第77話 溢れ出す

 「気にします。〈タロ〉様には、どうしても隠しておきたかったのです」


 「隠さなかったら、気が付かなかったよ」


 「本当ですか」


 「えっ、また聞くの」


 「あっ、止めて。お腹だけは、摘まんじゃいけません」


 「結論として、〈アコ〉は国中で一番の美人で、制服を着れば魅力が溢れ出す素敵な女性だと言うことだ」


 「溢れ出す、ですか」


 「そこに引っかかるなよ」


 「でも不安なんです。〈タロ〉様は、私のどこに魅力を感じるんですか」


 一杯褒めたのに、まだ食い下がるか。


 「性格も、顔も、全部だよ」


 「うっ、やっぱり、太った身体は魅力が無いんですね」


 太ったことに、余程コンプレックスを感じているんだな。


 「そんなことは無いよ。胸とか大きくて魅力的だよ」


 「まぁ、〈タロ〉様は大きい胸がお好きなんですか」


 そんなに、ストレートに聞かれたら、恥ずかしくて答えられないよ。


 「お好きです」


 「まぁ、そうなのですね。えぇっと、私のもですか」


 今までから、穴の開くほど、胸を凝視していたんだ。

 前から薄々分かっていただろうに、直接僕の口から聞きたいのか。

 本人を目の前にして言うのは、すごく抵抗があるな。


 「〈アコ〉のが、お好きです」


 「えっ、私のが ………

 〈タロ〉様がお好きなら、もう胸は隠しませんわ。ご自由に見てください。

 〈タロ〉様は、強引に手を掴まれ、無理やり私の胸を晒されました。

 でも、恥ずかしいのですが、不思議と嫌では無かったのです。

 無理やりなのに、胸の奥がキュンってなってしまったんです。

 〈タロ〉様だけには、無理やりされても、私、少しなら許してしまうんです」


 これはあれだな。お許しが出たな。


 僕は〈アコ〉の胸をそっと両手で触った。


 〈アコ〉は、「あっ」って言って、顔が桃色に染まっているけど、大人しく立っていて、抵抗する様子はない。


〈アコ〉の胸を両手で包み込むように触るが、乳房が両手からこぼれて、柔らかい肉が指の間から溢れ出てしまう。


 十本の指は、柔らかな胸にずんずん埋まって、全てが優しく包まれる。

 まるで、粘性の強い液体が一杯詰まっている、肌触りの良い大きな風船の様だ。

 タプタプ、フニュウニュしている。


 厚い生地の二枚が防御しているため、先っちょを捜すが、掌に感じられない。


 指先ではどうかと触る場所を下にずらして行くと、


 「〈タロ〉様、私、困ります。今はもうそのくらいで堪忍してください」


 と〈アコ〉が切なそうに言ってきた。


 もう、終わり。


〈アコ〉は、僕の手が動かせないように、自分の胸を僕にきつく押し付けて、背中に手を回してきた。


 上気した顔で、僕の目を上目遣いで見てきた。


 僕は左手を〈アコ〉の背中に回して、唇にキスをした。


 僕の右手は胸と胸の間に挟まれたままだ。あまり動かせないが、少しまさぐってしまう。


 〈アコ〉が、


 「〈タロ〉様、そんなに触られたら、制服に皺が出来てしまいます。お願い」


 と少し掠れた声で言って、僕の右手を掴んで、自分の胸から外した。


 右手が自由になってしまったので、両手で〈アコ〉を抱き寄せてもう一度キスをした。


 今度はもっと強く押し付けて、少し唇を吸ってみた。


 〈アコ〉は、

 「〈タロ〉様の許嫁で嬉しいです」

 と小さな声で呟いた。


 キスは、レベル3にアップしたな。



 入学式の当日になった。

 入学の手続きは、前日に済ませてある。


 費用は一人で三金貨もする。

 〈クルス〉の方は、一金貨と五十銀貨だ。

 〈アコ〉の分は、王宮から支給されているようだが、多分三金貨だろう。


 「南国果物店」は、蜜柑も芋もそれなりに売れて、入学費用の心配は何もしなくて良いのが有難い。


 〈カリナ〉に任せたけど、忙し過ぎて一人では店を切り盛り出来ないから、もう一人店員を雇いたいと申し出があったぐらいだ。


 遠く離れた場所の産物を大消費地に運ぶだけで、なかなかの儲けになる。

 遠くて、消費地近郊には無い物がポイントで、場所のギャップを埋めるということだ。

 流通がカギを握るというのは、本当だな。


 楠の広場で皆と別れて、入学式が挙行される講堂に向かう。


 もう、大勢の生徒達が集まってきている。

 当たり前だが、皆、真新しい制服で身を包んでいる。


 〈アコ〉と〈クルス〉の制服姿は、何回見ても目の保養になる。

 他の生徒を圧倒して、セクシー&ビューティーだ。


 他の生徒は背景だな。モブだ。


 〈アコ〉と〈クルス〉が、別れ際に何か言ってたけど、騒がしいのと制服姿に気を取られていて、良く聞こえなかった。


 もう一度聞こうとしたけど、もう雑踏の中へ消えていく。

 しばしお別れだ。僕の制服美少女よ。中身も見れるし、触れるんだぞ。


 入学式は、総勢十六人しかいないので、講堂はガランと寂しいもんだ。

 今日は、前半分を使用するようだ。


 子供の晴れ姿を見に来ている父兄の方がよほど多い。

 席は決まっていないので、真ん中左寄りに座ろう。


 理由は特にない。


 座って待っていると、入学生の一人が話しかけてきた。


 「お早うございます。〈タロスィト〉君、入学生代表の宣誓を譲ってくれて、ありがとう」


 名前はもう忘れたけど、僕の代わりに宣誓することになった男爵家の子だ。


 驚くことに、僕の入学試験の成績が、最高点だったらしい。

 ただ、最高点は二人いて、もう一人が彼だ。


 僕が宣誓をするのを渋ったから、彼がすることになったんだ。


 宣誓なんてしたくないと言ったら、皆吃驚してたな。

 名誉なことらしい。

 文面を考えるだけで億劫なのに、礼を言われてるなんて、どうかしている。


 「お早う。君の方が、相応しいと思ったんだよ。気にしないでくれよ」


 「そうか。君は謙虚なんだな」


 謙虚? 


 やりたい奴がやる方が、少しは宣誓も意味があるだろう。

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