第19話
「中には両方の親がいなくて誰にも頼れなくて大変な方もいるんです! その人たちは私たちが入るまでいっさい大丈夫です、とかいってるんですがもうボロボロ限界でしたのよ」
と墨田さんも、口調が次第に強くなっている。いや、あなたたちが早く気づいて声をかけるべきじゃない? そこは。
「でもたしかにね、そういうこともあるし奈々子は両親義両親共に近くに住んでいて彼女の夫も高所得だったわ。どこからどうみても私でさえもうらやましかったわ。でも……奈々子の親はもう嫁に出したとあったの親に気をつかって介入しなかったし。それをいいことに義両親たちが奈々子を奴隷のように扱い、自分たちの思うようにいかないと説教、いじめ、いびり! 夫は親側について……生活費もギリギリしか入れない……」
市役所の二人が放った言葉の二倍以上の言葉を返す奈々子の叔母。
たしかに……うちの母親は奈々子とは逆の立場で両親義両親ともに遠くに住んでいて貧乏だったが誰からも口出しされないし父も自由主義でお金のないくせにお金かかることばかりしてて母はのびのびとしてて私もそれを引き継いだかもしれない。
いくら恵まれた環境だから、そうじゃないからそれで助ける助けないを判断していいのだろうか。
「さっさと母子寮に逃げていれば! 奈々子は死ななかった」
そう奈々子の叔母が叫ぶが私はふと思った。
「あの……」
私はようやくこの部屋で言葉を発することができた。
「相談に来た頃は奈々子は子供ときたのですか? 二人の子供と」
「ああ、お子さん二人……最初はご自宅に伺って、そのときもお子さんは見えました。そのあとも市役所までお子さん二人連れて……お父様も一緒に」
「……そうですか」
何で市役所には子供二人連れてきたのに、あの時は一人で……逃げ先に行こうとしたの?
「とりあえずもうこれ以上はプライバシーに関わることです、私たちはできることまではしました! あとは弁護士さんを雇って裁判をしていただくしかないんです!」
栗林さんは、顔を歪めて話をした。
ねぇ、その裁判の費用はどうやって払うの……働かせてもらってない奈々子が……。
奈々子の叔母はペタンと力が抜けて床に崩れた。
後日の話になるが、とあるニュースがまたワイドショーを賑わせた。
介護中だった老人が殺された容疑でとある市役所職員が逮捕されたと。
容疑者は
「誰に訴えても家族にも助けてもらえず耐えきれず義母を殺した」
と言ったらしい。
その容疑者は栗林なんたらだったかは覚えていない。
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