第5話 はいはい
遂にこの日が来た。
転生してから6ヶ月、自分なりに色々試してみたが遂に、はいはいに成功した。
はいはいに成功して、自分の意思で移動することができている。今まで自分の意思では動けないので諦めの境地に達していたが、やはりストレスは半端なく襲いかかってきていたので、遂に自分の意思で動けるようになった事は大きな変化だ。
今日は、なんて素晴らしい日なんだろう。
「あう、あう、あう、あう。」
未だ喋ることはできないが思わず歓声を上げてしまった。
まだそこまでは動けないが、いずれ自在にはいはいできる日が来るだろう。来たる日が待ち遠しくて仕方がない。
それからの俺はとにかく特訓あるのみと考え、眠る時間以外はとにかくはいはいをしていた。まだ部屋から出ることはできないので、部屋の中をとにかくはいはいしてみた。
はいはいもやってみて気がついたのだが、やればやるほど上手くなっていく。具体的にはスピードが上がったのと、最初は少し進むのにも全身全霊を傾けていたのが、今は全く疲れを感じない。
「ファルエルちゃんは、本当にはいはいが大好きなのね。どんどん上手くはいはいが出来るようになってきたわね。ママは本当に嬉しいわ。」
ママが喜んでくれるのが嬉しくなり、余計に頑張ってはいはいしてしまう。
はいはいをし始めて1ヶ月が経過した頃、自分でも筋力がアップしてきた気がするので、もしかしてできるかもしれないと思い立ち、ベッドの端を支えにして立ち上がろうと試みてみる。
「うう。」
はいはいを繰り返し行っていたおかげで腕の筋力は増しているようで、問題ない感じだったが腹筋と背筋の力が弱いのか、力が入らず上手く立つことができない。
どうやら、はいはいをするのとは別の筋力が必要のようだ。
生後半年の今、腹筋運動などできるはずもないので寝返りを積極的にしてみたり、寝転んだ状態からの起き上がりを積極的にこなしていった。
おかげで1ヶ月後についに立つことができた。所謂つかまり立ちと言うやつだが、新しい人生を歩み始めてから1番の達成感を味わうことができた。
「あう。あう。あう。」
歓喜の声を上げていると、ママに発見されてしまった。
「ああっ。ファルエルちゃんがっ。立っているわ。大変、あなた、すぐきてください。大変です。」
しばらくすると、パパがやってきた。
「おおっ。ファルエル、もう立てたのか?こんなに小さいのに、なんてことだ。俺の子供は、天才だ。天界一の傑物になるに違いない。おおっ愛しのファルエル」
いつもの暑苦しいトークを展開すると、ほっぺたを激しく、すりすりされてしまった。
最近は愛情表現だと理解して割り切っているのだが、やっぱりちょっと痛いので微妙だ。
パパとママは大喜びして大騒ぎとなったが、気にしても仕方がないので今度は立ち上がる練習と歩く練習に力を入れることにした。
はいはいの時よりもかなり難易度が高く、全然うまくできない。
はいはいの時は反復訓練が出来ていたが、まず立ち上がる事が物凄く辛い。何かを持っていないとすぐに倒れてしまうし、立っている姿勢を保つだけで全身の力を使い続けているため、長時間訓練が出来ない。
歩く為に足を一歩踏み出そうとしてみるが、足が出ない。
以前は歩くという行為に特別な意識をした事は無かったが、歩くとはこんなに難しく、絶妙なバランスを持って成り立っているとは思っても見なかった。
それでも、必死に訓練を続け1ヶ月経過した頃にはつかまりながらではあるが、歩いて移動することに成功していた。
捕まり歩きをしている俺を見てパパとママが再び、大騒ぎをしていたが、これもあまり気にせず次のステップ、普通に歩くことにトライしている。
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