第2話 天国

今度は強烈な空腹に苛まれ目が覚めてしまった。


「オギャー、オギャー、オギャー」


「あらあらファルエルちゃん、どうしたんでちゅか?お腹が空いたんでちゅね。おっぱいあげまちゅね。」


目には見えないが、どうやらおっぱいが目の前にあるようだ。


「パクッ、ムグ、ムグ、ムグ」


俺は一体何をしているんだ?目の前に、あるであろうおっぱいに吸い付いている。吸い付いた上に何かを飲んでいる。無性に欲しくなり無我夢中で飲んでいるが、至高の味のこれはまさか母乳?

俺は変態になってしまったのか?こんな趣味は一切ない。それがなんでこんなことになっているんだ?

飲み始めて、しばらくすると満腹になってきた。


「ファルエルちゃん、お腹一杯になりまちたか?またいつでも飲ませてあげますからね」


いつでも飲ませてくれる?呪いにしてもおかしい。流石に俺も違和感を感じてきた。

さっきからファルエルって俺に呼びかけてるよな。さっきは幻聴かと思ったけどどうやら間違い無いようだ。

おまけにおっぱいにお漏らし、どう考えてもおかしい。

看病が必要なほどの大ダメージを受けたとしても明らかに勝手が違う。

考えられる事は一つしかない気がする。

魔界にも輪廻転生の概念はあるが、実際にした者を見たことはない。しかしこれは、輪廻転生の概念に出てくる転生ではないのか?

転生すると前世の記憶は消去されると聞いていたが、俺には子爵級悪魔ファルメウスとしての記憶が完全に残っている。

残っているというよりも、俺はファルメウスなのだ。

しかし、現状とファルエルと言う名前から判断すると、考えたくはないが、もしや天界に転生したのではないだろうか。

子爵級悪魔だった俺が天使に転生?冗談じゃない。もしそんな事があり得るなら、俺は天界を乗っ取ってやる。


あ、やばいお腹が痛い。トイレに行きたい。行きたいが全く身動きが取れない。我慢ができない。うっ・・・


もう殺してくれ。お漏らしした時も耐え難い屈辱を味わったが、これはそれを上回る恥辱。もう俺は生きていく価値を失った。


「あらあら、ファルエルちゃん。ミルクを飲んだらウンチが出たのね、偉いわ〜。ママがキレイキレイしてあげますからね。」


そう聞こえると、下着を剥ぎ取られ、あろうことかお尻を拭き拭きされた。

もう死にたい。

以前はお尻を拭き拭きされる事があるなんて、考えたこともなかった。

だが実際にそれをされると、耐え難い。

俺が身動きできないと思って、なんて事してくれるんだ、この女は悪魔か、悪魔なのか?

絶対に呪ってやる。

そう考えているとまた猛烈な睡魔に襲われて意識を手放した。

夢の中で洪水にのみこまれる夢を見て、まるで悪夢のようだった。

どれだけ時間が経ったのかわからないが意識を取り戻すと、なんか下着が冷たい。

これはまさか・・・

お漏らしなのか。あの夢の中の洪水は俺の洪水だったのか。何ということだ、こんなに何度もお漏らしするなんてもう言い訳のしようがない。

もう子爵や貴族や上級悪夢だの名乗る事は許されないだろう。

泣けてきた。


「オギャー、オギャー、オギャー」


「あらあらファルエルちゃんどうしたのかしら?おしっこかしら〜?」


目の前にいるであろう女性に、嬉しそうにまた俺は下着を剥ぎ取られてしまった。

もうお婿に行けそうにない。

そのまま、なすすべもなく、下着を交換されてしまった。気持ちはブルーそのものだが、なにやら妙に気持ちが良く快適な感じになってしまった。

しかし、何も見えないし、何もできない。自分の意思では全く体を動かすことができない。

まず間違いなく転生した事は理解できたが、おそらく俺は赤ん坊として生まれたばかりなのだろう。しかし以前、赤ん坊だった時の記憶は全く無いので、どうしていいかわからない。

生まれたばかりの赤ん坊は目が殆ど見えないのか?お漏らしするものなのか?うんちまで漏らさなければならないのか?全く動けないのは俺が病気なのか?

わからない。

子爵悪魔の時は結婚もした事がなければ、もちろん子供もいなかったので勝手が全くわからない。



あとがき

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