第147話 首を固めておく必要があった

 「〈アコ〉、口にバナナ果汁の泡が付いているよ」


 「〈タロ〉様、取ってくれますか」


 〈アコ〉が僕の方に顔を向けて、意味深なことを言ってきた。

 頬が少しピン正常ではク色になっている。目も伏し目になっている。

 これは、何かイチャイチャした方法正常ではで、泡を取れとの指令なのか。

 普通ではとても出来ない、恥ずかしい指令だ。

 どうするべきか。悩むな。


 舌で舐めよう。

 僕は〈アコ〉の唇を舌で舐めた。

 泡は直ぐ取れたが、そのまま、アコ〉の唇を舐めまわした。


 「ふんぅ、〈タロ〉様。もう止めて。くすぐったいです」


 「まだ、泡が取れていないよ」


 「あっ、ダメですってば。そんなに、泡が付いているわけが、ありませんわ。

 ふんぅ、〈タロ〉様、お願い」


 「分かったよ。もう止めるよ」


 「ふー、唇を舐められたら、こんなになると思いませんでしたわ」


 「何になるの」


 「それは。えーっと。内緒です」


 「えぇ、内緒なの」


 「うふふ、内緒なのです。それより、〈タロ〉様」


 〈アコ〉は、こう言って僕の方へ身体を向けてきた。

 顔には満面の笑みを浮かべている。

 次に僕がどうするのかを、微塵も疑っていない顔だ。

 内緒にしたことを、誤魔化す意図もあるようにみえる。


 でも、乗らないわけにはいかないか。僕も我慢出来そうにない。

 僕は、〈アコ〉の首に両手を回し、引き寄せてから、しっかりと抱きしめた。


 「〈タロ〉様に抱きしめられて、とっても幸せです。ずっとこうしていて欲しいです」


 「えっ、キスはしなくて良いの」


 「うー、それは、私の口からは言いたくないのです」


 「どうして」


 「恥ずかしいのに決まっています」


 「キスされるのは、恥ずかしく無いの」


 「それは、〈タロ〉様に一杯して貰いましたので、慣れました。もう、恥ずかしくは無いです。

 でも、言っときますけど、人前ではダメですよ」


 キスされるのは、恥ずかしく無くて、キスして欲しいと言うのは、恥ずかしい。

 何か矛盾している気がする。

 〈アコ〉が、キスして欲しいと言わないのは、何か思うところがあるのかな。


 まあ、良いか。分からないものは、しょうがない。

 下手な考えは止めて、したいことを存分にしよう。


 〈アコ〉の目を見詰めたまま、ゆっくりと〈アコ〉の唇に、唇を近づけていく。

 〈アコ〉は、「はん」と大きな吐息を一つ吐いて、目を瞑った。

 〈アコ〉の吐息は、僕の頬を少し熱くして、〈アコ〉の匂いも運んできた。

 バナナジュースのような、ねっとりと甘い匂いだった気がした。


 〈アコ〉の唇に、唇を強く押した後、音を立てて吸った。

 「チュパッ」と言う音が何回もした。


 僕は、首に左手を回しながら、〈アコ〉の左胸を触り出した。

 同時に、〈アコ〉の下唇と上唇を交互に軽く吸いながらだ。


 スリップの上から触る胸は、記憶の中の胸より、大きくて柔らかい。

 片手には収まりきらない。揉むと形が自在に変化する。

 ゆっくりと下から持ち上げるように、揉んであげると、胸がプルルンと震えた。


 左の胸ばかりではいけない。左右の大きさが、違うのは良くない。

 首から左手を外して、右の胸も、ゆっくりと下から持ち上げるように、揉んであげる。

 右胸もプルルンと震えた。


 「うんん、〈タロ〉様。ちょっと待って、いきなり胸を揉まないでください」


 〈アコ〉は、自分の胸を両手で隠してしまった。

 やっぱり、首を固めておく必要があったな。


 「いきなりだった」


 「そうです。それに、〈タロ〉様、私持ってきましたよ。どうしますか」


 「えっ、何を持ってきたの」


 「うーん、何だか恥ずかしいので、〈タロ〉様が当ててください」


 いやらしい下着なんだろうか。そんなわけ無いか。


 「何か、手掛かりが無いと分からないよ」


 「うーんと。そうですね。舞踏会で見てらしたわ」


 見ていたのは胸か。胸は今、揉んだしな。

 ドレスかな。でも、〈アコ〉が持っている鞄にドレスは入らないよな。


 「〈タロ〉様、分かりませんか。

 私は〈タロ〉様が見ているな、と感じたのですが、見て無かったのですか。

 がっかりです。悲しい気分ですわ」


 「そうか。分かったぞ。赤い唇だ。正解は口紅だろう」


 「うふふ、正解です。やっぱり、〈タロ〉様、見ていたのですね」


 「うん、一杯見ていたよ。赤い唇にむしゃぶりつきたいと思っていたよ」


 「まあ、〈タロ〉様、私の唇はお肉じゃありませんわ。食べないでください」


 「食べたくなるほど、可愛いってことだよ」


 「本当ですか。今から塗りますけど、噛んじゃダメですよ」


 「心配しないで。優しく噛むよ」


 「もお、〈タロ〉様は」


 〈アコ〉は、僕に背を向けて、手鏡を見ながら、口紅を塗り出した。

 女の子が口紅を塗っているの後姿はは、そそるものがあるな。


 後ろから覗いていると


 「ちょっと、〈タロ〉様、覗かないでください。まだ塗るのに慣れて無いので、手元が狂いますわ」


 と怒られた。


 十年後くらいの、口紅を塗ることに慣れた〈アコ〉は、どんな女性になっているのかな。

 今から楽しみだ。


 「〈タロ〉様、塗れしたよ。どうですか」


 〈アコ〉は、後ろに振りかえって、僕の顔を見てきた。

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