必ず約束して欲しいのです。

 人前では触らないでください。

 〈アコ〉ちゃんであっても、人が見ているところでは恥ずかし過ぎます。

 そんな意地悪をされたら、すごく悲しいです。分かって頂けましたか」


 「はい。良く分かりました。意地悪はもうしません」


 「ありがとうございます。信じていますね」


 〈クルス〉はこう言うと、僕の服の袖を引っ張った。


 「キスしても良い」


 「良いに決まっています。二人切りの時は、直ぐに抱きしめてキスしてください」


 抱きしめるのと、キスの限度は無いらしい。

 僕は〈クルス〉を抱き寄せて、そっとキスをした。

 まだ、怒っているかも知れないので、念のため限度を探りながらだ。


 〈クルス〉は、僕をずっと見詰めて、僕の服をギュッと掴んでいる。

 濃いブラウンの瞳が、キラキラと期待に揺らめき。

 長いまつ毛が、もう終わりなのと、フルフルと不安そうに揺れていた。


 まだ、限度には達していなようだ。

 僕は、〈クルス〉の身体を、守るように胸に包み込んで、今度は唇を吸った。

 「チュッ」と音をたててだ。

 それから、〈クルス〉の唇を、僕の唇で愛撫し、優しく甘噛みもした。


 〈クルス〉は、

 「うんん、私、〈タロ〉様に口づけされて、心臓がドキドキします。

 とっても甘くて、幸せな気持ちになります。もっと、して欲しいです」

 と鼻にかかった声で呟いた。


 口は、半開きになって、侵入を拒まないと言っている。

 僕は〈クルス〉を、さらに、強く抱きしめて、もう一度キスをした。

 今度は、舌も入れた。


 〈クルス〉の唇も、口の中も、舌も、丁寧に嘗め回した。

 〈クルス〉の舌を舐めると、〈クルス〉の身体がピクンピクンと動いた。


 「あん、舌をそんなに舐められたら、もう限度です。これ以上は耐えられません。

 〈タロ〉様と、ずっといたいのですが、まだそうもいきません」


 〈クルス〉は、握っていた僕の服を離して、何度も振り返りながら部屋を出ていった。

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