第23話保育園からの連絡

そして又、何時もの穏やかな日が、戻って来た。


「恭介さん、今日もファンの人達の為に

頑張ってね」


「お~行ってくるよ」


「行ってらっしゃい」


スタジオに行くと、メンバーが


「おい恭介、あ~やって、たまには未来ちゃんと、みんなでご飯食べようぜ!」


「あのな~楽しんでるだろう?」


「分かった?」


「顔見たら分かるよ!みんな、ニヤニヤして!」


「だって芸人より、面白いぞ未来ちゃんは!」


「あいつは主婦なの!」


「もったいないな~あの才能!」


「何を言ってんだよ!さぁ、仕事、仕事!」


(まったく~うちのメンバーは!)


そしてその日、保育園から呼び出しの電話が

有って、慌てて未来は保育園に行った。


「どうしたんですか?」


先生に聞いていると


「貴方が桜庭さん?私はPTA会長の木田と

申します」


「あっ、初めまして、桜庭です」


すると先生が


「どうも、昨日なんですが来夢君と木田さんの息子さんの宏樹君が、おもちゃの取り合いになってしまって、どちらも譲らなくて私が

入って止めたんですけど、宏樹君が、その事を、木田さんに言って、木田さんが桜庭さんに会いたいと、おっしゃるので来ていただきました」


「貴方、テレビにも出てますよね?好き勝手言って、ワガママ言ってるから、子供が真似をするんじゃ無いのかしら?」


「そんな事は有りません、おもちゃの取り合いなんて、小さい時はよく有るんじゃ無いん

ですか?」


「貴方、私はPTA会長よ!誰に向かって言ってるの?」


「PTA会長の木田さんですけど!」


「貴方の、そういう所が子供に似たのね!」


「私から見たら、木田さんの所も一緒だと思いますよ」


先生は、おろおろするばかりだった。


「まぁ、とにかく、ちゃんとしつけを

してくださいね!」


そう言って、PTA会長の木田は帰って行った。

怒りの収まらない未来は、先生に聞いてみた。


「先生、来夢が悪かったんですか?」


「いいえ、本当にこの年齢の子に、良く有る

おもちゃの取り合いです」


「そうですか、又、何か有りましたら何時でも電話ください、じゃあ、お願いします」


と、言って未来も帰った。


(PTAの会長って、そんなに偉いのかしら?

同じ保護者じゃ無いのよ!)


そう思いながら、晩御飯を作っていた。

そして夕方、来夢と斗夢を保育園から

連れて帰って来た。

未来は来夢に、聞いてみた。


「来夢、昨日ね宏樹君と、おもちゃの取り合いしたの?」


「うん、宏樹君ね何時も、他の子が持ってる

おもちゃを取りに行くんだよ!だから僕は

渡さなかったんだ!」


「そうなんだ、じゃあ、そんな時他の子は

どうしてるの?」


「取られて泣いてるから、僕のおもちゃを

渡すんだよ!」


「偉いね~来夢、男の子だよ!これからも

そうやって助けてあげるんだよ!」


「うん!」


(悪いのは、木田さんの子じゃん!PTAの

会長の子だから、先生も何も言え無いんだ

泣かされてる子の親は、みんなどうしてるんだろう?)


そして、子供達の発表会が有った。

歌や、お遊戯を披露してくれるのだった。


(楽しみだな~あっ、1番最初は斗夢の

クラスだ、斗夢に何が出来るんだろう?)


斗夢のクラスの、赤ちゃん達が入って来る。

音楽が流れる。

先生の合図で、タンバリンの小さいやつを

1回振る。

そして、合図が出ると、もう1回。

それだけで、充分可愛く、微笑ましかった。

来夢のクラスは、最後だった。

お遊戯をするみたいだった。


(あっ、入って来た!みんな衣装も揃えてる

可愛いい~)


始まった。

すると踊ってる最中に、宏樹君ともう1人の子がぶつかった。

もう1人の子が、転んで泣いてしまった。

先生が慌てて来て、その子を外に連れて

行ってしまった。

お遊戯は、終わってしまった。


(見に来てる、親御さんは辛いだろうな?

何も見れなくて、泣いてしまって!これは

さすがに木田さんも、謝るだろうな?)


そう思いながら、外に出ると木田に謝っている保護者を、見かけた。


(何だ?これは?)


クラスに行くと、謝っていたのは泣いた子の

お母さんだった。


(どうして謝るんだろう?反対じゃん!)


保護者にも、派閥が有るみたいで会長グループ、他のグループ、さっき謝ってたお母さんのグループ。

そして、子供を連れて帰る時、さっき謝ってた、お母さんのグループの人が声を掛けて来た。


「あの~私は、橋本と言います、突然すみません」


「あっ、いえ」


「今日、見てましたよね?お遊戯」


「見てましたよ」


「どう思われましたか?」


「ちゃんと、お遊戯が見れない親御さんが

可哀想だなって思いましたよ」


「ですよね~」


「でも終わったら、そのお母さんが木田さんに謝ってるから、何でかなって思いましたよ」


「桜庭さん、保育園初めてだから、知らないと思うんですけど、木田さんに逆らうと嫌がらせを、されるんですよ!だから、みんな

黙って従ってるんですよ」


「それは、おかしいですよ!」


「えっ!」


「だってPTAの会長だろうと、みんなと同じ

保護者ですよ、逆らったら嫌がらせって、

イジメじゃ無いですか!親がそういう事を

するから、子供が真似をするんですよ!

みんなも、しっかりしないと!」


「そうですよね、分かってるんですけど

勇気が無くて」


そう話をしていると、木田がやって来た。


「桜庭さん、お子さんのしつけ、ちゃんと

してくれました?」


「あの~木田さん、息子に聞くと宏樹君は

何時も他の子の、おもちゃを取り上げている

みたいですよ!みんな泣いてるって、貴方の方がしつけをしないと、駄目なんじゃ無いん

ですか?」


「何を言ってるの!私はPTA会長よ!」


「だから、何?」


「何って!」


「同じ保護者でしょう!貴方だけ違うの?」


「桜庭さん、覚えてらっしゃい!」


木田は帰って行った。


「桜庭さん、凄い!」


「言いなりになっちゃ、いけないの!分かった?嫌がらせされたら、ちゃんと自分の口で

言うべきよ!他のお母さん達にも、言って

あげてね!じゃあ」


と、未来は何事も無かった様に、帰って行った。

今日の木田との、出来事は保護者の間に

瞬く間に広がった。

帰って来た恭介に、未来は今日の事を話した。


「未来が正しいよ!でも、そんな人だから

何をして来るか心配だなぁ?」


「恭介さん、大丈夫よ!私は信長様の生まれ変わりよ!やっつけてやるから!」


(未来、とうとう生まれ変わりに、なったのかよ~どうか子供達に遺伝しません様に!)


切に願う恭介だった。

それからは、何事も無く過ぎて行った。

相変わらず恭介は、プロデューサーに捕まっては、未来のテレビ出演を頼まれていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る