第24話 ヴァンとジーフー。
ジーフーの話の通りならグラス・スティエットがここを制圧した日にいた事になる。
コーラルは我慢できずに会話に割り込む。
「あなた…何者?まさかイノー・ブートの…」
「おや、お嬢さんはお師匠様を知ってるのかい?でも君はうるさくて話し相手には向いてないなぁ」
ジーフーの言葉に怒りかけるコーラルをアクィが止めている間にヴァンがまた質問をする。
「じゃあおじさんは6歳の時からここに居るんだ。ご飯とか自分で作れるの?」
「ああ、私はそもそも身寄りがなくてね、お師匠様が拾ってくれてね、魔術の資質を感じると言ってくれてハイガイ様に会わせてくれたら養子に迎えてブートの名を下さる事になって居たんだ」
ヴァンの質問の答えになって居ないと思ったが次には「だから私はお師匠様の食事の世話なんかをしていたから簡単な料理なら作れるんだ」と言った。
「お金は食材と魚を交換するの?」
「お金はお師匠様がこの部屋に置いておいてくれたから最初はそれを使ったよ。お師匠様が亡くなってすぐに兵士と貴族が家荒らしに来てね、その後にすぐに海賊崩れが一度住み着いて、そいつらから舟を貰って外の人と交流を持ったんだよ」
「へえ、舟をくれるなんて優しい海賊だったんだね」
「ふふ、そうだねぇ。それで海賊の紹介だし、私はお金を持って居たし、後は優秀で読み書きや計算が出来ていたから騙されなかったんだよ」
「まだそのお金で暮らしてるの?仕事は?」
「いやいや、いくら師匠が貯めて遺してくれたお金でもそう長くはもたないよ。私は師匠から教わっていた物で仕事をする事にしたんだ」
次々と出てくる情報をコーラルや兵士達は必死に聞いていく。
聞き漏らさないように集中していた。
「凄いね、6歳なのに色々出来たんだ」
「そうだよ。そうそう、その話で行けば君なら弟子に迎えても良いかな?話し相手が欲しかったし私が死んだ時にお墓を作って欲しいからね」
「えぇ?ここを離れて本土に帰れば?」
「んー…、実は何回も考えたけど怖くてね」
確かに70年もここに住めば外の世界も怖くなるだろう。
コーラル達がそう思っているとヴァンが再度「それで仕事って何してるの?」と聞くと、ジーフーは耽々と「無限術人間」と言った。
「え?」
「無限術人間を生み出して売るんだよ。私は師匠から作り方も教わっていたし、師匠と一緒に術人間を組み合わせて強いツギハギを作っていたんだ。だから海賊崩れ達は私を見て襲いかかってきたけど術とツギハギで倒してね、4人居たけど1人殺して、1人を術人間にして、ナー・マステの金持ちに売り込んだんだ。
だから決まったタイミングで食料を貰ったり、無限記録盤と魔水晶を貰うんだ。
このリプレスサウンドは無限記録盤を産むダンジョンでね、それをこっそり貰って魔水晶と一緒に素体を渡されるんだ。金持ちは最初は愛玩用、次は護衛用、後は家族の護衛用とか…ああ、孫の友達なんて頼まれたのもあったよ。
私はここでお師匠様が成し遂げられなかった事をやるんだ」
この告白にコーラルが「そんな…」と言って驚いている中、ヴァンは再度「あれ?じゃあおじさんのマスターはおじさん?」と聞いた。
「おお、賢いね。そうだよ。これはお師匠様がやりたかったことの一つで試したんだ。術人間の施術が甘いと記憶を無くしたり暴走したりするんだよ。だからね、自分で自分のマスターになれば良いんじゃないかとなってね。
だから私は理論が出来たから自分の身体で試したんだ。だから私はマスターでスレイブだよ」
この説明にコーラルは「そんな…私聞いたことないわ」と言う。
「ふむ、お嬢さんは詳しそうだがまだまだみたいだね。それにね、これなら支配権の強奪も起きない。恐らく自分の身体に自分で施術をする。最高の絆だから他人の付け入る隙はないんだ」
「…イノー・ブート、なんて事を…」
「まあ、いいや。そっちの2人は素体にして金持ちに買ってもらおう。珍しいマ・イード人だから喜ぶかな?お嬢さんの方は…まあ最初は術人間にしたら眠らせておいて金持ちと交渉、それでヴァン…君は私の弟子にするよ」
ジーフーの目と気配が変わる。
いち早く察知したコーラルが前に出ながら「ヴァン!部屋の外に!」と言う。
「コーラルは?」
「私は貴い者としてこの人を止めるわ!」
コーラルがそう言った時、兵士達は「いえ、あのような老人は我々で止めます!」「コーラル嬢はヴァン殿をお守りください!」と言って更に前に出た。
「あー…そうなるかー。まあいいや、話して素直に術人間になる子なんて一度も居なかったからね。ほらおいで、仕事だよ」
兵士がジーフーを取り押さえようとした時、奥から3つの影が飛び出してくると兵士の1人を殴り殺した。
呆れるように「おいおいおい、やり過ぎだよ?フービ」とジーフーが言うと兵士を殴り殺した影は「すいません、マスター」と謝る。
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