第3話 あきらめ
意識が覚醒してからのこの数日間、俺は恥辱と後悔と妙な心地よさを味わいながら過ごしている。
残念ながら数日では何の変化もなく、やはり声が聞こえるだけで、殆ど何もできない。
未だに排泄物は垂れ流している。その度に下着を剥がれてお尻を拭き拭きされて、新しい下着を着せてもらっている。
数日経っても全く慣れることはなく、漏らすことへの羞恥心と人に自分のお尻をふきふきされるというあり得ない状況への怨嗟が途切れることはない。
ただ何故か下着を変えてもらったあとは、心地よさが襲ってきては眠りにつくのだった。
そして全く動いていないのに何故かお腹は減るのだ。その度に
「オギャー、オギャー」
と自分の声とは思えない鳴き声が出てしまう。
「あらあら、ファルエルちゃん、お腹が空いたんでちゅね。おっぱいいっぱい飲んでくだちゃいね。」
「ング、ング、ング」
「本当にいっぱい飲みまちゅね。早く大きくなるんでちゅよ。」
一体この喋り方はなんなのだろうか?悪魔だった時には聞いたことの無い喋り方だ。でちゅってなんなんだ。いくらなんでも恥ずかしすぎる。間違っても第3者に聞かれてはならない。
そう考えていた所に
「おおファルエル。なんて可愛いんだ。麗しのファルエル。僕の太陽ファルエル。ああなんて素晴らしいんだ」
何やら、騒がしい声がする。どうやら男の声の様だが内容がいちいち引っかかる。なんだ麗しのファルエルって。そもそも誰にも聞かれたくない 「でちゅ」を聞かれた可能性が高い。終わった。何もかもが終わった。そもそも誰だこの声の主は。
「ファルエル。愛しのパパでちゅよ。ほらパパって呼んでくれ。」
「パパ、生まれたばかりで呼べるわけないでしょ。」
「ああそうなのか。早くパパと呼んでほしいでちゅね」
ああ、この声の変態が俺の父だというのか。何という悲劇だろうか。
なんか顔を擦り付けられているのがわかる。ジョリジョリして痛いし気持ち悪い。動けないのをいいことにこいつも好き勝手してくれている。どうにかして避けたいが、全く身動きが取れないのでどうしようもない。
それからまた一週間ぐらいたったが、俺の身には何の変化も見られない。正直、寝て、飲んで、漏らしての生活なので正確な時間さえわからない。
時間の感覚が失われた無限地獄とお漏らしというこの世の終わり終わりのような地獄に苛まれ、俺の心がついに折れてしまった。
これ以上無限に羞恥し続ける事は、もう限界だった。悪魔としての尊厳を守ろうとしたが、俺は無力だった。これ以上は心が抵抗することを拒否している。このまま羞恥心を持ち続けることはできそうにない。このままでは、俺は壊れてしまう。もうどうとでもしてくれ。好きなようにしてくれ。もう泣くしかできない。
「オギャー、オギャー、オギャー」
「あらあらファルエルちゃん、どうしたのかしら?またおしっこですね。きれいきれいしてあげますね。」
きれい、きれいしてもらってから下着を変えてもらってすこぶる気持ちがいい。もうくだらない事を気にするのはやめた。ああ気持ちがいい。ただそれだけだ。
気持ちが良くなったら眠くなってきたのでもう寝るしかない。
夢の中にあのクソ勇者が出てきた。俺に戦いを挑んできているが、俺は全く動けない。動けない所をいいようにいたぶられてしまった。耐えきれずに泣き出してしまい
「オギャー、オギャー」
と泣いていると、おもむろにクソ勇者に下着を剥がされお尻をふきふきされて、着替えさせられた。
夢でまで、俺はお漏らしをしてお尻をふきふきされてしまった。しかもあのクソ勇者にだ。
夢の中でも俺には羞恥することさえ許されない。
まともな精神状態ではクソ勇者にふきふきされる事は耐えることが出来ない。
もうどうとでもしてくれ。夢の中の俺も諦める事で新しい自分になれた気がする。
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