第18話 パイライトの父母。
プレナイトに会って20日が過ぎた昼下がり。
「なあ、なんでこんなに早いんだ?」
「…アゲートがパイライトに会いたくて張り切ったのよ」
プレナイトは呆れていた。また来るとは言ったがこうも早く来るとは思って居なかった。
呆れながら出迎えるとパイライトは家から飛び出して「お姉ちゃん!」と言い、アゲートも「パイライト!」と言って前に出る。
アゲートとパイライトは強く抱きしめ合って「良い子でしたか?」「うん!良い子にしたよ!」と話すとアゲートは「じゃあお土産です」と言って収納術からパイライトの顔サイズのクッキーを取り出す。
「わぁ!これ!」
「はい。私が作りました。全部パイライトが食べて良いクッキーですよ」
「マスター!貰ったよ!」
「…ちゃんと夜ご飯食べろよな」
パイライトは「はーい!」と言って食べると美味しさに飛び上がる。
アゲートは嬉しそうにパイライトを抱きしめて「美味しいですか?嬉しい!」と言う。
プレナイトは更に呆れながらにやり取りを見た後で「なあ、兄貴の方は?」と聞く。
「兄様は修行よ。真式になりたいって…」
「アイツ、俺やお前より強いだろうに」
そう言ってもオブシダンの心の闇は晴れる事なく力を求めていた。
話す事もそうないのでグラスとプレナイトが手持ち無沙汰になり、帰る流れになったがアゲートもパイライトも拒否をする。
困ったグラスにプレナイトが「一度帰ってろ。終わったら念話術で呼んでやる。念話術は持ってるな?」と言う。
「ええ」
「じゃあ後は任せろ」
こうしてグラスはプレナイトに任せてサルバンに帰ると、目の前には大怪我をしたオブシダンが居た。
「兄様!?」
「お帰り、僕はまだまだだね。術無しでリブートストーリーを制圧しようとしたらこのザマさ、まあ素材の半分は王都で残りはサルバンだからサルバンは潤うよ」
オブシダンがそんな事を言っている間、アゲートは特大クッキーをプレナイトに渡して「作りました!食べてください!」とやっている。
受け取ったプレナイトは小さなピザくらいの大きさのクッキーに「嘘だろ?こんなにデカいのかよ」と言って唖然としながら「パイライト、手伝え」と言った。
「いいの!」
「ああ、アゲートも付き合え、3人で食べるぞ」
3人で見晴らしのいい場所で食べるクッキーはとても美味しくて、何よりパイライトはプレナイトとアゲートといられてニコニコとしてしまう。
そしてパイライトは真剣な表情で「マスター、パパになって、お姉ちゃんはママになって」と言った。
一瞬、何を言われたかわからなかったプレナイトは意味がわかると「お前!?何言ってんだよ」と言って、アゲートは驚いた表情で「私が…ママ?」と言った。
「だって村の子達は皆パパとママが居るから、マスターは私を助けてくれた人で怖くて何も覚えてないから助けてくれた人って約束通り言ってるけどパパとママが欲しいの!」
パイライトは必死に説明をする。
その必死さにプレナイトは「はぁ…、お前なぁ、俺は今年で23、お前は歳がわからんが多分8歳くらい、それでアゲートは…」と聞くと「20です」とアゲートが答える。
プレナイトはほらなという顔で「若過ぎだろ?」と言うとパイライトは「大丈夫だよ!」と反論をする。
プレナイトは察しろよと言う空気を出すがパイライトには通じないし、アゲートはなぜか真剣に「ママ…、何をすれば良いのでしょう?」と考えている。
「アゲートには好きな人とか居たら迷惑だ…」
プレナイトが「ろ」まで言う前に「お姉ちゃん!好きな人居るの!?」とパイライトが聞く。
アゲートは少し考えるように「好きな…、マスターとオブシダン様と…」と言って指を折る。
「うん、後は!」
「私はパイライトが好きです。パイライトにクッキーを食べてもらいたくて覚えました。早く会いたくて力を求めました」
アゲートは真っすぐにパイライトを見つめて気持ちを伝える。
パイライトは顔を真っ赤にして「え!私!本当!?」と聞き返すとアゲートは優しく「はい。本当です」と言った。
この言葉にパイライトは水を得た魚のように「マスター!聞いた!?お姉ちゃんは私が好きだって!」と言う。
「マジかよ…。でもアゲートはグラスのスレイブだろ?グラスがダメって言ったらダメだし、お前だってマスターの俺がダメ出ししたら諦めるしかないだろ?」
プレナイトは正論でなんとかパイライトを諦めさせようとするのだがパイライトは一歩も引かずに「うぅぅぅ…、マスターの意地悪、私を助けた時みたいに支配権の強奪してよ!」と言うと、アゲートも「それです!プレナイト!」と名案じゃないかという顔で迫る。
「マジで?お前…真模式だからって自由すぎないか?それにグラスの支配権って…俺なんかには…」
「やってください!」
「やってよマスター!パパになってよ!」
プレナイトは知らないがミチトがするような渋い表情で「ええぇぇぇ…」と言った後で「オルドスの奴…これが狙いか?」と呟いていた。
プレナイトに呼び出されたグラスはアゲートとパイライトの申し出に目を丸くしながらも真面目に考えて全員でオルドスの元に行く。
館に入った瞬間、待っていたオルドスから「プレナイト、頑張ってね〜」と言われる。
「は?」
「支配権の強奪しかないよね〜」
そういうオルドスの顔は嬉しそうであり、イタズラをする子供のようでもあった。
「おい、なんで乗り気なんだよ、しかもイブだってシューザからミチトに支配権を移譲出来ただろ?」
「アゲートさんはイブさんと違って真模式でツギハギだし、グラスが本気を出して施術したからね〜」
「お前!楽しんでないか!」
「あ、術切れ狙っても無理だからね〜。暴走しちゃうよ〜、真っ向勝負でグラスの術を剥ぎ取って塗り替えてあげるんだよ〜、あ、後ね!強奪中に術気を切らすとつぎはぎした部分が崩れるからね〜」
次々と自分の中で密かに考えていた筋道をオルドスに封じられたプレナイトは「おい!嘘だろ!?」と言う。
だがオルドスはプレナイトを無視して「大丈夫だよ、パイライトちゃん、マスターが頑張るから良い子で居るんだよ〜」とパイライトに声をかける。
パイライトは笑顔で「うん!ありがとう真式様!」と言った。
「あれ?私の事知ってるの?」
「うん!前にマスターがここで寝る前になったおじちゃんが内緒だよって言って心でお話ししてくれて真式様の事を教えてくれたよ!困った時はなんでも言って良いって教えて貰ったの!お空に向かってお願い事をするとね、真式様が助けてくれるって!」
これは想定外だったようでオルドスは目を丸くした後で嬉しそうに笑って「あ〜、やられたなぁ。流石は器用貧乏だね。あの場で全員とそれぞれ話してたんだね」と言う。
「それでパイライトちゃんはお空にお祈りしてたの?」
「うん!パパとママがほしいってお願いしたらお姉ちゃんが来てくれたんだよ!」
一連の出来事がミチトとオルドスの策略だったことに気付いたグラスとプレナイトがジト目で「おじ様?」「おい、オルドス」と聞く。
オルドスは照れるような顔で「あはは、やられちゃったねぇ。私もてっきりパイライトちゃんのお願いだと思ったからグラスとオブシダンを向かわせたんだけどね〜。じゃプレナイトは強奪出来そうか心配だったら聞きに来てね〜、見極めはやるよ〜」と言って誤魔化していた。
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