第54話 私、困ります
苦しくなって、目を覚ました。
口に何か押し当てられて、息が満足に出来ない。
目の前も真っ暗で、何も見えない。何が起こっている。考える余裕も無い。
必死に両手で、何かを退けようともがく。
押し当てられているのは、何か布のような柔らかな物だ。
その柔らかな物を両手で、押し上げようとするが、あまりにも柔らかいので、際限なく手が埋まってしまう。
それでも、少し開いた隙間から、やっと息が出来た。
「〈タロ〉様、〈タロ〉様」
と僕を呼ぶ声がする。
息が普通に出来るようになって、少し落ち着いたこともあり、段々、状況が分かってきた。
僕を呼んでいるのは、〈アコ〉だ。
今僕は、〈アコ〉に膝枕をされたまま、〈アコ〉の胸を両手でもち上げている状態だ。
どうしてこうなったのか、まだ、混乱しているが、自動的に〈アコ〉の胸を揉んでしまう。
服の上からでも、とんでもなく、柔らかいのが分かる。
まるで、ねっとりとしたクリームのようだ。
指も掌も全部が、埋もれてしまう。
ただ、少し力を加えると、乳房の奥の方に、弾力がある部分があるのも指に伝わる。
頭の隅にもう止めた方が、良いんじゃないかと、忠告する声がするが、麗しのメロンおっぱいの魔力には、到底抗えない。
メロンおっぱいにかんぱいだ。
「〈タロ〉様、〈タロ〉様。聞こえていますか。
困ります。私、困ります。まだ、ダメです。こんなこと、しないでください。
もう直ぐ、お母様が帰ってきちゃいます」
〈アコ〉は、顔も首も真っ赤にして、必死の様子で訴えてきた。
「〈アコ〉、ゴメン。寝ぼけてたんだ。
息が出来ない夢だったから、手で押しちゃったんだよ。悪かった。謝るよ」
「そうだったのですか。私はてっきり・・・・・・。
私が悪かったのかもしれません。
私も寝てしまって、〈タロ〉様に、覆いかぶさってしまった様なのです。
私の胸が〈タロ〉様のお口を、塞いでしまったのかもしれません。ごめんなさい」
「いいや、僕が悪いんだよ、長いこと膝枕をしてくれて有難う。足は痺れてない」
〈アコ〉は、立ち上がろうとしたが、やはり痺れているようで、ふらついて倒れそうになった。
僕は、慌てて〈アコ〉が倒れないように支えた。
後ろにいたので、背中の方から〈アコ〉を抱きしめるような形になる。
今度は、僕の両親指が、〈アコ〉の乳房に埋まってしまう。
〈アコ〉のは大きいから、後ろから抱くと、こうなってしまうんだ。
僕の顔には、〈アコ〉の緩くウェーブした髪が纏わりついてきた。
さっきより、〈アコ〉の放つ匂いが、濃くなっているような気がする。
「〈タロ〉様、有難うございます。もう立てますので、離してください。
本当に、お母様が帰ってきちゃうんです」
僕が〈アコ〉を離す時に、〈アコ〉は両手を、僕の両手に添えてきた。
離してとは、逆の動きだった。
戦勝祝賀会に出席する準備と、〈アコ〉の母親に会うのが、何だか照れくさいので、もう宿へ帰ることにした。
さよならする時に、〈アコ〉は、「また早いうちに逢いに来てください」って、僕の袖を掴みながら、二回言ったよ。
戦勝祝賀会は盛大に行われた。
僕は、兵長と〈ハパ〉先生と〈ハヅ〉をお供に連れて、王宮の大ホールに向かった。
王宮の大ホールは、テニスコートほどもある大きさで、高い天井に、金色のシャンデリアが一面に吊るされている。
床には、緻密な柄の絨毯が敷かれ、壁は、華麗なタペストリーで見えないほどだ。
戦勝祝賀会には、戦争に動員された領地貴族と宮廷貴族の殆どが、出席している。
百人程度の出席者で、給仕や楽団をいれると二百人を超える人数が、大ホールに集まっている盛況さだ。
僕もそうだが、貴族は皆、式典用の軍服に着替えており、厳ついながら華麗な雰囲気もある。
数十はある大きなテーブルには、もう立食パーティー用の飲み物と料理が、所狭しと並べられている。
二百人の呼気だけでも相当なのに、勝ち戦のためか、人々の熱気が凄まじい。
まるで、真夏のフェスのようだ。
楽団の奏でる音が変わって、国王が登場する。
王様は、貴族たちに笑顔で会釈しつつ、中央の舞台に進んで、祝賀会が始まった。
《ベン》島奪還王国軍司令官の〈バクィラナ〉公爵が、正式な勝利宣言を行うと、ホール内は、怒号のような歓声に満たされた。
一瞬、耳がおかしくなったほどの音量だ。
この喧騒が収まるのを待って、国王が挨拶を始めた。
始終上機嫌で、滑舌良く喋っている。
話の内容は殆ど耳に残らなかったが、僕の軍功にも触れた部分もあった。
その時は、出席者全員が、一斉に僕の方を見て、ヒソヒソと話をするので、すこぶる居心地が悪い。
次に、今度の戦争の功績の発表が始まった。
戦勲の軽い方から、勲章の授与と金品等の恩賞が読み上げられる。
発表される度に、暖かい拍手と歓声がホールに木霊する。
最後の方で、敵本隊の司令官を討ち取った、国王直属軍の兵士頭の軍功発表があり、この人は何と、平民から騎士爵に取り立てられていた。
一代とはいえ、貴族に成り上がったということだ。
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