ふたりで。―部室と廊下と青い春―

 相変わらず夏の陽射しは容赦がない。夏だから、と言われてしまえばそれまでだが。それはチリチリと肌を射し痛くもある。時折吹く風も生暖かいし、校舎に入ってもぬるい空気が躯に張り付く。正直勘弁してほしいが自然には勝てないのが道理だ。


「あれ? なんか二人共目ぇ赤いね。大丈夫?」


 部室に入ると、開口一番、部長にそんなことを言われた。目敏めざといというのか、気配り上手というのか、部長は小さな変化をいとも簡単に見付けることが出来る人間である。


「大丈夫」


 ハルカが返事をすれば、彼女はミノリへと視線を遣った。


「そ。ならいいけどね。木下くんは大丈夫?」

「うん。平気」

「そっか。じゃあネタ集めに行こうか。黒崎さんも、ね」

「あ……わたしは、ここにいるから」


 その言葉に、部長は首を傾げる。


「どうして?」


 それは純粋な疑問。彼女はなにも知らない。紗夜が感情を爆発させ、波瀾になっていたことは誰にも話してはいなかった。


「わたしは新聞まとめてるから、三人で行ってきなよ」


 紗夜は視線だけをミノリに送る。これは彼女なりに気を遣っているのだろう。


「黒崎さん」


 近付き手を差し出せば、彼女は一瞬目を見張った。


「行こうよ。オレに気遣いはいらないからさ」

「きっ、気遣いなんかじゃないっ!」


 差し出された手を払い、紗夜は口をもごもごと動かす。


「っ……、ただ、この間酷いこと言ったし……だからっ」


 小さな声を出してはまた口を閉ざし、ようやく出た台詞と共にフイとそっぽを向いてしまう。彼女の顔は少し赤くなっていた。

 ミノリは顔をほころばせ、小さく頷く。


「判った。じゃあ、三人で行くね」


 踵を返し二人に近付けば、部長は思い出したように言い放った。


「あ、私やっぱ残るよ。たまには女の子同士でお話ししたいしねっ」


 ぽんとミノリの肩に手を置き、彼女は紗夜の元へと歩み寄る。


「ごめん。ネタ集めは二人に任せる」


 手を合わせて片目を瞑り、マイネタ帳をハルカへと渡す。


「判りました。行こうか、ミノリ」


 青い表紙のミニノートを胸ポケットへと仕舞い、ハルカはミノリの手を取った。


「待って、ハルカ。部長、ちょっとペン借りてっていい?」

「うん。お好きにどうぞ」


 ハルカの手から逃れ、ミノリは近くの棚の引き出しを開ける。そこには太さ、色、形が様々なペンが混ざって入っていた。


「ペンなんてどうするんだ?」

「思い付いたことがあってさ……」


 黒いインクの細身のペンを二本、そこから取り出す。


「思い付いたことって?」

「まだ言えない。でも子供の頃にはやったことあるよ」


 二本のペンを胸ポケットに入れて、ハルカの手を取る。ぎゅっと握りしめてから彼を見遣った。


「屋上、行こう」

「カバン、置いていかなくていいのか?」

「オレは必要なモノ入ってるから置いていかないよ。ハルカはカバン置く?」

「メンドイからいいわ」

「じゃあ、部長、行ってきます」


 ミノリは言い放ち、ハルカの手を引いてくるりと反転した。


「は~い。行ってらっしゃい」


 彼女はヒラヒラと元気よく二人に手を振る。ドアが閉まると、手を止めて横目で紗夜を見遣った。


「黒崎さん、あの二人となにかあった?」

「べ……別に、なにも……」


 紗夜は視線を逸らし、彼女を見ることなく口を開く。


「辛そうな顔してるよ。話て楽になるなら、話てほしいな」


 紗夜が視線を戻せば、部長のニコニコ顔が映った。優しい笑顔。それはなにかを弾けさせる。


「わたし――」



◇◆◇◆◇◆



 当たり前だが、屋上は陽射しに攻撃されている。日光浴ではないので日向に用はない。


「日陰行こう、日陰」


