第15話 ミチトのように、アクィのように、イブのように。

グラスは疲れる身体をおしてラージポットに転移する。

出現先をオルドスの館にして目の前にいるオルドスに「おじ様、少しお願いしてもいいですか?」と聞く。

優しく出迎えたオルドスは「うん。お疲れ様、グラス・スティエット。このまま3時間眠って限界値の更新をしなさい」と言って手をかざすとグラスは眠りについた。



3時間後、目を覚ましたグラスの前には金竜ことゴルディナが居て「体調はどうだ?」と聞いてきた。


「大丈夫です」と答えたグラスは自身がベッドの上に居る事に気付くと「…あ、私血まみれでお布団…」と言って飛び起きたがゴルディナは「平気だ、妾とお前の模式で拭き上げておいた」と説明をする。


グラスは髪や手を見ながら「え!?私のスレイブって…男の子や男の人も…」と言って真っ赤になるとゴルディナは笑いながら「男共は大人しくさせておいたから案ずるな」と言う。


服に関してはグラスの着ていた服は信徒達が奪い合うように洗っていて今はオルドスの用意した服を着ていた。

そこに扉が開くとオルドスがグラスのスレイブ達を引き連れて部屋に入ってきて「お疲れ様、グラス・スティエット。オブシダンはもう少しかかるから声かけは待ってあげてね」と変わらぬ笑顔で話してくれる。

グラスは少し安心した気持ちで「はい。ありがとうございます」と言った。


「さて、少し話してしまおうか、8人の模式達はAランクなんて言われていても名前も記憶も全て失っていたよ」

グラスはその言葉に横で整列しているスレイブ達を見て顔を曇らせる。


「だからこのままサルバンの孤児院で…トウテの苗字と新しい名前をあげるといいよ」

「はい。そうします。アゲートは?」


「彼女は君が責任を持って背負うんだよ。だからアゲート・トウテにするんだ。

そして彼女は普通の模式ではない。ツギハギになっていて、更にはグラス、君の凄まじい力を受けてしまった為にシヤ・トウテと同じ真模式になっている。この子を孤児院で任せる話には出来ない」

「…はい」


グラスはベッドから出ると模式達を一度オルドスに任せてトートイの元に向かう。


グラスはトートイに臣下を集めさせると全員の前で広域化した伝心術を使う。

何人かはハイガイ・レイジから術人間を買い上げていたようで真っ青になっていて答え合わせになっていた。



グラスはそれを見逃さない。

そして驚いたのは、ハイガイの兄ゴナー・レイジは弟の不始末を知らなかった事だった。


「これは真実なのだな、グラス・サルバンよ…」

「いえ、陛下。私はグラス・スティエットです。お見せしたものは全て真実です。ハイガイ・レイジがイノー・ブートと共にリプレスサウンドの治外法権地帯に隠れ家を用意してそこでナー・マステ人を攫っては術人間にして売り飛ばしていました。その1人に術を使わせてサルバンからミッシン・トウテを連れ攫って術人間にしてツギハギにしようとしたのはクレズ・レイザーでした」


何も知らないゴナー・レイジは真っ青な顔で震えて膝から崩れ落ちて「へ…陛下…、申し訳ございません」と謝る。


「貴方は屋敷の建造以外は何も知らなかったようですね」

「グラス嬢…」


「スティエットとして見ました。そして誰とはあえてこの場では言いませんが、あなた方の中にもナー・マステから来た術人間を買い求めていたのですね?」


そう言ったグラスの圧に数名の貴族は飲まれていた。


「陛下、本来でしたら当主の特権剥奪ですが、恐らく兄オブシダンの報告も合わせると国内の貴族達は皆揃って当主の取り替えとなり、国が困窮します」

グラスの言葉に温情がある事を期待した貴族達は次の瞬間に凍り付く。


「なので、かつてプエルト・レイジが我が高祖父から受けた罰と同じで如何でしょうか?」


プエルト・レイジはアプラクサスのアンチ派に居ながらカスケードのキャスパー派に乗り換えた。

だがミチトの生存によりカスケード・キャスパー共々キャスパー派は消えてなくなる。


保身の為に別のものに命じてアンチ派のボス、アプラクサスとリミール派のボス、シックを毒殺しようとし、それをミチトにバラされて死刑か改竄術を受ける事を選ばされ、改竄術を受け入れていた。

改竄されたプエルトは自分やレイジ家の儲けよりも国を愛し、国に尽くすようになっていて、その姿は同じキャスパー派に寝返ってアンチ派に戻った連中を恐々とさせていた。


それは何十年過ぎても語られている。


グラスはそれを持ち出してきた。

死ぬよりマシかも知れないが死んだ方がマシなのかも知れない。

困惑する中、トートイは「それは素晴らしい、頼めるかグラス・スティエットよ」と言う。


グラスは「はい」ととても美しい笑顔で返事をするととても怖い顔になって「ふふ、私はお爺様ほど優しくありません、アクィお婆様ほど高潔でもございません。イブお婆様のように冷酷になります」と言って一人一人の元に行って見合った改竄を施した。

1人は知りうる全ての罪をトートイに打ち明けてからそれを全て書き記し、以後は悪事を思いつくと吐き気に襲われるように、また別の1人は第一騎士団を引き連れてリプレスサウンドに残してきた遺体やメイド達の保護や弔いを行うまではマ・イードに戻りたい気持ちを消し去ったりもした、そして全員に個を捨て国の為に尽くしたいと心から願うようにした。

言い換えるとミチト以上の事をした。

まだ加減の出来ないグラスならではとなった。


グラスは保護をした模式8人とツギハギ1人の事を纏めて模式を9人保護したとトートイに告げるとラージポットに迎えに行って全員をサルバンに連れ帰る。

父母は大変な中良くやったとグラスを褒めた。

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