第4話 親戚との出会い。
謁見の間を出て、帰る前にひとまず別荘に寄っていく事にしたグラスとオブシダン。
「兄様ごめんなさい」
「何がだい?」
「腕輪よ…。私がサルバンを離れるのに兄様の仕事が増えてしまったわ」
「平気だよ。それどころか悔しいよ。僕も真式なら僕が戦いに出てサルバンをグラスに頼めるのに…」
オブシダンは普段の優しい面持ちではなく、厳しい表情で文字通り悔しそうに言うがグラスはすぐに「何言ってるの?兄様が居てくれるから私が出られるのよ。兄様が居てくれればサルバンは残るもの」と言い返す。
「グラス、危険は理解しているんだね?」
「あはは…、うん。ツギハギが何体も出てきたら私は弱いスティエットだから。兄様が羨ましい、真式とか抜きにしてもそんなに強いんだもの」
弱いスティエットと言われてオブシダンは「グラス…」と言うが言葉を続ける前にグラスから「別荘で少し休みましょ?疲れてしまったわ」と言われてしまった。
別荘に着くとグラスは扉に手をかざす。
別荘は大体10年から15年周期で建て直されていて、今は5代目の別荘の形で何回も建て直されている。
別荘の扉には子や孫が増えた時にミチトが認証術と言う術を生み出して認証用の術を持っている人にしか開けられなくした。
100年経ってもメイド達は掃除なんかの目的で入っていて、その際にはミチトが作った認証用の鍵を使う必要がある。
その別荘の扉の鍵は開いていた。
グラスが「え?鍵…、開いてる…」と驚きを口にし、オブシダンが「メイドかな?」と言う。
別荘を使うと言う事は誰かに見られてスティエットだとバレてもいい覚悟のあるものだけになる。だが、今現在スティエットを名乗る者は現れていない。
グラスとオブシダンが中に入ると二階の生活スペースにはモスグリーンの髪色をした目つきのキツい男が1人の少女と居た。
目つきのキツい男がグラスとオブシダンを睨みつけて「…親戚か?」と聞くと、グラスが答える前にオブシダンが「そうみたいだな。僕はオブシダン・サルバン」と名乗った。
「サルバン?アクィの直系か?メロか?」
「直系と言っても良いけど私達はレスでもあるわ。私はグラス、あなたは?」
「ああ…噂に聞く、アクィの直系を父に持ってイブの直系を母に持つ連中か。俺の名はプレナイト・ロス。ライブの直系だ」
目の前の男は立ち上がる事なく着席したままお茶を飲み、「茶は淹れたばかりだから飲めるが飲むか?」と聞く。
「兄様、私がやるから兄様も座って」
グラスはそう言ってお茶の用意をしながらオブシダンとプレナイトの話を聞く。
「プレナイト、君はどうして別荘に?観光かい?」
「いや、安住の地を探す事にした。この国はもうダメだ」
この言葉に「ダメ?」と聞き返すオブシダンにプレナイトは「ああ、見た感じお前さん達は無茶苦茶だな。妹の方が真式だが今現在の能力値は兄の方が強い。お前たちこそなんで王都に居る?南のサルバンは平和なのか?」と聞く。
グラスはここでサルバンにも人攫いが訪れて孤児院の子供が連れ拐われてツギハギにされて殺された事を伝えた。
「トートイに報告か…。それで?どうするんだ?」
「私はスティエットを名乗ってアクィお婆様の「愛の証」を手にしました」
「愛の証」を取り出して見せたグラスにプレナイトは「やめとけ、ろくな事にならない。知ってるだろ?王都の第一騎士団も貴族もグルで人攫いをして模式を集めてる」と言った。
「だが…君は真式か?」
「ああ、ライブの血筋で真式は珍しい。ライブは無限記録盤との相性なんだろうな…妻達の中でライブの戦闘力は一段以上劣っていたからな。親族は皆戦闘のポテンシャルはあっても真式ではなかった。俺はロスの名に従ってドウコに住んでいた。ああ、レスも何人か居たな」
ミチトの子供達は皆真式の条件をクリアせずに生まれながら真式になる者もいた。
目の前の男、プレナイト・ロスも無限術人間真式だった。
「だが逃げてきた。北のドウコは散々だ。オオキーニのデススタンバイはプラチナサラマンダー…イニット・ホリデーが奮闘してくれているがそれでも無限魔水晶と無限記録盤は流出する。王都の管理も甘い。そして模式が作られて無責任な施術で暴走する。
この娘もたまたま目の前に居たから俺が保護をして支配権の強奪を行った。記憶も何もない。だからパイライト・ロスの名を与えて2人でドウコを捨てた」
大人しく聞いていたパイライトはプレナイトを見て「マスター?」と言う。
プレナイトは子供相手でも表情を崩さずに「大丈夫だ。なんでもない」と言った。
「この先はどうするんだい?」
「さあな、平和な国に行きたいと思ってるさ」
「平和な国?」
「ああ、ナー・マステはいい噂を聞かないからオッハーかニー・イハオに向かおうと思う」
この言葉にオブシダンが「そんな、スティエットが国を出るなんて…」と驚きを口にする。
「だがここにいてなんになる?俺もスティエットとして立ち上がるか?ゴメンだ。いずれ能力限界を迎えて大地の根に力を流しても喜ぶのはこの惨状を生んだ貴族達だ。今だって出来損ないの模式達をミチトのように助け続ける羽目になる。俺はミチトみたいに人の命を抱えるような「偉大」にはなれない。目の前の少女を守る事が限界だ」
プレナイトは真剣に状況を見て考えていた。
これ以上は言えないがそんなプレナイトにオブシダンとグラスはある提案をした。
「ひとまず嫌ならサルバンまで送るから、良かったらラージポットに行ってオルドスおじ様と話して?」
「僕もそれがいいと思う。同じミチトの子孫として君の考えを否定はしない。でも同じ真式としてオルドスおじ様と意見交換だけはして欲しいんだ」
「無限術人間真式か?まあ…それはいいかもな。会ったのは寺院に視察に来た大昔だからな」
この言葉にオブシダンはグラスに「4人だからグラスが頼むよ」と言いグラスは「ええ、転移術」と言った。
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