第42話選挙が始まる

そうこうしている間に、明日は未来の

衆議院選挙の告示の日であった。

明日から10日間は、選挙運動が出来る。

その夜、恭介が


「未来、明日からだけど、何時もの未来

らしく堂々と、戦えよ!」


「それは、信長様の様にですね?」


「あ、あ~」


恭介はリビングの、戦国武将、織田信長を見て、ギョッとした。

何時の間にか、文字が未来のイメージカラーのオレンジに変わっていた。


(何時の間に?)


「未来、あれは?」


「あ~私のイメージカラーに、したの!

いいでしょう?」


(もう、いいか悪いか分からないよ!)


「そ、そうだな」


そして、告示の日を迎える。

集まってくれた、みなさんに挨拶をする

未来。


「皆さんとの、約束を守る為に、私は

この10日間、死物狂いで戦います!」


恭介も挨拶をした。

peaceのメンバーも、駆けつけた。

そして、選挙カーで事務所を出る未来。

朝の9時から、夜の8時迄、選挙カーで

走る事が出来る。

そして、街頭演説も出来るのだった。

未来は、ウグイス嬢がマイクで喋って

いても、窓を開けて、みんなに声を掛ける。

街頭演説は最初は、興味本位で聞いていた人

も、未来の演説は、しっかりしていたので

最後は熱心に、聞く様になる。

未来には、そんな不思議な魅力が有った。

未来の集中力は、凄かった。

少しも、気を緩めなかった。

唯一、事務所に帰って、恭介、来夢、斗夢の

顔を見た時だけだった。

でも直ぐに、事務所に来てくれて居る人達に

自ら、お茶を出して話をしていた。

この姿には、みんなも感心させられた。

来夢と斗夢も、自分の目に焼き付けていた。


「来夢、斗夢、ママは凄いな!」


「うん!パパも凄いけど、ママも凄いよ!」


目を細める、恭介にメンバー達が


「未来ちゃん、凄いな!あそこ迄とは

思わなかったよ!」


「あ~未来にとっては、この選挙は戦だからな!多分、信長様が乗り移ってるんじゃ無い

のかな?」


「あ~そうかもな!」


「勇ましいよ!本当に!」


そうして、未来の戦も最終日になった。

街頭演説をする未来に、その日は嫌がらせの

ヤジが飛んできた。


「peaceの、力で戦ってんだろう?」


「peaceが、居なきゃ無理だろう?」


「いいよな~有名人が旦那で!」


それを、選挙期間中とはいえ、許す未来では

無かった。


「聞いてくださってる皆様、少しの間

すみません、そこの人、今言った人、前に

どうぞ」


なかなか、前には来ない。


「目の前で、もう一度、言いなさい」


でも、来ない。


「目の前で、言えないくせに、大勢に混じって、言うなんて卑怯その物よ!そんなので

この国が、良くなるの?私にはpeaceが

居るわよ、だから?それが、どうしたの?

あなたも、同じ様に、選挙に出なさいよ!

peaceが居ようが、誰が居ようが、戦うのは

私よ!私の演説に、興味が無いなら、帰り

なさい!皆様の邪魔だわ!」


トボトボと、帰って行く2人。


「皆様、大変失礼、致しました」


みんなから、拍手が起こる。


「ありがとうございます」


そう言って、又、演説をする。

これが、最後の演説だった。

そして、選挙カーで走って、時間に事務所に

戻る未来。

未来は直ぐに、集まってくれた支持者に

1人1人、挨拶をして廻る。

そして、10日間、手伝ってくれた、みんなにも、挨拶に廻る。

後は選挙結果を、待つだけだった。

peaceも仕事を、切り上げて、事務所に

来てくれた。

少し遅れて、仕事が終わった、来夢と斗夢と

谷脇が、やって来る。

結果が、あちらこちらと、出て行く。

恭介が


「未来、大丈夫!未来なら、大丈夫だから!」


と、肩を抱き寄せる。

来夢と斗夢も


「ママは、大丈夫だよ!」


と、片方ずつ、手を握ってくれる。

後ろにはpeaceのメンバーが、未来の事を

守る様に立っている。


「未来ちゃん、バンザイの準備しとけよ!」


「絶対に通るよ!」


「もう直ぐだよ!」


そして、未来の選挙区の、結果が出た。

桜庭未来、トップで当確。


「やったぜ!」


「やっぱりな!」


未来は、支持者と運動員に、一礼した。


「さぁ、未来、お礼の挨拶に行って来い!

涙を拭いて、笑顔で!」


「ママ、スマイル、スマイル」


「うん」


peaceのメンバーも


「未来ちゃん、何時もの未来ちゃんで!」


「何時もの?」


わざと、未来のスイッチを入れた。

壇上に上がり、満面の笑顔で挨拶をする

未来、その姿は、太陽の様に眩しかった。

この日から、主婦桜庭未来は、国会議員

桜庭未来に、なったのだ。

次の日は、マスコミに囲まれる未来。

国会議員になっても、未来節は健在だった。

マスコミは、これからの未来に、期待を

していた。

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