第28話 ヴァンの才能。
中央室から戻ったコーラルに「オルドス様から連絡あったよ」と伝えるヴァン。
コーラルは驚くこともなく「おじ様から?何かしら?」とヴァンに聞く。
「お願いが出来たってさ、コーラルは忙しいから俺に明日ラージポットに来てくれって言ってたよ」
「まあ予定はないし、良いのかしらね」
国営図書館から帰る空気を察したヴァンはザップの本を手に取って「ザップ様、俺この本借りたいです」と言うとザップは嬉しそうに元教師の顔で「お、いいよ」と言う。
「君は古代語と古代神聖語は読めるのかい?」
「ううん、学が無いから読めないよ。だってこの本の字だって母さんに読んでもらったのを覚えて必死に読んで言葉とか覚えたんだ」
ザップはヴァンの言葉に「え?じゃあ…」と言うと、紙を取り出して急いで何かを書くとヴァンにそれを見せる。
「これが「私の」、これが「名前」、それで名前はこの「あいうえお」を基本に並べるんだ。読めるかい?」
「…私の…名前は…コーラル・スティエット?」
ヴァンは古代語で書かれた文字を悩みながらたどたどしく読む。
「おお!凄い!じゃあ自分の名前を書けるかい?」
「ええ…難しいよ…どうかな?」
ヴァンが書いた紙には「私の名前はヴァン・ガイマアーデ」と書かれている。
「惜しいね、ガイマーデの時は「ア」は書かなくて良いんだ、この記号を足すだけだよ」
「あー、そうなんだ。そっか、コーラルも「オ」が無いや」
ここで熱の入ったザップが指導をするとヴァンは次々に理解をするし疑問を聞く。
「ザップ様、「俺は」だとどうするの?」
「古代語だと難しいんだよ。でもね…「男の私」を短縮して…これで「俺」にしてしまうんだ。これはオルドス様や天空島の子達から教わるまでわからなかったんだよ」
そしてヴァンは「今日はありがとうザップ様」と古代語で書き記すとザップは「ウヒョーッ!凄いよヴァン!君はコレからもコーラルさんと一緒にいるんだよね?」と聞く。
「うん。そのつもりだよ」
「じゃあ皆に教えておくから仮にコーラルさんが禁術を生み出したらそれを書くのは君の仕事だよ。ヴァンが後世に古代語と古代神聖語を残すんだ。今度古代神聖語も教えるよ!」
ヴァンはザップの熱意に照れながら「俺?出来るかな?」と聞くとザップは身を乗り出してヴァンの肩に手を置いて「出来るさ!やるんだよ!君は逸材だよ!」と言った。
「ザップ様はうまいなぁ、皆にそう言ってるでしょ?」
「いやいや、本気だよ!」
ザップの人となりを本で読んでいたヴァンはザップが変な謀略をするタイプではないのを知っていたので事実だと思い始める。
「あ、じゃあ…無限術人間の本って読ませてくれますか?」
「え?あんなものどうするの?文章的に硬いから「赤き海」の方がナー・マステと海底都市に行った後だから面白いよ?」
「ううん、ナー・マステで会ったジーフーってお爺さんの無限術人間の研究も凄いから禁術書に書き足してあげたいんだ。だから俺が紙に古代語で書いてみるからザップ様が禁術書に書き足してよ!」
この言葉に目を輝かせたザップは「いいよ!やろう!君は今日どこに泊まるんだい?」と聞く。
「コーラルと同じ宿だと思うけど」
「よし、コーラルさんは別荘だからこの本と、古代語と古代神聖語の単語帳を持って行って読んで、こっちには訳を書いて、こっちには新たな情報を書き足すんだ!」
渡された本の重さを見てヴァンは「えぇ!?そんなにやれるかな?」と聞くがザップは「君なら出来るよ!何で君みたいな原石が埋もれていたんだ!勿体ない!今すぐ師事したいよ!」と言い切る。
「…ザップ様?その取り出した本って覚書ですよね?」
「そうだよ!コーラルさんはこの本とヴァン君を守るんだよ!」
「えぇ…?それに別荘って…、あの部屋にヴァンと2人きりですか?」
「それの方がセキュリティもバッチリだからね!」
「…私、未婚の女子ですよ?」
「コーラルさん、古代語と古代神聖語の為だよ?」
父母から聞いてザップの人となりを知っているコーラルは全てを諦めて「…はい」と言う。
ザップの「夜ご飯は僕からヘマタイト君に何か頼んでおくから別荘に直行だよ!Go!Go!!」という圧に負けたヴァンはコーラルと色気も何もない夜を過ごす事になる。
夜ご飯は串焼肉、フィッシュ&チップス、ステーキサンドにグラタンと言う、要するに片手で食え、休むなと言うメニューで届けにきたヘマタイトが「ザップ様が城まで来てヴァン君の能力を褒め称えていました…どうしてそうなったのですか?」と聞くと、伝説のミチトの別荘に見向きもしないで必死に本にかじりついて訳を書くヴァンを尻目にコーラルが「普通の読み書きを独学でやり切ったヴァンの才能を聞いてザップ様が…」と説明をすると無限術人間の覚書がここにある事に頭を抱えるヘマタイト。
「まあ…防犯は大叔母様に任せます。一応僕も検知術は使いますからよろしくお願いします」
ヘマタイトはやれやれと言いながら帰っていく。
ヴァンは一晩かけて訳を終えて、自分なりにジーフーの説明を古代語で書き記して最後にイノー・ブート、ジーフー・ブートと連名で書き記した。
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