 ぐいぐいと腕を引っ張り、日陰に逃げ込む。それでも、涼しくはないけれど。


「で、なにするんだ?」

「紙飛行機、作ろうと思って」


 ショルダーバッグを肩から外し地面に置けば、小さな砂埃が舞う。


「紙飛行機? 作ってどうするんだ?」

「飛ばすに決まってるだろ。他になにがあるんだ?」


 ミノリは胡座あぐらをかき、カバンの中から袋入りのルーズリーフを取り出した。


「これに一言書いて、空に飛ばす」


 すっ、と青い空を差す。白と青のキャンパス。綺麗で儚いその姿は、きっと誰をも魅了するだろう。



「今までのことを受け入れて、『これから』にするんだ」



 小さく笑って、ハルカはミノリと視線を合わせる為に、座り込む。


「ミノリはスゴいな」

「なにが?」

「そうやって、一人で行動出来ることが。俺は誰かを巻き込むことしか出来ないからな……」


 伏し目がちに言葉を紡ぐ彼の胸倉を掴み、引き寄せる。それは冗談か、それとも本気か。


「ハルカ、それ本気で言ってるのか?」


 睨むその瞳に映るのは、揺るがない彼の姿。本気で言っているのなら、こちらも本気で返さなければ。


「オレは巻き込まれたとは思ってないし、ハルカが誰かを巻き込んでいるとも思わない。だから、オレがハルカを好きなのはオレの意思だ」


 そう言って、手を離す。よろめいた彼を見遣れば、嬉しげに笑っていた。


「――うん」


 彼は勢いよくミノリを抱きしめる。勢いに飲まれて尻餅をつくが、痛みは軽い。


「解ったならいいけどさ……。次変なこと言ったら次も怒るからな」


 親以外に彼の弱い部分は自分しか知らない。自分の弱い部分も、彼しか知らないだろう。その弱い部分を知ることで、相手をより想える。そうして、想えば想う分だけ、愛しさが溢れ出してきて躯がほわほわしてくるのだ。弱い部分も引っ括めて、その全てが愛しい。



「ちゃんと好きだよ」



 ミノリは背中に手を回し、ハルカを抱きしめる。ぎゅっと強く。


「好きで好きで堪らない。……うん。オレはハルカが想っている以上に、ハルカが好きだ」


 こうして触れるだけで、鼓動は張り裂けそうになる。ドキドキと五月蝿いくらいに高鳴る胸は、なかなか元には戻らない。


「うん……。ありがとう、ミノリ」


 腕の力を緩め、彼は躯を起き上がらせる。ミノリと視線を合わせると、彼の顔は耳まで赤かった。そっ、と触れると、ぴくんと躯を竦める。


「俺も……ミノリが好きで堪らない」

「うん」


 言葉を紡ぐのにはかなりの勇気が必要だ。しかし、言われる方もそれなりの覚悟が必要だということが判った。ミノリは羞恥に堪え、更に顔が火照る。

 数秒見詰め合っていると強い風が吹き、地面の砂塵さじんを巻き上げた。一瞬という時間でも肌に当たり痛い。しかも目に入ってしまった。


「い……ってぇ」


 ミノリは目を擦るが痛みは引かない。


「擦るなよ」


 彼の腕を掴み、目から離す。目の奥に入ってしまっては大変だ。


「だって……」


 片目に涙を浮かばせながら、ミノリは彼を見遣る。


「判ってる。けど、綺麗なモノで拭かないとますます汚れるぞ」


 ポケットから淡い空色のハンカチを取り出し、ミノリの目元を拭う。


「あ……、なんか、昔もこんなことあったような、気がする」

「あぁ……、小学生の時にな」


 ハルカは笑みを浮かばせながら言い放った。


「小学生の時って、公園行った時だよな……? 確か。オレは雨が降ったことと、泣いたことしか覚えてないや……」


 再度涙を浮かばせた片目を、ミノリは手の甲で拭う。痛みはないので、砂塵は出ていったのかもしれない。

 一緒に遊んだのは何回も在るが、その時ほど印象には残らなかった。印象には残らなくても、『こんなことがあった』と言われれば、そんなこともあったなぁ、と思い出せる程度には記憶に在るが。


「俺はなにもかも覚えてるよ。ミノリを誘ったことも、雨が降ったことも、土管の中でプリンを食べたことも――」


 騙してキスをしたことも、勿論覚えている。

 急に黙ったハルカを、ミノリは不思議そうに見上げた。


「ハルカ?」

「いや、なんでもない」


 ハルカは即座にミノリから視線を逸らす。


「……お前なんか隠してるよな?」


 図星を指され、彼の躯はぎくりと跳ねた。


「なんだよ? 吐けよ」

「言わない」


 フィッと今度は顔を背ける。


「言えよっ。気になるじゃんか」


 ハルカの腕を掴めば、その手はやんわりと外されてしまう。


「…………言ったら、ミノリは俺を嫌う」


 聞き取れるかどうかの小さな声で紡がれたその言葉に、ミノリはポカンと口を開けた。


「はぁ? なに言ってんだよ」


 空いた手でくしゃくしゃと彼の頭を撫でるが、更に萎縮してしまうだけだった。


「そんなことあり得ないから、言ってよ」

「言わない」


 顔を背けたまま、ハルカは目を合わせない。――意図的に合わせないようにしているのか。なにがそうさせるのか解らないが、目を合わせないだけで不安になる。


「こっち向けよっ!」


 彼の頬に両手を添えて、無理矢理自分の方を向かせる。


「嫌いにならないって、言ってるだろっ! それなのに――っ!?」


 添えられた両手の手首を掴み、ハルカは唇を落とした。離れても、柔らかい感触が残っている。


「……っえ? なに?」


 ミノリが目をぱちくりさせてハルカを見ると、彼の頬は淡く赤くなった。


「騙して、キスをしたんだよ」

「何時?」

「プリン……食べた時に……」


 ふっ、とまた視線を逸らす。


「プリン――……」


 言われて、ミノリは記憶を探る。小学生。雨。土管の中――。



◇◆◇◆◇◆



 部長のニコニコ顔に、紗夜の口は勝手に開いてしまう。


「わたし――ハルカが好きだった」

「そっか。なんとなくそうかな、とは思ってたんだけど、やっぱりそうだったんだ」


 部長は紗夜の前に腰を下ろし、やはり笑顔で聞いていた。


「ハルカが木下のことを大事にしてるのは見てて判った……。二人には、二人の世界があるって……知ってた。それでも、ハルカの傍にいるのが許せなくて、ムカついて……わたし……」


 二人を見る度に、どす黒い感情が湧き出ていた。名前を付けるのなら、嫉妬。それが苛立ちに変わるのに、時間は掛からなかった。それは日に日に紗夜の中に蓄積し、あの日に爆発してしまったのだ。


「酷いこと、言っちゃった?」

「…………」


 唇を噛みしめて、彼女は無言で頷く。


「うん。判るよ、その気持ち。振り向いてほしかったんだよね」


 手を伸ばして紗夜の頭を撫でれば、彼女の躯が強張った。


「っ……」

「でも、八つ当たりはよくないよ……。振り向いてくれないからって、その人の大切な人を傷付けるのは違うと思うな」

「……うん……」


 爆発した時に、思ってもいない悪態を彼にぶつけてしまった。こんなに簡単に人を傷付ける自分を、叱咤してやりたい。


「わたし……バカみたいにわめいて……」


 紗夜の目から涙が溢れる。それは後悔の証だ。悪態をついた自分への後悔。

 そんな彼女を見て、部長はイスから立ち上がる。紗夜へと近付いてぎゅっと抱きしめた。


「次は、ちゃんした恋が出来るといいね」


 温かな腕の中で、彼女は小さく頷いた。


「うん……」


 ガタン、と強い風が窓を揺らす。窓の外にある木々が、ゆらゆらと踊っていた。



◇◆◇◆◇◆



 ――あれは小学生の時。公園に行ったら雨が降ってきたので、土管に避難をし、その中でプリンを食べた。記憶が甦る。鮮やかに。


「あー……あれか。『カラメル付いてる』って、言ったやつ」

「…………」


 ハルカは無言で躯を竦める。その顔は悲しげだ。


「あれ、キスだったんだな。指にしては柔らかいなぁとは思ってたんだけど……。別にさ、ハルカだしいいよ」


 ポフン、と胸に顔を埋めれば、躯が強張るのが判った。


「気にしなくていいから。嫌いになんてならないよ」

「本当に、か……?」


 ハルカは小さな声で恐る恐る問う。疑いたくなる気持ちは解らないでもないが、その程度で嫌いにはならない。


「本当に。オレが同じことをしても、ハルカはオレを嫌いにならないだろ?」

「あぁ」

「一緒だよ。嫌いになる理由なんてない。だから落ち込むなよ」


 見上げて言い放つと、彼の顔はみるみるうちに明るくなった。そうして腕が背中に回る。


「ありがとう、ミノリ」

「うん。元気が出たなら、よかった」


 腕の中で小さく笑う。抱きしめている腕に、力を込めるのが判った。


「ハルカ?」

「もう少しだけ、な」

「うん……いいけど」


 頭を撫でたり、抱きしめたりという行為は、する時もされる時も心地よかった。


「ハルカ」

「ん?」

「ううん……。なんでもない」


 ハルカの鼓動を聞きながら、ミノリはゆっくりと目を閉じた。視覚が失われた分、感覚が鋭くなる。触れる温もりが、ゆっくりと肌に伝わる。うるさいくらいのセミの鳴き声もどこか遠くに感じた。

 くしゃっ、という音が聞こえ、目を開ける。見れば、ハルカの手が頭に置かれていた。


「俺、美江子さんに言ったんだ」

「言ったって、なにを?」

「ミノリが大切なことをさ」


 ハルカと視線を合わせたら、彼は微笑んだ。微笑み返して小さく問う。


「…………なにか、言われたか?」


 それが一番の不安だ。同性が好きだと言われたら、いい顔はしないだろう。


「いや、特には。大切にしなさいってのは言われたけどな」

「なんだよ、それ」


 言わないなら言わないでいいのかもしれないが、やっぱり気になってしまうのは性だろう。


「なんでなにも言わないんだろうな」

「俺に言われても、返答しずらいんですけど……」


 そんな言葉が返ってきて、ミノリは一人納得をする。


「それもそうか。変なこと聞いてごめん」

「いや……」


 ミノリを離し、ハルカは立ち上がる。



「なぁ、今――青い空を一緒に見てるな」



 空を見上げながら彼は言い放った。


「え? ――なんて……」


 目を丸くさせるミノリからは背中しか見えないので、どんな表情で言ったのか少しだけ気になる。

 乾いた風が吹き、二人の髪を靡かせた。


「一緒に見たいって、言ってただろ」


 ふ、と笑みを溢し、ハルカはミノリを見据える。


「っ!? 覚えて――」


 まだ覚えていたのか。随分前に紡いだ、あの時の言葉を――。


『綺麗な空をハルカと一緒に見たい』

「覚えてるさ」


 言葉と共に手を差し出された。その手に自分の手を重ねて立ち上がる。


「綺麗な空だ」

「うん」


 なにも気兼ねなく傍にいることは、とても嬉しいことだった。

 綺麗な空が瞳に映る。何時もと同じに、青い空にただ白い雲が流される。それだけでも幻想的に感じた。


「すっげぇ綺麗」


 ミノリは微笑む。ハルカは彼の頭を撫で、胸ポケットに入れてあったペンを一本取り出した。


「ハルカ?」

「紙飛行機、作ろうか」


 ハルカはルーズリーフを拾い上げ、ミノリに渡す。


「うんっ」


 輝く太陽の下で、ミノリはまた笑った。



◇◆◇◆◇◆



 B5サイズのルーズリーフに、細いペンが走る。ペンの独特の香りが辺りに充満し、鼻を刺激する。

 下が地面なので綺麗な文字ではないが、一言書くことが出来た。線はガタガタだけれど、気にしない。


「よし……っと」


 キャップを閉め、ミノリは胸ポケットにペンを戻す。


「ハルカは書けたか?」


 背中合わせのハルカに声を掛ければ、動いた気配がした。


「書けたよ。あとは折るだけ」


 紙飛行機なんて何年ぶりだろうか。二人共紙飛行機の作り方は曖昧だったが、折ってみることにした。カサカサと紙が擦れる音が響く。


「なんか、ヘロヘロ……。飛ぶかな、これ」


 完成した紙飛行機を見てポソリと呟く。何回も折り直した為に、それには折り目が沢山入っていた。


「大丈夫じゃないか」

「おわっ」


 ひょこっとハルカが横から顔を出したので、ミノリは躯を竦めてしまう。


「おっ、驚かすなよっ」

「悪い」

「ハルカは折れたの?」

「まぁ……」


 ほら、と彼はミノリに紙飛行機を手渡す。


「オレより折れてんだな……」


 唇を尖らせて言い放つ。ハルカが作った紙飛行機は、ミノリのものよりしっかりしていた。


「そうか?」

「オレのはヘロヘロしてる。飛ぶかも判らねぇし」


 言って、ミノリは手の中にある自分の紙飛行機を見遣る。どう見てもヘロヘロだ。


「飛ぶよ。もしも飛ばなくても、飛ばしたことに意味があるんだろ」

「そうだな。うん。飛ばなくてもいいか」


 飛ばなくてもいい。飛ばなくても、作ったことに――飛ばしたことに意味がある。青い空に飛ばしたらそれでいい。


「よしっ。オレがハルカのを飛ばすから、ハルカはオレのを飛ばして」


 彼は自分の紙飛行機をハルカに手渡し、一言付け足す。


「あ、まだ飛ばすなよ」

「判ってるって」


 そうしてミノリはハルカに躯を預けた。


「どうした?」

「なんとなく」

「そう」


 嬉しそうな声が頭上から降ってくる。ただそれだけなのに、暖かなモノが躯を駆け抜けた。


「じゃあ、飛ばすぞ」


 すっ、と手を出しその手を引く。瞬間、紙飛行機は手から離れ、真っ直ぐに飛んでいった。


「おー、飛んだ」


 次いでハルカも紙飛行機を飛ばした。ヘロヘロのそれはヨタヨタしながらも、青い空に吸い込まれそうに伸びていく。


「飛んだな」

「うん。――あ」


 ミノリの紙飛行機はものの数秒で地面に落ちた。返して悠々と飛んだハルカの紙飛行機は、少し高度を落とし、ゆっくりと地面に着地する。


「やっぱり落ちたか。ちょっと拾ってくる」


 ミノリは立ち上がり、紙飛行機が落ちた箇所に小走りで近付く。自分の紙飛行機を拾い、離れた箇所に落ちたハルカの紙飛行機も回収して、また小走りで戻ってきた。


「お帰り」

「ただいま」


 『お帰り』と言われたので、反射的に『ただいま』と言い放つ。その小さなやり取りに頬を染めて小さく笑う。


「紙飛行機、ミノリはなんて書いたんだ?」


 ハルカと向き合うように座り、ミノリは紙飛行機を崩した。


「ほら」


 皺を伸ばしたルーズリーフを彼の顔の前に翳す。そこには縦書きで『ありがとう』と書いてあった。


「ハルカは?」

「俺も似たようなもんかな」


 ミノリの手にある紙飛行機を取り、それを崩し彼に渡す。同じように縦書きで『ありがとうございました。今はとても幸せです』と二行に渡って書いてあった。


「幸せ?」

「幸せ――だろ」


 ミノリの手を取り、ハルカは笑う。それに頷いて言葉を紡いだ。


「確かに、幸せかな」


 一緒にいられることで得られるこの気持ちは、言葉にし難い。二人でいられることはとても嬉しいことで、確かに幸せなのだ。

 この気持ちは、想う限りは変わらない。儚く脆く、その分強い想いは、確かに届いている――。



◇◆◇◆◇◆



 徐に部室のドアを開ける。と、ばちりと視線がかち合った。


「あ、二人共遅かったね。なにかいいネタあった?」


 何時ものパターンで部長は二人に気付き、声を掛けた。相変わらず彼女は笑顔だ。

 部長の目前に座る紗夜はファイルを開いてそれを眺めている。


「特には」


 そしてこれまた何時ものパターンでハルカが言い放つ。本当はネタ探しをしていないが、言うことはないだろう。


「そっか。まぁ、今は夏休みだしね。ないのも判るけど――あっ、また段ボール置いてくるの忘れてた」

「段ボール? って、生徒会から持ってきたやつ?」


 言い放ちミノリは、立て掛けてある段ボールを見遣る。それには部費で申請したペンが入っていた。どうやら申請は通ったらしい。


「そう、それ。いやー、生徒会室に持っていこうとしてるんだけど、ころっと忘れちゃうんだよねぇ」


 あははっ、と軽快に部長は笑う。


「わたし持ってくよ」


 紗夜は立ち上がり、出入口に立て掛けてある段ボールに近付いた。


「あれ? 黒崎さん目が赤いね」


 彼女を見たミノリは思ったことを口に出した。数時間前は赤くはなかったのだ。不思議に思うのも無理はない。


「あ、これは……別に……」

「あ、そうだ。山並くんと黒崎さんで段ボール、持ってってほしいな」

「俺と黒崎で?」


 ミノリの後ろに立つハルカは訝しげな眼差しで部長を見詰める。藪から棒になにを言い出すのか、と。


「私は木下くんとお話がしたいなぁ、と思ってね」

「そういうことなら判りました。あとこれ、返します」


 仕方がないと言わんばかりのため息を吐いてから部長から預かったマイネタ帳を彼女の手の中へと返す。そうして踵を返して段ボールに手を掛けた。話がしたいのなら、お邪魔虫になり得る自分達は退散するのがいいだろう。


「ハルカ」

「ん?」


 クイクイと制服の裾を引く彼に視線を遣る。


「オレは大丈夫だからさ」


 迷いのない瞳がハルカを捉えた。彼が大丈夫だと言えば、大丈夫だ。心配しなくてもいい。


「知ってるよ」


 細い躯には似合わないその強さが好きだ。くしゃりとミノリの頭を撫でて微笑む。


「知ってるって、なんだよ?」

「それは俺しか知らないから。あ、カバン宜しく」


 カバンを預けながら言い放ち、段ボールを持ち上げた。次いで空いた手を招く。


「ちょっ、ハルカ……っ」

「じゃあ、あとでな」


 ヒラヒラと片手を振り、ハルカは言葉を遮るかのように歩き出す。その後を紗夜が急いで追った。上手くはぐらかされたのかは判らないが、気になるではないか。


「ちゃんと話せるかな……」

「部長?」


 部長の呟きが聞こえ、不思議そうに声を掛けた。彼女は一つ咳を払い、腕を組む。


「んー? いや、黒崎さんが謝りたいって言ってたからさ。計らっちゃった。ま、お話したいのは本当だから、丁度よかったよ」


 言い終わるなり手を招く部長の元へと素直に行き、紗夜が座っていたイスに座る。目前に広がるファイルは閉じ、持っていったペンを胸ポケットから出して上に置き、脇にずらした。そうして二つのカバンを床に置いて彼女を見据える。


「木下くんの、なんか強くなったね」

「言ってることがよく判んないんですけど……」


 心底判らないという顔で部長を見ると、彼女はふふっと楽しげに笑った。


「ま、普通は判らないかもね」


 イスから少し腰を浮かし、身を乗り出しつつ彼女は腕を伸ばして髪に触れる。目に掛かる前髪を退かすと、びくりとミノリの躯が強張った。


「前の木下くんの瞳は、何時も淋しげだったんだよ。楽しそうにしてても瞳だけは淋しげで、本当に楽しいのかな、って思ってた」


 話を聞いている内に躯の緊張がほぐれ、ハルカといる時のような安心感に包まれる。

 部長の言葉はすんなりと彼の中に入ってきた。ゆっくりと話したからか、彼女の声が心地のよいものだからだろうか。


「うん」

「私はずっと心配だった。なにがそうさせるのかは、結局判らなかったけどね……。今はしっかりとした光があるよ、木下くんの瞳」


 髪から手を離してイスに座り直した部長は窓の外を眺め、またミノリに向き直る。


「ね、木下くんは山並くんのことが好きだよね?」

「えっ? いや、それは……」


 一瞬目を見開き、固く口を閉ざす。何故そんなことを聞くのか。聞いてどうするというのだ。困惑しているところで、思い出したような声が届く。


「あ、別に言いふらそうとか考えてないよ。ただ私が気になるからさ」


 おどけた様子でも、言いふらそうという思惑でもなさそうなので、ミノリは徐に口を開いた。


「うん……。好きだよ」

「そっか。やっぱり、そうだったんだね」


 『やっぱり』という言い方に引っ掛かりを覚える。首を傾げれば彼女は組んだ手に顔を乗せた。


「見ててそうかな、って思ってたんだ。山並くんが木下くんのことを好きなのは明らかだけど、木下くんからもそういう雰囲気が出てたからね」


 そういう雰囲気とはどういう雰囲気なのか。好きだと公言したことはないのに、判るものなのだろうか。


「オレはそんな雰囲気が出てるとは思えないけど……」

「そうだねぇ。本人には判らないかもね」


 他人からしか判らないだろう。本人には絶対に判らない仕組みだ。



◇◆◇◆◇◆



 ――想いを、断ち切る。わたしはそう決めたんだ。

 両想いなら、入る余地がない。諦めるしかないよ……。

 後を付いてきて、沈黙を守っていた。でももう限界だった。


「あの……ハルカ」

「なに?」


 彼女は突如立ち止まり、少し離れたところで立ち止まった彼を見上げる。


「わたし……、わたしね、好きだったんだ」

「知ってる」


 彼は一度目を伏せてから段ボールを壁に立て掛けて、彼女を見詰める。瞬間、彼女は視線を逸らしてまた戻した。


「でもどうやっても、俺はその気持ちには応えられないけどな」

「知ってるよ。言いたかっただけだから、気にしないで」


 ――本当は判っていた。両想いなことなんて、初めから判っていた。入る余地がないことも、振り向かないことも、判ってたよ。ただ好きだって想いが、止まらなかった。――止められなかったの。


「ごめんね……」

「なにが?」

「木下のこと……、酷いこと言っちゃったし」

「それは済んだことだからもういい。ちゃんと謝ったなら、俺がどうこう言うのは変だろ」


 今更蒸し返されても困る話題だ。非を認めたのなら、自分はなにも言わない。


「こんなことを言うのは可笑しいのかもしれないけど、黒崎のお蔭で俺は……、俺達は解り合えたと思う」


 彼女とのことがなければ、なにも進展はなかっただろう。ただ好きだと自覚して日々を過ごしていたのかもしれないし、ミノリもなにも話さなかったかも判らない。いいきっかけになったことは確かだ。


「わたしの、お蔭……?」

「あぁ。ありがとな」


 彼は彼女に歩み寄り、頭に手を伸ばした。大きな手が触れて、優しく撫でる。

 ハルカは誰にでも優しかった。それでも木下には木下だけの――他の誰にもない優しさがあった。すごく羨ましかったな。

 彼は何時も微笑っていた。目の前のハルカは優しく微笑っているけど、やっぱり木下の時とは違うのだ。それだけ木下を好きなんだと判ってしまう。


「……ハルカは何時から好きなの?」


 温もりが離れて数秒の沈黙の後に、彼女はずっと思っていたことを聞いてみた。


「何時からかは判らないな。気付いたら好きだったから」

「そうなんだ」


 多分ハルカは、わたしがハルカを想うよりも長く、木下を想っていたんだろう。好きだけど、伝えることが出来なかったんだ。――同性だから。

 気持ち悪いとか言っちゃったけど、今なら間違いだったと判る。根本に在る『想い』は、わたしとなんら変わらないのだと。


「黒崎」


 もう一度彼は彼女の頭をゆっくりと撫でた。


「俺なんかより、いい男を選べよ」


 頭上から降り注ぐ声は、とても柔らかい。怒られたあの時とは違う優しい声。


「俺を想い続けても、黒崎が辛くなるだけだ。幸せにはなれない。いい男は沢山いるだろ?」


 この人は、どうしてこんなにも優しいのだろう。違う、か。木下も優しかった。二人には共通する優しさがある。



「好きになってくれて、ありがとう」



 その言葉に少しだけ顔を上げてハルカを見ると、彼は微笑んでいた。わたしには向けられないと思っていた、優しい笑顔。


「――……」


 もう、彼の重荷にはならない。最後に彼の笑顔が見れたのだから、思い残すことはない。

 大好きだ。大好きだった――。


「っ……好きでいさせてくれて、ありがとぉ!」



 ――バイバイ、ハルカ。



 わたしはハルカを想えて幸せだったよ。

 彼は無言でくしゃりと彼女の頭を撫でる。それは彼女が泣き止むまで続いた。



◇◆◇◆◇◆



「判らないかな?」


 雰囲気云々の話はいつの間にか消え、今は違う話題がミノリの頭を占領していた。


『山並くんのどこが好き?』


 その問いに、なにも言えていない。どこが好きかと問われても判らないのだ。


「どこだろう……」

「難しい?」

「難しいってことじゃないよ。なんか、言葉が出てこないだけで……」


 自分はハルカの『どこ』が好きなのか。顔か声か優しさか。それとも、自分にはない強さか。考えても、どこと決めつけることなど出来ない。


「山並くんのこと、嫌いじゃないよね?」

「そんなことあるわけないから」


 ミノリが強い口調で言い放つと、部長は目を見開いた。


「――そっか」


 今度は目を細めて彼女は彼の頭を撫でる。


「変なこと聞いてごめんね」

「ううん。オレも答えてないし、お互い様じゃないかな」

「私が言うのも変だけど、答えられなくてもいいんじゃないかな。限定されると、そこしか見えなくなると思うし……」


 そう言って部長はちらりとドアを見遣った。ドアは一ミリも動く気配がない。


「もう少し、話していい?」

「え……うん」


 ミノリが軽く頷くと、彼女はにっこりと笑う。


「木下くんは『十人十色』って判る?」

「えっと……十人いれば、十通りの考えがある――みたいな意味だったかな」

「大体そんな意味だね。要は幸せも人間ひと各々それぞれなんだよね。だから堂々としてていいんだよ?」


 手が伸ばされ、頬に触れた。真っ直ぐ向けられる茶色の瞳には、優しさの色が滲んでいる。


「色んな人がいて、色んな愛がある。――でも、他人がそれを正常だから幸せ、異常だから不幸かを決めるのは違うと思うんだ。幸せかどうかなんていうのは、結局当の本人にしか判らないんだからさ。だから木下くんも山並くんも、ちゃんと胸を張っていいんだよ」


 ゆっくりとそう言って、彼女は柔らかく笑う。その笑顔は眩しかった。

 部長は何時も嬉しい言葉をくれた。それは胸に響き渡り、温かいモノが広がっていくのだ。


「部長は、なにも思わないのか?」

「思わないよ。さっきも言ったよね? 幸せのカタチは人間各々なんだって」


 そっと頬から手を離し、頭に触れる。誰かに触られるのが嫌なのに、どうしてか今は嫌じゃない。


「うん……ありがとう」

「いえいえ。長い話でごめんね」

「ううん、嬉しいよ。部長の言葉は、オレに勇気をくれるんだ」

「勇気、か。そんなこと言われたの初めてだよ。ちょっとくすぐったいね……」


 頬を掻きつつ言い放つ彼女の頬は、少し赤くなっていた。


「オレ、ハルカを迎えに行ってくるね」


 ミノリはイスから立ち上がり、ドアに歩み寄る。


「あ、うん。行ってらっしゃい」


 ヒラヒラと手を振るが、ドアを開けているミノリには見えない。彼は静かにドアを閉め、そのまま廊下を走り出す。


「木下くんには山並くん、か……。いいなぁ、私も好きな人出来ないかなぁ」


 部長は頬杖を付き、呟いた。



◇◆◇◆◇◆



 廊下を走る。全速力ではなく、小走りで。走るなか、輝く太陽が横目に映る。青い空も白い雲も、同じように輝いて見えた。

 胸の中に在る感情を伝えたい。その想いで走る。


「ハルカっ」


 一メートル先に彼の姿が見え、胸の中に在る感情がもぞもぞと動きだした。

 ハルカは紗夜と楽しそうに話をしていたが、彼に気付いた様だった。走る速度を早め、胸に飛び込む。


「なんだ? どうしたんだ、ミノリ」


 受け止めたハルカは困惑気味に言葉を紡ぐ。


「いや、ちょっと、さ」

「うん?」

「好きだなぁって……思って」

「なんだよ、それ。言わなくても解ってるよ」


 彼の髪を指で梳きながら、小さく笑う。


「言いたかったんだよ。うん。伝えたかった」


 例え解っていたとしても、伝えたかった。言葉にしなければ解らないから。


「そう」


 再度髪を梳き、また笑う。


「――今、目の前が輝いてる。何時もと変わらない景色でも、輝いてるんだ」


 興奮気味に言い放つミノリの言葉は、強くハルカの胸を打った。


「輝いてる?」

「うーん、上手く説明は出来ないけど、太陽と同じってこと」

「太陽と、ね」


 窓の外を見遣ると、燦々と輝く太陽が在る。明るく照らされる――それと同じなのか?


「そうだな……。そういうことなら、俺の目の前も輝いてるかな」


 灰色の世界に、太陽みたいな笑顔で現れたミノリ。明るく照らされた世界。色づき、温もりが生まれた。変化した世界。輝きだした世界。――全ては彼と出会ってから。


「そっか。一緒だな」


 そう言って笑うミノリは、相変わらず太陽みたいな笑顔だ。日射しが当たるので、よけい輝いて見える。


「部室に戻ろうか」

「うん」


 ハルカは小さく頷くミノリの手を取った。


「ハルカ、黒崎さんもいい?」

「黒崎?」


 ずっと黙って見ていた紗夜に視線を向ける。ハルカの目を見遣り、彼女は少しだけ俯いてしまう。


「オレは自分がすごく狭い世界で生きてるって判ってる。その中でも大切な人達は大事にしたいんだ。黒崎さんは、オレにハルカの大切さを教えてくれた人だから――オレは黒崎さんと仲良くなりたい」

「な、か……よく?」


 勢いよく顔を上げ、彼女は呟いた。その声は掠れていたが、難なく二人の耳に届く。


「うん。勿論、黒崎さんの意思があってこそだけど。今からでもいいからオレは黒崎さんのことを知りたいんだ」


 届く言葉は羽が降り注ぐように、ゆっくりと紗夜の中を巡った。


「うん…………うんっ」


 こくんと頷くとポニーテールが揺れる。同意ということだろう。


「宜しく……、お願いします」


 彼女は一歩近付き、手を差し出す。


「こちらこそ」


 ミノリは空いた手でその手を握りしめた。反してハルカは触れていた手を離し、二人の頭を撫でる。


「よかったな」

「……ん」


 ミノリは小さく頷く。恥ずかしさと嬉しさが混同し、頬が上気しているようだ。握った手も熱かった。



「私も仲間に入れてくれる?」



 不意に高い声が聞こえた為に躯を竦め、二人は反射的に繋いでいた手を離す。

 ――この声は、あの人だ。


「やっぱり、部長だ」


 ミノリが言葉を紡ぎつつ声がした方を向くと、そこには思った通りの人がいた。柔らかく笑って。


「あんまり遅いから様子を見に来たんだけど――」


 数メートルの隙間を小走りで埋め、彼女は勢いに任せて三人に抱きつく。


「よかった」


 呟いた部長の声は、どこか嬉しそうで、楽しげだった。


「え、よかったって、なにが?」


 ミノリが問うと、部長はクスクスと笑う。


「こっちの話しだよ。ね、山並くん」

「え、あ、あぁ」


 話しを振られたハルカは勢いで頷いた。全く理解は出来ていないけれど。


「ほら、戻ろう」


 三人の背中を押し、自分は一歩前に出る。


「あー、今日もいい天気だねぇ。青春には持ってこいだぁ」

「青春……、かなぁ? なんか違う気がするけど……」


 紗夜は部長の背中を見遣り呟く。


「いいの、いいの。気にしなくて。空と同じ『青』が入ってんだし」

「なにそれ」

「聞いて驚け、部長語録だっ」


 ハルカが呟けば対面するように向きを変えて、ぴっと人差し指を立てる。


「あれ……?」


 三人は瞬きもせずにポカンと口を開けていた。


「すべった?」


 しまった、という青ざめた顔から、徐々に笑みが溢れた。それに釣られるように、三人の顔も綻ぶ。


「もー、部長おかしいよ」

「いや、でも部長らしいな」

「うん。これぞ部長って感じだ」


 笑いを堪えながら各々言い放つ。


「なっ!? 皆笑いすぎだからねっ」


 恥ずかしいのか彼女は少し頬を赤く染める。


「でも、いっか。皆が笑うのは初めて見たし」


 そう言い放ち、部長はふふっと笑う。

 燦々と輝く太陽が、四人を優しく照らしていた。




 

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