第11話

 わたしは時間通りにとある人通りの少ない商店街の喫茶店に着いた。


 その喫茶店にいたのは奈々子のお母さんだった。電話で連絡をくれたのだ。告別式を前にわたしのところに会いにきてくれたのだ。

 あまりそこまで会ったこともなかったのだが。どうやら告別式は親族のみで行われるそうだ。


 奈々子のお母さんは私をみるなり会釈してくれた。

「昨日はすいませんでした。あんなお見苦しいところを」

「いえ、忙しい時に……」

「主人にも少し外の空気吸ってきなさいって。外は報道陣、テレビもこのことばかり。わたしもずっと張り詰めていたし、でもそんなこといきなり言われてもどうしようもなくて。で、思いついたのはあなたとお話ししようかと思って」

「……何でわたしなんかと」

 と彼女が差し出したのは何かのノートであった。写真も貼ってあり、それは20年前の私と奈々子であった。


「あなたがいちばんの友達、心の許せる友達って書いてあったから。奈々子からもよく美夜子さん、あなたのことを聞いていたわ。だから色々と調べて電話かけてしまってごめんなさいね」

「いえ、というかわたしから電話すればよかったかもしれません」

「本当優しい子。奈々子もそう言ってた……」

 そんなに奈々子は、わたしのことを話していたのか。真由美や美樹のことは?


「真由美さんや美樹さんには本当に申し訳なくて。彼女たちの電話番号も調べて電話させてもらいましたが真由美さんは繋がらなくて美樹さんもおはなしをしてくださって……奈々子は結婚してから友達付き合いなくなってしまったから、ほとんど」

 確かに彼女が結婚して子供ができてから集まりに来なくなった。

 一度彼女に子供ができる前に真由美主催の高校の同級生の集まりを夜に開いた。しかし旦那がダメだというからとのことでこなかった。


 先に結婚して子供がいた美樹は旦那に子供見てもらっているとか言っていたが周りはそれが当たり前よね、と笑っていた。


 わたしは奈々子の旦那や義親が厳しい人だと知っていたからこれないのはしょうがないとは思っていたし、かという美樹も結婚当初は旦那が甘えん坊で彼女の家の近くで集まると言っても外出を禁じられていたらしく集まりにこなかったのに何という理解のなさなのか、と思ってしまった。


 完全に会わなかった訳ではないが連絡はくれていたし、少しの時間があれば会えるようになっていたが子供が必ずいてちゃんとは話すことはできなかった。


 それを思い出した。


 でも1番の友達がわたし? なんか信じられないと思った。

 特に何もできなかったのに。なんで? 奈々子。

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