第5話
なんで。奈々子が死んだのに子ども達が通う小学校まで行くわけ。彼女が死んだところは全く違う山道だ。
そう思うと彼女の家や実家のマスコミの数はこれ以上ではないか?
そう思うと葬式の時も……あのマスコミ達に聞かれるのだろうか。根掘り葉掘り。
「お子さんの通っている小学校にまできて何が知りたいんでしょうか」
私はつい出てしまった。すると初老の女は
「夫、子ども2人いて見知らぬ男と心中だなんてセンセーショナルよね。マスコミもいろんな角度で取り上げたいのよ」
この初老の女性は主婦なのか、そうでないかわからないが……ふと彼女の足元に大人用おむつや身の回りの衛生用品の入っているふくろが置いてあった。私と同じドラッグストアで買い物してたのであろう。
介護しているのか。自分の親からそれとも旦那の親か。祖父母かもしれない。もしかしたら成人した子供かもしれない。
「なに? ジロジロ見て。まぁここにいても時間の無駄ね。さてわたしゃ帰るかね」
「大丈夫ですか、荷物多いし持ちますよ」
「ええよ、これくらい。私はこれくらいお茶の子さいさい。あ、お姉さんは介護保険しっかりやっときんさい。それに貯金も大事。あと……長男の家には嫁がないこと!!」
と馬鹿でかい声でそう言って去った。私も母に何度も長男と結婚するなと言われた。
でも美樹は次男の男性と結婚したが、義兄の嫁が介護を拒否して美樹がしていた。
……初老の女性の多くの荷物を持つ後ろ姿を見てため息が出た。
きっと彼女にとっても他人事であろう。
後日知った話だが小学校のPTAで奈々子は会長に任命されたばかりだったらしい。
私だけでなく美樹や真由美も彼女が率先してやるわけがないと口を揃えて言ったくらい引っ込み思案であった。そしてそんな役回りは彼女に来やすいことを知ってたから絶対にくじ引きとかで任命されたのであろう。
そしてはじめての総会で緊張のあまり倒れた、とも聞いた。彼女は精神科に通っており病院からもドクターストップをかけられ退任したようだが会長に任命される前にも自分の不安定さ、病院通いのことを掛けあったそうだがダメだったようだ。
彼女が総会で倒れたことを一部のママ友が揶揄したとも聞くが、何で明らかに病気の人間を会長に任命するのか。
そして精神疾患で倒れてしまったことを馬鹿にするのか。私自身も精神科に通うほど追い詰められてことがあり、私も会長に任命されたら吐くほど嫌である。
きっと馬鹿にする人は……自分がそうなるか周りの身近な人がそうなるまでは大変さはわからないだろう。私自身もそうだったから。
これまたその後の話だが知り合いの探偵事務所の所長がいうにはここ数件ほど不倫やマルチ商法や勧誘などで依頼があり、偶然にもそれらをしたのがあの小学校に通う子供の母親であったという。
奈々子を嘲笑ったやつかその中にいればいいのに、とか思うなんて最低だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます