第6話 天啓を授かった子孫達。

グラスの話を聞きながら徐々に怒りに染まるミチト。

本人の身体ではないのにビリビリと窓ガラスが震え、息苦しいプレッシャーを放つミチトは「ちっ…この身体でどこまでやれるかわからないが手伝うから後は君がやるんだグラス。スティエットを名乗る覚悟がある以上、済まないがやりきってくれ」と言った。

グラスも伝説の人の後押しに「はい!」と返事をする。


頷いたミチトは視線をオルドスに移して「真式、今この身体の子と話してるけど、この子国を出て行くの?」と聞くと「うん。それが願いみたいだからね」とすぐに返事が返ってくる。


「オススメだけは教えてあげてよ」

「うん。やるよ」


「後は倒れるまで術を使うって言って許可をもらったからベッドかしてあげてよね」

この言葉で終わりが近いことを理解しているオルドスは本当に嬉しそうに「わかったよ。ミチト君、私は君に会えて嬉しいよ」と言った。


ミチトも照れながら「よく言うよ。まあ久しぶりだから良いけどね」と言うと真剣な表情になって「見ていろ!プレナイト・ロス!グラス・スティエット!オブシダン・サルバン!超域遠視心眼術!今回グラスが関わったツギハギ事件の関係者とツギハギを持つ貴族とツギハギを炙り出す!」と言って両目が金色に染まった。



「レイザー、ロムザ、バグ、レイジ…レイジはナー・マステに洞窟を作って模式の軍隊を作ってる…ツギハギもいる感じだな。グラス!位置を送る!お前はそこだ!」

「はい!レイジを倒してきます!」


「オブシダン!お前は真式だのなんだの言うな!レイザー、ロムザ、バグの位置を教えるからお前がやって模式達を助け出せ!やれるな!」

この言葉に身体をビクつかせたオブシダンは「…僕が行っていいのですか?」と聞き返す。


「当たり前だ!サルバンなら!レスなら!俺の子孫…スティエットならば、覚悟があるのなら立ち上がれ!オブシダン!スカロさんにあげた剣を一振り預かって使え!術に固執しなければなんの問題もなく勝てる。術は模式を助ける為に使うんだ!」

「はい!ありがとうございます!」


グラスとオブシダンがやる気になった所で「あー…術切れだね。じゃあ俺はここまでだ」と言ってミチトは笑顔に戻ると不安げにこちらを見る少女、パイライトの前に行って「もう君のマスターに戻るよ。マスターには君の支配力を下げるように言ったからね。マスターと2人なら知らない土地で一から始めるのも怖くないよね?」と聞くとパイライトは「はい。マスターとなら大丈夫です」と答える。


ミチトは「うん。ありがとう。プレナイトをよろしくね」と言ってネックレスを真式に返すとプレナイトの姿に戻りプレナイトは術切れで倒れた。



3時間後、プレナイトが起きるのをグラス達は待った。

ベッドサイドにいるグラスとオブシダンに「まだ居たのか?」と言うと2人とも穏やかな口調で「親戚だからね」「そうですよ」と答えた。


「…なんだ?2人とも迷いの晴れた顔をしてるぞ…」

「それは君もだよプレナイト」

「ええ、目の輝きが違います」


プレナイトはため息をつくとどこを見るでもなく中空を見ながら「…ミチトに言われた。ミチトを見た。覚悟が足りないと自覚する覚悟を持てている事を褒められた。不思議だった。怒られるかと思ったがパイライトを守る為だけに全身全霊を使え、模式を持ったのならその覚悟だけは必ず持てと言われた」と言う。


「そして俺の目がジェード・スティエットやライブに似てて懐かしい気持ちになれたと感謝をされた」

プレナイトは本当に嬉しい出来事だった顔をしていて清清しい顔をしている。


「良かったですね」

「ああ、良かったよ。お前達は?」


「私は道を示してもらいました。兄様も道をいただきました」

「僕も貴い者として力を奮ってくるよ」


「バカだな、ミチトなら器用貧乏だからって言うだろ?」

「あ、そうか…」


「つくづくサルバンなんだな」

「そうかも知れない」


出会って数時間。

ようやく3人で笑いあえていた。

それを待ってオルドスが部屋に入ってくる。

オルドスは部屋を見守っていたのだろう。

すぐにプレナイトを見て「やあ、起きたね」と言った。

プレナイトは返事をするように「オルドス…」と呟くとオルドスはニコリと笑って「さ、ミチト君に言われた事をするといいよ」と言った。


「ああ、パイライト…来い」

「はい、マスター」


部屋の隅で椅子に腰掛けて待っていたパイライトはゆっくりと歩いてくる。

子供らしからぬ歩き方でプレナイトの前に来たところでプレナイトは「支配力を最低まで下げる。本来のパイライトになるんだ」と命じた。


直後にパイライトは「マスター!おはよう!」と元気良く挨拶をした。

今までの姿からは想像もつかない愛らしい笑顔と声にプレナイトは穏やかに微笑んで「ああ、おはようパイライト」と言った。


「ミチトはすごいな」

「え?」


「メロ・スティエットと同じ、支配力を限界まで下げたらきっと守り抜きたくなる愛らしい少女に会えると言われたんだ」

「ミチトお爺様は素晴らしいお方だったな」


「本当ね。プレナイトはやはり国を出るの?」

「ああ、ミチトも受け入れてくれた。やはり今のこの国で平民の真式が模式を持つことはトラブルになる。

それにミチトにしか言わなかったがオオキーニは枯れ始めている。俺たちの代はまだしも孫の代にはかつてのオオキーニに戻り食糧難が起きる。そうならない為に俺の子や孫が真式だった時、大地の根を強制されかねない。お前達はどうする?」


グラスとオブシダンは顔を合わせて頷くと「サルバンとして、レスとして、スティエットとしてこの国で生きる。不義を暴いて家族を守り、悪に罰を与える」とハッキリ言った。

パイライトに懐かれて頭を撫でるプレナイトは呆れながらも「素晴らしいな、俺には無理だ」と言った。


話がひと段落した所でオルドスが「さて、ミチト君のお願いだよプレナイト。君達はこのまま南下をしてオッハーに行くと良い。今一番安定していて他国のものを受け入れているのはオッハーだよ」と言うとプレナイトは目的地が決まった事で「…南のオッハーか…助かる」と言った。


「ロスの名を捨て、トウテを名乗ると良いよ」

「ああ、そうする」


「後一つ、いいかな?」

「なんだ?」


「仮に後日、オブシダン君やグラスさん、2人の子孫達なんかが訪ねた時は会話くらいはするように子供達に言っておいてくれないかな?」

この申し出にプレナイトは「わかった」と言うと身支度を整えてパイライトを連れて南へと旅立っていった。

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