第16話 〈クルス〉に蜜柑を渡そう
次は〈クルス〉のところに行こう。
〈クルス〉の家を訪ねたら、〈クルス〉の家族が出迎えてくれた。
〈クルス〉の母親と妹だ。
〈クルス〉とはあまり似ていなくて、二人とも女性らしいふっくらとした身体つきをしている。
女性らしいと言っても、妹は二歳下なので、まだあどけない感じだ。でも、しっかりと挨拶もしてくれた。
肝心の〈クルス〉は体調を崩して、自室で休んでいるようだ。
「〈クルス〉、〈タロ〉様が来てくださったわ。部屋にお通しするわよ」
「どうぞ、〈タロ〉様、寝込んでいて申し訳ないですが、ゆっくりしていって下さい」
〈クルス〉の返事もないままに通されてしまった。
〈クルス〉は寝巻にガウンを羽織って、ベットに座っている。
心なしか前より顔色が悪く見える。
「〈クルス〉、具合はどうだ」
「・・・・・・」
「〈クルス〉、どうした苦しいのか」
「〈タロ〉様、どうして家にまでいらしたのですか」
「蜜柑が手に入ったので、〈クルス〉に食べさせようと持ってきたんだよ」
「そんな高価なものを私にですか。それもわざわざ〈タロ〉様自らが」
「〈クルス〉が喜ぶと思ったんだ。〈クルス〉に会いたかったのもあるけどね」
「蜜柑を頂けるのは嬉しいです。まだ一回しか食べたことがありませんが、大変美味しかったと記憶しています。ただ、私に会いたかったのはどうしてですか。何かお話があるのですか」
「特に話は無いんだ。〈クルス〉の綺麗な顔を見たかっただけだよ」
「・・・・。こんな病人の顔をですか。髪もボサボサですし、寝巻のままです」
「ゴメン、寝ているところへ急に入って悪かった。謝るよ。でも、〈クルス〉は透き通るような肌で、目鼻立ちが整っていて、とても美人だよ。ずーっと、見ていたいぐらいだ」
「・・・・・。私より〈ハル〉の方が素直で美人です」
「〈ハル〉って誰」
「妹です。下で挨拶していましたが」
「ゴメン、名前は覚えてないや。妹さんって、まだ子供じゃないか。美人って言うには、まだ早いんじゃないか。可愛いっていう感じかな。当たり前だが〈クルス〉の方が断然美人だよ」
「当たり前。断然ですか」
「そりゃそうだよ。それより蜜柑を食べないか」
「納得出来ませんが、折角ですから蜜柑は頂きます」
「立って食べるのも何だし、〈クルス〉の横に座っても良いか」
「ダ、ダメです。暫く湯あみも出来てないので、近寄らないで下さい。臭いですから」
「クンクン、臭くないよ。〈クルス〉の良い匂いがするだけだよ」
「キャ、嗅いじゃダメです。そこの椅子に大人しく座ってて下さい」
〈クルス〉と僕は、それでも二人で蜜柑を食べた。今日は沢山蜜柑を食べてるけど、〈クルス〉と一緒に食べる蜜柑は格別だ。
「〈クルス〉、味はどうだ」
「味は・・・・。味は良く分かりません。何だか胸が詰まってしまって・・・」
「それは大変だ。無理をさせちゃったかな。悪いな。もう帰るから、〈クルス〉は横になって休んでくれ」
〈クルス〉の具合は良くなさそうだな。
持病があるから、色白で痩せているんだな。
〈クルス〉の母親によると、病気は慢性的なもので、当面命には別条ないそうだ。
ただ、完治させるのは困難で、特効がある霊薬でも使わないと無理らしい。
一生病気と付き合っていく必要があるとのことだった。
病気を何とかしてやりたい。病気は辛いからな。
病気が治ったら、身体つきもふっくらして、胸も大きく、お尻もプリンとなるんだろうな。
絶対何とかすべき事案だな。
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