第143話 口紅を塗っている女の子

 「ふふふ、〈タロ〉様、ありがとうございます。

 そうだ〈タロ〉様。私、口紅を塗った方が良いですか」


 「おぉ、凄いぞ〈クルス〉。素晴らしい提案だ。直ぐ塗ってくれ。今、塗ってくれ」


 「うふふ、そんなに慌てないでください。直ぐ塗ってみますから」


 〈クルス〉が、鞄から口紅と手鏡を取り出して、唇を塗っている。

 口紅を塗っている女の子の姿は良いもんだ。

 僕だけのために、お化粧をしてくれていると思うとグッとくるもんがある。

 それに、〈クルス〉がやけに色っぽく見える。もう少女じゃないんだな。


 「〈タロ〉様、あまり見ないでくださいな。何だか、恥ずかしいですよ」


 「そうなんだ。分かったよ」


 分かったと言っても、チラチラ見てしまう。これはどうしようも無い。


 「〈タロ〉様、お待たせしました。どうですか、はみ出していませんか」


 〈クルス〉の言葉が終わらないのに、僕は〈クリス〉の耳を髪の上から、両手で覆って、〈クルス〉の顔を引き寄せた。


 「〈クルス〉、とても綺麗だよ。赤い唇が堪らないよ」


 「あぁ、〈タロ〉様。嬉しいです」


 僕は〈クルス〉の赤い唇を強く「チュパ」と吸った。


 「んんう、〈タロ〉様。そんなに強くしないで」


 舞踏会の時から、思い切り、しゃぶりつきたかった赤い唇だ。

 赤色で興奮した闘牛の牛だ。もう、止まらないぞ。

 また、〈クルス〉の赤い唇の全体を、包むように唇を重ねた。


 〈クルス〉の赤い唇の上も下も、何回も吸った。「チュ、チュ」と音をたててだ。

 〈クルス〉は、「んう」「んう」とくぐもった声を上げている。

 今度は、舌で〈クルス〉の赤い唇を舐める。丁寧にだ。


 「はんぅ、〈タロ〉様。そんなに私の唇を舐めたら、口紅が取れてしまいます」


 〈クルス〉は、顔も首も赤く染めて、僕に頭を固定されたまま、赤い唇を半開きしている。

 僕は、〈クルス〉の半開きの唇に、舌を入れようとした。


 「やっ、〈タロ〉様。舌は止めて」


 〈クルス〉は歯を食いしばって、僕の舌を入れまいとする。

 僕は手を伸ばして、〈クルス〉のお尻を触った。


 「んんう、うんん」


 〈クルス〉は、歯を食いしばったままだから、鼻でしか声が出せない。

 お尻の方へ手を伸ばして、僕の手を邪魔している。


 僕は〈クルス〉をソファーに押し倒して、覆いかぶさった。

 キスをしたまま、〈クルス〉のお尻の真ん中。お尻の割れ目の方に手を伸ばしていく。


 「いやー、〈タロ〉様。激しいです。落ち着いて。あっ、そんなとこダメ」


 〈クルス〉が、声を出したので、歯の間に隙間が出来た。

 僕の舌が、〈クルス〉の口の中に入っていく。

 〈クルス〉の舌とか口の中をゆっくりと、舌で触ってみる。


 「んんう、んんう」


 〈クルス〉は、顔をイヤイヤするように振って、僕の舌から逃れようとする。

 僕は、片手で〈クルス〉の首を押さえて逃がさない。


 〈クルス〉は、手を必死に伸ばして、お尻の割れ目の辺りを触っている僕の手も邪魔している。

 僕は、舌をもっと動かして〈クルス〉の気を散らせる。


 〈クルス〉の舌を舐めると、〈クルス〉の身体がピクっとする。

 また、舐めるとピクっとする。舐めるたびにピクっとする。


 〈クルス〉の身体が熱を帯びてきて、僕の手を邪魔しなくなった。

 〈クルス〉の汗ばんだ首筋から、甘い女の子の匂いが立ち昇ってくる。


 お尻は僕の触りたい放題だ。どこを触っても、もう邪魔をしない。

 〈クルス〉の身体から、力が抜けて、ふにゃっとなってしまった。


 〈クルス〉は、目を開いて、僕を見詰めている。

 首を僕の手でがっちりと固められて、身体には力が入っていない。

 〈クルス〉の瞳には、少しの諦めと僕への信頼が見える気がした。

 僕はお尻から手を離して、首も緩めて、唇を離した。


 「はぁん、〈タロ〉様」


 〈クルス〉が、僕の胸に顔を埋めて抱き着いてきた。


 「んう、しばらくこのまま。〈タロ〉様は、なんにもしちゃだめ」


 もっと、色々したかったけど、〈クルス〉の信頼を粉々に砕くわけにもいかない。

 様子を見ながら、徐々に進めていこう。ゴールはそんなに遠くない気もする。


 「もお、〈タロ〉様は。情熱的過ぎます。舌は止めてて言いましたよね。お尻も一杯触られるし、身体に力は入らなくなくなるし、私、焦っちゃいました」


 「でも、〈クルス〉の赤い唇が誘ってたんだよ。この中は甘いって」


 「なに言っているのですか。誘っていませんよ。でも、私の口の中はどうでした」


 「〈クルス〉の口の中は、ほんのり甘かったよ」


 「〈タロ〉様の舌も甘かったです。どうしてでしょう。蜜柑果汁のせいでしょうか」


 「どうかな。何時までも残ってはいないと思うよ。

 それより、舌を舐めるとピックとしてたね。あれはどうして」


 「うー、聞かないでください」


 「もう一度舌を入れて聞いてみるか」


 僕は、抱き着いている〈クルス〉の顎を指で、上向きにあげてみる。


 「もお、〈タロ〉様は意地悪です。私は「敏舌」って言いましたよね」


 「そうか、耳も敏感だけど、舌も敏感なのか。〈クルス〉は感じ易いんだね」


 「うー、〈タロ〉様。変な言い方をしないでください。私はそんなことありません。普通です」


 「じゃ、試してみようか」


 僕は〈クルス〉の耳の先を軽く触ってみた。


 「やん、止めて。耳はダメです」


 〈クルス〉は耳を両手で隠して、僕を睨んでいる。

 睨んでいるのも可愛いな。

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