コーラル・スティエットの章・後編。
第21話 コーラルが聞けたグラスの10年。
「以上がグラス・スティエットが「愛の証」を持ってからの10年です」
コーラルとヴァンは海底都市に来ていてヨシとアクィからグラスの話を聞いていた。
ヨシはヴァンに「はじめまして、ヨシ・ディヴァントです。オルドス氏から聞いています。コーラル嬢がお世話になってます」と挨拶をすると「食事をしながら話をしましょう」と誘った。
席に着き、料理が出てくるまでの間にヨシは「コーラル嬢、良ければサルバン嬢と会わせて貰えますか?」と言った。
「はい」と返事をしたコーラルが手に持つ「愛の証」から現れたアクィに目を細めて喜ぶヨシ。
アクィも照れながら「ご無沙汰しております。以前は挨拶もできませんでしたものね」と言った。
そしてお互いの話を合わせながらグラスの10年を聞く。
「それで、サルバン嬢が気にする事とはなんですか?」
「ミチトです。ミチトはツギハギ事件に関わった者を心眼術で見破ってグラス・スティエットに道を示した。でもリプレスサウンドにツギハギは居なかった。仮に関わった者を見たから出てきたのだとすればサルバンからレイザーまでの逃亡を手助けした貴族も出てくるのに出てこなかった」
「…それは、ツギハギがリプレスサウンドに居ると?」
「ええ、だとしたらコーラルに弔って貰いたくて来ました」
初めてアクィがリプレスサウンドに行けと言った意味を知ったコーラルは「アクィさん」と言った後で頷いていた。
「わかりました。とりあえず今日は海が荒れていてリプレスサウンドに行く事は不可能です。部屋を用意しますから宿泊をするといいでしょう。ヴァン君も折角の海底都市を散策したいでしょうしね」
「すみません」
「ありがとうございます!」
部屋を借りたコーラルとヴァンは海底都市を散策すると露店で珊瑚の髪飾りを見つけて「コーラル、ほら珊瑚!」と指をさす。
「本当、イブお婆様の髪色に似てるわね」
「何言ってんだよ、こっちもコーラルに似てるよ」
ヴァンの指差した髪飾りは確かにコーラルの髪色に近かった。
「似てるかしら?」
「似てるよ、当ててみる?」
ヴァンは髪飾りを手に取ってコーラルの頭にあてがうと「ほら似てる」と言って笑う。
「でも…同じ髪色の髪飾りって変なのかな?」
ヴァンの言葉に露店主が「いえいえ、思い出に買われる方もいますよ。まあお似合いなのは映える色ですね。青めの色なんてお似合いですよ」と言って青い髪飾りを指差す。それは貝殻で出来ていた。
ヴァンは手に取ってコーラルの頭にあてがうと「うん、似合うよ」と褒める。
「そうかしら?」
コーラルが謙遜する中、ヴァンはさっさと髪飾りを2個買ってコーラルにプレゼントしてしまう。
「え?ヴァン?お金…」
「ああ、返してないし、俺の給料が家に行くなら問題無いって」
ヴァンは笑いながら珊瑚の髪飾りをコーラルにつけて「色が同化するけど似合ってるよ」と褒めた。
コーラルはここで初めて歳の近い異性からのプレゼントだと気付いて赤くなっていた。
翌日、コーラルは1人でリプレスサウンドへ行こうとしたがアクィとヨシからダメ出しをされてヴァンを同行させる事になる。
ヴァンの視点はコーラルとも違うから役立つはずだと言われてコーラルは不満気にヴァンを連れて行く。
コーラルからしたらヴァンはお荷物でしかない。
不満げなコーラルだがアクィから「あら、ミチトなら器用貧乏って言ってやり切るわよ?」と言われると「やります。やり切ります」と半ばヤケに言った。
リプレスサウンドに着いて、アクィの指示でかつての出入り口に向かう時、早速ヴァンが役に立つ。「なあ、人の手借りようよ。ヘマタイトに声かけてよ」と提案をしてきた。
「ヘマタイト?何するの?」
「いいからさ、やってよコーラル」
やれやれと言った顔で「…念話術…ヘマタイト?」と呼びかけるとすぐにヘマタイトは「大叔母様?」と返事をした。
「お疲れ様、今アクィお婆様の指示でグラスが制圧したリプレスサウンドに何かあるかもって話になったのよ。それでヴァンがヘマタイトに相談しようって…、ヘマタイトは遠距離の集音術は使える?」
「問題ありません。ヴァン君にどうぞ話させてください」
コーラルが「ヴァン、ヘマタイトが話せるって、私が仲介するから話していいわよ」と言うとヴァンが「ヘマタイト、お疲れ」と話し始める。
「万一ツギハギが居て戦闘になった時、コーラルは問題無いけど証拠品の確保とか作ったやつが逃げるとかなら人が必要だと思うんだけどさ、なんとかならないかな?」
「…成る程、それは一理ありますね。大叔母様、そこはレイジ家が変わらず管理をしています。私兵が諸島ではなく本土側の詰所に居ますので2人程借りて探索してください。一応僕も遠視術で大叔母様達の動きは見させて貰います」
コーラルは了解したと伝えると一度本土に行き兵士を借り受ける。
兵士はヘマタイトの命令が届いていて大人しく兵士を貸してくれた。
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