第5話 ミチトとの出会い。
無限術人間真式…オルドスはラージポットでグラスとオブシダン、そしてプレナイトとパイライトを待っていた。
屋敷に転移してきたグラスを待ち受けていたオルドスは「やあグラス、こんにちはオブシダン。そして久しぶりだねプレナイト」と語りかける。
グラスとオブシダンは領地が隣ということもあり、慣れた感じで「お邪魔しますおじ様」「お世話になります」と挨拶をする。
変わってプレナイトは「…俺を覚えているのか?」と驚きの表情でオルドスを見る。
オルドスは少し困った表情で「…そうだね。私は願いの具現化のせいで世界を見守ってしまっているからね」と説明をした。
プレナイトは不満げで訝しむように「なら何故グラスの訪ね人を見つけてやらなかった?」と聞くとオルドスは「……ミチト君とエーライ君との盟約さ。私は過去の人、この国、ラージポットや過去の人たちに危険が及ばない限りは介入してはならないと言われているからね」と答えた。
「我慢できるのか?」
「するしかないが本音だね。まあ盟約で君達から私の元を目指してくれた時は普通に接していい事になっている」
これが初耳だったプレナイトは「…ほぅ。ライブの遺言には無かったな」と言う。
「…ライブさんもイブさんも遠慮してくれたからね。サルバンはアクィさんがグイグイ来たから、今はもう居ないんだけどこの2人のお姉さん、コーラル・サルバンなんてしょっちゅう遊びに来ていたよ」
「成程な。それで、俺のことを見ていたのなら俺が国を捨てる事はわかっているな?問題はあるか?」
「いや、何もないさ。トートイ君は泣いちゃうだろうけどね。まあ私からは知らぬ存ぜぬを貫くよ」
「助かる」
話が済んだことで旅立とうとするプレナイトに「まあだが君には少し手向けをしよう」とオルドスが言った。
「何?」
「ほら、いいから…伝心術」
オルドスが伝心術を使うとプレナイトは驚いた顔でオルドスを見て「…これは…」と聞いてしまう。それはイメージはあったが、親達は教えてくれなかった術だった。
オルドスは頷いて「君には使えるよね?サンダーデストラクション、インフェルノフレイム、氷結結界、アースランスだよ。後は転生術だ」と言った。
「転生術?」
「ミチト君は死が間近に迫った時、万一自分の死後に器用貧乏が必要になった時の為に作った術さ、まあこれは私が改良した二式だよ」
「これで俺に何を?」
「…これを貸すよ」
そう言ってオルドスが取り出したのはミチトの遺髪が入ったペンダントだった。
「ペンダント?」
「ミチト君の遺髪入りさ、本当は大っぴらに出すなって言われてるんだけどね。国を捨てるスティエットは初めてだからミチト君も許してくれると思うよ」
「俺に力が足りなくて暴れるなんて事は?」
「万に一つもないよ。その万に一つがあれば私が奪術術を使おう」
この言葉の頼もしさはニコニコと温和な印象しかなかった男とは大違いだった。プレナイトは「わかった」と言ってネックレスを身に着けると転生術と唱えた。
光と共に現れたのはミチトで目の前のオルドスを見て「真式?これは何?」と言う。
オルドスが答える前に周りを見て「ここ、ラージポット?目の前の子は真式で隣の子は真式に片足を入れている。そしてこの子は模式だがまだ支配力を低下させてない…」と言った。
グラスとオブシダンは伝説の人に会えた喜びで前に出ながら「ミチトひいひいお爺様」「僕はオブシダン・サルバンです。僕は真式になりかけていますか?」と話しかけてしまう。
ミチトは驚いた表情で「ひいひいお爺様?俺の孫の孫?サルバン?アクィの?」と聞くとグラスが「いえ、私達は母方はイブお婆様の子孫で父方はアクィお婆様の子孫になります」と説明をした。
「え?イブの曾孫とアクィの曾孫が結ばれるの?マジか。あー…、わかった。これ転生術か…、真式が完成させてくれたの?」
「うん。しかも少し改良した二式ね」
「改良?」
「一式は完全に本人になりきってしまうけど二式はある程度の意識が残ってる。その身体はライブさんの子孫、プレナイト君さ。とりあえずオブシダン君が挙動不審だから少し話してあげてよ。それで何があったかはグラスさんに聞いてあげて」
「まあ俺を呼ぶってのは余程だから良いけど、ライブの子孫まで真式になるのか…。で、オブシダンは君だね。何?」
オブシダンは真剣な面持ちで縋るように「…僕は生まれた時は3人きょうだいで1人だけ真式ではなかったんです。だから努力はしました。今も怠っていません!本当に今の僕は真式になりかけてますか?」と聞く。
その目を見たミチトは一瞬の間の後で「…気負うな」と声をかける。
「フユィと同じになってるよ。ラミィもトゥモも真式で自身だけが違うと気付いた時のフユィも落ち込んでいたよ。でも俺はタシアのように真式ではないとしても力を振るってくれた子がいる事をフユィに言ったし、フユィ自身ジェード達と暮らす中で自分を見つけられた。フユィは結婚するまで真式にはなれなかったし、なった後は遅かったとぼやいたけど腐らなかったよ。やれることをやっていた。それに君は十分な素質を感じる。それ以上の力を持つと良くないと本能がセーブしているのかも知れないね」
天啓だった。
似た言葉は何人もが何回もしてくれたが心に響かなかった。
他人事の詭弁にしか聞こえなかった。
だが実際に伝説の人からの言葉にオブシダンは「…はい。ありがとうございます。会えて嬉しいです」と涙ながらに言った。
ミチトは「俺もだよ。トゥモやアクィを見てるみたいで嬉しい気持ちになったよ」と言って微笑むと今度はグラスに何があったかを聞く。
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