第62話 私、頑張りました

 メインイベントの昼食が終わって、宝石採取の再開だ。

 だけど、辺り一帯を三人でくまなく、探しても探しても、欠片すら見つからない。


 〈サトミ〉は、「どうしても見つけます」と言って、遠くの方まで、探しに行ってしまった。


 僕と〈クルス〉は、四分の三以上諦めて、真剣さはなくなっている。

 僕は、しゃがみこんだまま、全く動かず、休憩して(怠けて)いる状態だ。


 〈クルス〉は、どうしているかなと思って、振り返ると、斜め後ろで僕と同じように、しゃがんでいる。


 〈クルス〉は、僕と目が合うと、「怠けている共犯ですね」っていう感じで、ニコッと微笑んだ。


 〈クルス〉も、しゃがんでいるので、可愛い膝小僧が、スカートから仲良く二つ引っ付いて顔出している。


 この前のことがあるので、あんまり見ちゃいけないと思うけど、つい目線がいってしまう。


 〈クルス〉は、僕が膝を見ているのを感じたんだろう、真っ赤になって、下を向いてしまった。


 あぁ、またやっちゃったなと、後悔していると、〈クルス〉の膝がゆっくりと左右に開いていく。


 えっ、と思って見ていると、まだ、ゆっくりと開いていく。


 〈クルス〉は、下を向いたまま、少しも動いていない。

 膝だけが、徐々に動いている。


 〈クルス〉の膝は、もう角度にして三十度は左右に開いて、ふくらはぎや太ももの内側が見えてきた。


 スカートの陰でハッキリしないけど、白いショーツもチラッと見えている気がする。


 僕の心臓はもうバクバクだ。

 下半身が痺れてしまう。

 スカートの奥を凝視することしか、頭から無くなる。


 〈クルス〉の膝は、九十度近く左右に開いたところで、止まった。

 これ以上開くと、バランスが取れないのだろう。


 これだけ左右に開くと、〈クルス〉のスカートの中は、殆ど見えてしまう。


 スカートも、左右に大きく引っ張られて、もう、太ももの半分くらいのところに、引っかかっているだけだ。


 スカートの中に、隠されていた白いショーツは、今は太陽の光の下に晒されている。


 〈クルス〉の大切な部分を、小さな白い三角形で隠しているだけなのが、丸見えだ。


 〈クルス〉の青白い太ももも、付け根まで見えている。

 白い肌に透けている静脈まで見えていて、それが艶めかしい。


 ふくらはぎと太ももが、互いにつぶし合って、歪に変形しているのが、〈クルス〉の真面目な感じと相反して、妙に興奮を覚えてしまう。


 「〈タロ〉様、私、頑張りました」


 と震えているような小さな声で〈クルス〉が言った。


 僕は、この前で散々懲りているから、スカートの奥を凝視しながらも、立ち上がって〈クルス〉の傍までいった。


 〈クルス〉の両手を優しく取り、立ち上がらせて、そっと抱き寄せた。


 「〈クルス〉、恥ずかしいのを我慢して、僕に見せてくれたんだね。有難う。

 良く頑張ってくれた。嬉しいよ」


 「〈タロ〉様、私、すごく恥ずかしかったんです。

 はしたない女だと思われたら、どうしようと思っていたんです」


 「〈クルス〉は、はしたなくなんか無いよ。僕のためを考えてくれる。素敵な女性だよ」


 「〈タロ〉様、私、…… 」


 〈クルス〉が、僕の背中に手を回してきたので、それに応えて、強く〈クルス〉を抱きしめた。


 〈クルス〉は、苦しいとは言わなかった。


 暫く抱き合っていたら、〈サトミ〉の元気な声が聞こえてきた。


 「〈タロ〉様、見つけましたよ。見てください、紅水晶です」


 〈サトミ〉の見つけた紅水晶は、とても小さくて色も薄いけど、透明度は高いものだった。


