第21話

 母を家に送っていく。帰り道、会話がない。さっきまでの奈々子の叔母と比べるとおとなしい方なのか。


「にしてもさっきの女の人、大丈夫なのかね」

「……まぁなんとかなると思うよ」

「そうかしら、あんな人が姑だったらわたしゃ絶対嫌よ」

 多分母とあの人は同世代である。


「人前であんなに叫ぶのはダメだと思う」

 まぁごもっともですが。


「にしても大崎さんところも大丈夫かしら」

 さっきの人も大崎家の1人とはわからなかったようだ。そうよね、話も聞いてなかったし。


「子供たち、可哀想よね。まだ小さいだろうに」

「……うん」

 家に着いた。


「今日は大変だったわね。友達かと思うけどあまり大崎さんのことは関わらない方がいいわよ」

 母はそう言いながら靴を脱いで玄関に上がる。私は去ろうとしたときだった。



「一番可哀想なのは、大崎さんなのよ。それを身近な誰かがわかっていたらこんなことにならなかったのよ」

「えっ」

 私は母を見た。


「……じゃあ、もういいわ。今日はありがとうね。あなたも疲れたろうし、ゆっくり休みな。今のうちに」

「うん、ありがとう」

「朔太郎さんがいないうちが一番楽にできるわよ」

 ……。


 私は玄関を閉めた。



 朔太郎、私の夫。今北海道へ単身赴任している。私は人妻だ。子供はいない。


 そしてスマホに着信が。

『美夜子、今会えるか』

「ええ、車もあるわ」

『じゃあ場所はメールで送る』

 電話を切り、メールがすぐ届いた。


 相手は翔太。


 そう、私は翔太と不倫をしている。

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