第159話 金的
航海の三日目も、昨日と同じことをしている。
〈リク〉と〈サヤ〉は、楽しそうに鍛錬している。
良く飽きないな。
流石は、中毒者だな。
〈カリナ〉が、物陰から寂しそうに覗いているのも、一緒だ。
さぼってないで、〈リーツア〉さんを手伝ってこいよ。
船長と〈アコ〉の母親は、また、海を見ている。
海のど真ん中で、見るものは波しかないだろう。
波が面白いのか。
船長の仕事をしろよ。
僕も、〈アコ〉と〈クルス〉の、先っちょを、また触っている。
他人のことは、言えないな。
〈アコ〉と〈クルス〉は、先っちょを固くして、「あっ」とか「ふんっ」とか「やっ」とか、呻きながらも、徐々に護身術が様になってきた。
肘打ちと、甲を踏みつける動きが、鋭くなってきている。
それを避ける僕も、集中する必要が出来てきた。
先っちょに集中して、もっと固くしたいのに、困ったもんだ。
それどころか、僕の金的も狙ってくる始末だ。
「〈タロ〉様の好き放題させませんわ」
「標的が大きくなっていますから、当たるはずです」
誤解も甚だしいよ。
好き放題なんかしてないよ。
二人が真剣になるように、少し先っちょを触っているだけだよ。
標的が大きいのは、その通りだ。
偉い。
良く気付いた。
僕のは、大きいんだよ。へへへッ。
「〈タロ〉様、変な笑い声を出さないでください。気持ち悪いですわ」
「変なことばかりするから、頭も変になって無いですか。心配です」
二人とも酷いことを言うな。半分も当たって無いよ。
昼ご飯を食べて、また、同じことを繰り返す。
〈アコ〉と〈クルス〉の、固くなった先っちょを触り続ける。
二人の、「あっ」とか「ふんっ」とか「やっ」とかの呻きが、段々切迫したものに変わってきた。
声も、段々大きくなってきている。
注意を引きたくは無いのだろうが、どうしても出てしまうようだ。
頑張れ。
身体中が真っ赤になって、汗も噴き出してきた。
下半身も、フニャフニャして、しっかり立っていられないようだ。
本当に、厳しい稽古をしているみたいだ。
女性が身を守るための稽古なんだから、これで良いのかも知れない。
ある意味、とても実践的だ。
僕は、一人づつでは、まどろっこしいと思い、
二人同時に相手をすることにした。
片方の先っちょをしか触れないが、ずっと触っていられるメリットがある。
〈アコ〉のは右の、〈クルス〉のは左の、先っちょをずっとムニムニと触り続けた。
二人は、肘打ちと、甲を踏むのを次々に仕掛けてくるが、
もう下半身がフラフラなので、鋭さが全くない。
簡単に避けられる。
「あっ、〈タロ〉様。これ以上触らないで。私、困ります。もう限界ですわ。あん、あん」
「やっ、そこばかり触らないでください。意地悪しないで。もう立っていられません。はぁん」
そう言われても、止まれないよ。
二人が反応するのをもっと見たいよ。
可愛い声をもっと聴かせて欲しいんだよ。
「いや、ダメだ。護身の道は厳しいものなんだ」
「あっ、白々しいことを言ってないで、止めなさい」
「やっ、いい加減にしないと怒ります」
それでも、触り続けていると、〈アコ〉と〈クルス〉が、
「あーん」「はーん」と、
今までに聞いたことも無い、色っぽい声を出した。
すごく色っぽいぞ。
堪らんな。
ぞくぞくして、下半身が痺れるようだ。
僕が、鼻の下を伸びして、棒立ちになっている所へ、二人の金的蹴りが同時にヒットした。
僕の伸びた金的にだ。
棒立ちの金的にだ。
「うがががが」「おがががが」
と僕は叫んで、その場でのたうち回った。
強烈に痛い。猛烈に痛い。
あまりの痛さに吐き気がする。
全身に、脂汗がしたたり落ちる。
「〈タロ〉様、大丈夫ですか」
「どこが痛いんですか」
と〈アコ〉と〈クルス〉は、のたうち回る僕の横でオロオロしている。
悲鳴を駆けつけた〈リク〉が、
「ご領主様、我慢です。動かないで」
と言って僕を持ち上げて、ジャンプさせてくれた。
そして、腰をトントンと叩いてくれた。
これが効いた。
まだ痛いけど、さっきまでの激痛は無くなった。
「ふー、痛くて、死ぬかと思った。〈リク〉ありがとう」
〈アコ〉と〈クルス〉は、涙ぐんで僕に謝ってくる。
「〈タロ〉様、ごめんなさい。大切なところ蹴ってしまって、許してください」
「急所を蹴ってしまって、すいません。〈タロ〉様、お許しください。罰は受けます」
「二人が悪いのでは無いよ。調子に乗り過ぎた僕が悪いんだよ。罰なんかとんでも無いよ」
「でも〈タロ〉様。あんなに痛がって」
「そうですが、痛くて叫んでおられました」
「〈リク〉が落としてくれたから、もう大丈夫だよ。心配しないで」
「そうです。もう、心配されないで。武道の鍛錬では良くあることです。しばらく、少し痛いと思いますが、問題無いでしょう。
でも〈タロ〉様のは、特別大事ですから、集中を切らしてはダメですよ」
「そうだよ、二人とも。〈タロ〉様が集中を切らしたのがいけないんだ。
〈タロ〉様の実力で、普通にやってたら、二人の金的を食らうはずが無いんだから。
それにしても、綺麗に金的を入れて、二人とも偉いよ。稽古を頑張ったんだね」
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