第50話谷脇の悩み

「あ~美味しかった、それで、どうしたの?」


「先生、前に先生は私に、私に出来る事を

しろって、おっしゃいましたよね?」


「うん、言ったよ」


「私は、レディースって言っても、本当に

格好だけで、歴史が好きで勉強もしてたんで

今が有るんですけど、私の地元には、今だに

そのレディースの子達が居て、その子達は

学校にも行かないし、心配で、せめて学校は

行っておいた方が、先に後悔するからって

何度も言ってるんですが、全然、聞いて貰え無くて、どうしたらいいのかと……」


「人を動かすのって、谷脇?1番難しいん

だよ!こちらは一生懸命でも、向こうから

したら、鬱陶しかったりと、分かった!私が

行きます」


「えっ!先生が?」


「はい、谷脇が困ってるのに、放っては

おけませんから、私が行きます、案内して!」


「あ、はい!」


そして行ってみると、10人が、たむろしていた。

髪の毛は金髪、ピアス、特効服いかにも

だった。


「おばさん、今度は誰を連れて来たんだよ!

何回、言っても一緒だよ!」


「ちょ、ちょ、あの人peaceの奥さんだよ!

あのヒューチャーの、お母さんだよ!」


「いいよね~人気者の奥さんは、えら~い

先生になれて!」


「本当、何もしなくてもpeaceの名前だけで

通っちゃうよな~」


口々に、言いたい事を言う。


「黙れ!」


「はぁ?聞こえませんけど?」


「黙れ!このガキ共が!」


と、未来は大きな声を出した。


「何だよ!本当の事じゃ無いかよ!」


「あなた達に、私の何が分かるの?言って

みなさいよ!確かに私の夫はpeaceの

桜庭恭介よ、息子達はヒューチャーよ

だから?それが何?何も努力しなくて

今が有るんじゃ無いのよ!そうやって

何の努力も、しないで、人の事を集まって

ウジウジ言ってても、何も始まらないし

自分の為には、ならないわ!」


「じゃ、じゃあ、どうしろって言うんだよ!」


「学校に行きなさい!」


「学校?学校なんか行っても、誰も相手に

なんか、してくれないよ!」


「それで、いいじゃ無い!私も学生時代は

誰とも接触は無かったわ!それは私が

歴史オタクっていう理由だけで、みんな

自分と違うと、拒絶するのよ!だから別に

相手にされなくても、いいじゃ無いの!

その間に勉強して、見返してやれば!

それ位の根性は、有るんでしょう?」


「おばさんも、そんな学生時代だったの

かよ」


「ちょっと一言、言っていい?」


「うん」


「おばさんじゃ無くて、お姉さん、分かった?」


みんな笑ってしまった。


「お姉さん、面白いね!うん!やってみるよ!」


「じゃあ、まず髪の色を黒に戻しなさい!

一応、社会には、ルールが有るから最低限は

守りましょう、それと学校に行く時はピアス

は、駄目だからね、分かった?」


「はい!」


「何か有ったら、何時でもこの谷脇に言って!」


「みんな言ってね!」


「はい!」


「じゃあ、今日は帰るから又、見に来るからね、頑張るのよ!」


帰って行く、未来と谷脇。


「あの人、カッコいいよな!」


「歴史オタクから、あ~なるんだ!」


「うちらも頑張ったら、何か出来るんじゃ

ねえ?」


「そうだよな?やろうぜ!」


「うん!やろう!」


未来には人を惹き付け、動かす力が有った。

それは、未来は意識していないが、真剣に

どんな人にも、どんな事にも取り組むからだろう。

未来は、何時も全力投球なのだった。

そんな所に、人は惹き付けられるのだろう。

もう谷脇は、前を歩く未来の姿が、眩しくて

しょうがなかった。


(今日の、お礼に先生に、プリンを買おう!)


谷脇は思いながら、後ろを歩いていた。

事務所に戻った、未来と谷脇。

谷脇が


「先生、ちょっとだけ出て来ます」


「はい。」


谷脇は出掛けると、直ぐに戻って来た。


「はい先生」


そう言って、大量のプリンを渡した。


「谷脇さん、これは?」


「今日のお礼です!先生の好きなプリンです!」


「こんなに食べれ無いよ~じゃあ、みんなで

食べよう。」


珍しく未来が、みんなにプリンを配った。


「では、みんなで谷脇さん、いただきます。」


「谷脇さん、いただきます。」


「もう、先生~恥ずかしいですよ~」


未来もスタッフも、笑っている。

谷脇も連れて、笑い出した。

和やかな、未来の事務所だった。

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