 「〈サトミ〉、こんな小さいのに良く見つけたな。それに僕のより綺麗だ」


 「ふふん、そうですか。そうでもないですよ。でも、透明なんですよ」


 〈サトミ〉は、透明度が高い物を見つけて、ご機嫌のようだ。

 〈クルス〉にも見せて、半分強制的に綺麗と言わせている。


 〈サトミ〉が、無事紅水晶を見つけたし、そろそろ夕方なので、帰ることにした。

 帰り支度も、三人で仲良く行い、二人の話し声も楽しげだ。


 僕の横では、〈クルス〉が、膝をついて、後片付けをしている。


 砂利の上では、膝が痛かったのだろう、膝をつくのを止めて、しゃがんですることにしたようだ。


 〈クルス〉は、一連の動作を僕が見ていたのを、分かっていたようで、


 「今は、開きませんよ」


 と言って、少し顔を赤らめて微笑んだ。


 僕は、性懲りも無く、また膝を見ているスケベ野郎さ。

 良いんだ。色々、元気なんだよ。


 〈クルス〉の膝にゴミがついていたので、教えてあげようと思ったら、そのゴミは太陽の光を反射してキラッと輝いた。


 「〈クルス〉、右膝に張り付いているのは、ひょっとして、紅水晶じゃないか」


 〈クルス〉は、自分の膝に張り付いている、小さなものを摘まんで、


 「〈タロ〉様、小さいけど、これ、紅水晶です」

 と言って、僕に見せてくる。


 〈サトミ〉のより、小さいけど、透明度はより高い。


 綺麗に結晶して、頭もある。


 こんな小さな石は、探して見つけられるものじゃない。

 石の方から、〈クルス〉の元に来てくれたようだ。


 「綺麗に結晶している紅水晶だ。

 最後の最後に拾えるなんて、〈クルス〉は運が良いね」


 〈サトミ〉も、見に来て、

 「ちっちゃいけど、綺麗な結晶だよ。良かったね」

 と言って、少し羨ましそうだ。


 「私のは、本当に小さいので、〈サトミ〉ちゃんの方が良い物ですよ」


 と言いながら、〈クルス〉はハンカチで、慎重に紅水晶を包んで、スカートのポケットに大事そうにしまい込んでいる。


 ピクニックの帰りも、バスケットの持ち手を先に僕が握って、それに二人が手を被せる変則手繋ぎだ。


 〈サトミ〉はもちろん、〈クルス〉もしっかり僕の手を握ってきた。


 僕が握り返せないのが、大変辛い。


 でも、二つの柔らかい少女の手が、手の甲にずっと感じられるのは、すごく幸せだ。


 二人とも、紅水晶を拾えたから、大層機嫌が良い。

 嬉しくて堪らないようだ。


 「〈クルス〉ちゃんは、心が綺麗だから、結晶した紅水晶を拾えたのかな」


 「〈サトミ〉ちゃんこそ、心が純粋だから、透明な紅水晶を拾えたのよ」


 と二人で褒め合っている。


 「いやらしい目だと、曇るのかな」「下心があると、濁ってます」


 と言いながら、キャーキャー笑って楽しそうだ。


 僕のことをデスっている気もするが、まさかそんなことは無いだろう。

 僕も一緒に笑っておこう。


 二人は、僕が笑ったのを見て、「プッ」って噴出して、さらに笑い出した。

 止まらないようだ。


 笑わすのは良いが、笑われるのは辛い。


 二人が楽しいのなら、僕は構わないさ。

 泣きたいけど。


 もう秋の終わりの風が吹いているが、僕の左右からは、春のようなじんわりと温かい空気が漂ってくる。


 もう直ぐ、学校へ入学するため、王都での生活が始まるが、この一時を決して忘れはしないだろう。




                            第一章  完





※ 第二章「王都の学舎」編に、続く


 

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