第76話 《白鶴》の制服

 門まで出迎えてくれた〈アコ〉と手を繋いで、部屋に向かう。


 〈アコ〉は、もう他人に見られても気にしていない。すれ違う人と、にこやかに挨拶を交わしていく。


 今日は、〈アコ〉の母親がお茶会に呼ばれていて留守なのも、開放的な気分にさせているようだ。


 部屋に入るなり、〈アコ〉は、制服のことを聞いてきたけど、僕の表情で大方察している感じだ。


 「〈タロ〉様、制服はどうなりました」


  「大丈夫。心配しないで、ちゃんと出来たよ」


  「そうですか。良かったです。

 間に合わなかったら、どうしようと思っていましたわ」


  「〈アコ〉のせいじゃ無いさ。逆に教えて貰って助かったよ。

  これからも、僕の足らないところを補ってくれよ」


 「そう言って下さると、とても嬉しいですわ。私こそ、〈タロ〉様に助けて頂いています。

 でも、何時でも私を頼って下さいね。何でもしますから」


 「じゃ早速だけど、〈アコ〉の制服姿を見せてくれないか」


 「私のを見たいのですか」


 「そうだよ。見るのを楽しみに来たんだよ」


 「そう期待されると、何だか、急に恥ずかしくなってきましたわ。

  がっかりしても、出来るだけお顔には出さないでください。お願いしますね」


 〈アコ〉は、奥の寝室で着替えるようだ。

 何か手伝おうかと言ったら、今は必要ありませんと言われたよ。


 「〈タロ〉様、お待たせしました」


  〈アコ〉は、僕と目を合わそうとはせず、落ち着かないようすだ。

  頬も少し桃色に上気している。


  《白鶴》の制服は、純白のワンピースのドレスになっている。

  普通の白色ではなく、艶がある。

 制服なので絹では無いと思うが、特別な糸を使っているようだ。


 袖と裾には、赤いラインが施され、襟も赤くて大きいセーラータイプのものだ。

 袖は長袖で、先が僅かにベルのように膨らんで、エレガントな印象を与えている。

 スカートは、ほぼストレートでサイドに短いスリットが入り、長さはふくらはぎ近くまである。


 こちらも、エッチな要素は何もない。


「うわ、〈アコ〉、とても綺麗だ。制服が良く似合っているぞ。

〈アコ〉の制服姿は、国中で一番だな」


 頬がもっと濃い桃色になった〈アコ〉は、


 「褒め過ぎですわ。私はそれ程綺麗ではありません。

 〈タロ〉様、そんなに見詰めないで」


 と両手を身体の前で交差させて、自分を隠そうとしている。


 「何言ってるんだ。褒め足りないくらいだよ。〈アコ〉は国で一番の美人だよ。

  僕が嘘つきだと言うのかい」


 「まぁ、私が〈タロ〉様を嘘付呼ばわり出来ないのを分かっていて。

 狡い言い方 ですわ」


 〈アコ〉は、仕方が無い人って感じで、やっと笑顔になった。

  でも、両手を胸の前で交差させているのは、そのままだ。


 「〈アコ〉、両手が邪魔で良く見えないから、退けて欲しいな」


 「えぇ、ちょっとこれはいけません。遠慮しておきます」


 「遠慮ってなんだよ。隠さず全部見せてよ」


 僕はメロンおっぱいが隠されているのが、気に入らないので、〈アコ〉の傍に行った。


「ちょっと、〈タロ〉様。なんですか。こちらにこないでください」


〈アコ〉の両手首を握って、胸の前から両手とも剥がしてやった。


〈アコ〉は、少し力を入れて抵抗したけど、僕は気にせず強引に手を引っ張り上げた。


〈アコ〉は、手を上に持ち上げられたまま、一切抵抗せずに大人しく、胸を見せたままだ。


 メロンおっぱいは、白い制服をパンパンに膨らませて、その存在を僕に見せつける。


 雪の小山が二つ並んで、スノボが出来る高さがある。

 おまけに、柔らかそうにフニュって揺れて、泡雪みたいに溶けてしまいそうだ。


 本来は清楚な制服が、一部が突出してバランスが崩れて、逆の濃艶なものとなってしまっているぞ。


 「〈アコ〉、どうして隠すんだ。こんなに似合っているのに、勿体無いじゃないか。

 恥ずかしがる必要はないよ」


 「うぅぅ、〈タロ〉様。見ないで下さい。

 王宮に来て安心したのか、最近急に太ってしまったのです。

 制服も直さないと着られなかったのです」


 〈アコ〉は顔を横に背けて、ちょっぴり涙ぐんでいる。


 太ったことが恥ずかしかったのか、セクシー過ぎて恥ずかしいのかと思ったよ。

 男女の感じ方は違うんだな。


 制服がパンパンなのは、メロンおっぱいも進化していたのか。

 新メロンおっぱいと呼ぼう。


 「そうかな。そんなに太ったようには見えないぞ。

 〈アコ〉の魅力が増しているようにしか見えないな」


 「本当」


 〈アコ〉は僕の方に顔を向けて、真剣な目で聞いてくる。


 「本当だよ。嘘じゃない」


 「本当に。本当ですか」


 「ちょっとしつこいぞ。そら、大して太ってないよ」


 僕は〈アコ〉のお腹を試しに軽く摘まんでみた。

 脂肪の厚さはそれ程でも無いようだ。


 「あっ、今、摘まみましたね。乙女のお腹を摘まむなんて、酷いです。信じられません」


 〈アコ〉は、顔を熟れたトマトの様にして、僕を非難する目で睨んでいる。相当怒っているようだ。

 摘まんだのは、胸じゃなくて、腹なんだから、そんなに怒るなよ。


 「ごめん。謝るよ。そんなに気にしてたとは思わなかったんだよ」


 「気にします。〈タロ〉様には、どうしても隠しておきたかったのです」 

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