第20話
「みっともないとこ見られちまったよ」
奈々子の叔母は役所の外の喫煙所にてタバコを蒸す。あんなにふらふらになっていたもののタバコを吸うとまたさっきの調子に戻る。
私は喫煙者で無いから理解ができない。
「私には息子働いて結婚して子供もいて独立してるけど二人とも遠くに住んでる。『妻には母さんを会わせたくない』って滅多に寄り付かないし、こっちに帰ってくる時は嫁さんはいないんだよ……私はなんもしてないのにさ……」
なんとなく納得はするが奈々子の叔母に同情してしまう。
チラッと見た週刊誌には奈々子の義理の兄弟夫婦もいたが実家に寄り付かず、全てを長男の嫁である奈々子にめんどくさいことを押し付けていたと。
こんなプライベートなことまで書かれてしまい彼らもかわいそうなものだがとこれまた同情するのは奈々子の友人だからなのか、奈々子が死んだからなのか。
週刊誌もいろんなところからいろんなネタを拾ってきては晒す、もし自分が事故や事件に巻き込まれたときになにか晒されてはいけない秘密はなかろうか心配になってしまう。
「にしてもあんた、いいところに目をつけたね」
「はい?」
「……奈々子が子供たちを連れずに出て行ったことだよ」
「……」
「とても子供のことを大事に大切に育てた。好きだった仕事も結婚と同時に辞めさせられて家に入らされ……って入らされって昭和じゃないんだから……私も反対したさ。結婚で仕事辞めるなんて今更何時代?って。でもしょうがないの、と言う奈々子を止めればよかったよ。家に入ったら子供は孫はまだかとずっと言われ続けて夫婦二人で仲良く過ごす時間はあっという間に妊娠期間、出産、育児で失う。その間にも義親たちのモラハラ、それを守るはずの夫からのモラハラ……そんな中での育児……大変だったろうに」
自分も奈々子の娘たちに会ったがとても可愛らしくて元気な二人だった。だがそれを連れてくる奈々子は憂鬱な顔をしていた。
「でも本当に大事に育ててたよ。あうたび大変そうだったけどね……頑張ってたよ、奈々子は。そんなに愛してたのに手放すほどの男だったのか、あの男は……」
奈々子とあの男の関係はなんなのか……これは私は知る必要があるのだろうか。
「美夜子! 何やってるの!」
母が私を探しにやってきたのだ。しまった、母を忘れてた。母の姿を見て振り返ると奈々子の叔母はもういなくなっていた。
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