第四本 ジーン・ウェブスター作「あしながおじさん」
あぁ…この文章を書き始めたのは夏になる前だったというのに…下書きのまま放っておかれて、今はもう秋……(このフレーズにメロディつけて歌えるあなたは昭和のアイドル世代です)…。
本当は夏の間に書いて投稿するはずだったのに…。
気まぐれ投稿って、こういうことになるのね。
ということで(どういうことだ?)、仕切り直して。
そう。私にとって夏といえば夏休み、夏休みといえば読書、読書といえば「あしながおじさん」か「窓ぎわのトットちゃん」なのです。
不思議なもので、私は小学生~大学生くらいまでの間、夏になるとこの二冊を必ず読んでいました。なんか夏になると、読みたくなる小説だったのです。
漫画であればともかく、小説というのはなかなか再読というのをしないものです。漫画といった視覚情報を大いに利用した表現装置は、直感的に世界に入れます。時間がかからないので、読むという作業もさほどハードルが高くない。
一方、小説はいうと時間をたっぷり使って読む分、ガッツリ世界に没入します。読むことのハードルが漫画とくらべて高い分、いい作品であればあるほどに、読み終わった後にはとてつもない充足感を得る。と同時に、その小説世界から隔絶されたという孤独感で、とてもとても気力が削がれます。
そのため、私の小説の再読率はそんなに高くありません。だいたい一回読んで終わりです。まして横文字作家の小説なんて、そうそう読まないのです。
そんな私が外国のこの小説だけは、オチがわかった後でも、何度となく読んでしまうのです。
この『あしながおじさん』について、もはやわざわざ説明するまでもないでしょう。(かのハ◯ス名作劇場でもやってたし)
この本が出版された当時においては、新たなシンデレラ・ストーリーだったのではないでしょうか?
孤児のジェルーシャ・アボット。名前は墓石から、姓は電話帳の最初のページからつけられた…という女の子。彼女は『ゆううつな水曜日』という作文を認められ、匿名の紳士からの援助を受けて大学に通うことになります。それまで孤児院といった閉塞した世界の中で暮らしていたジェルーシャにとっては大学生活はとても新鮮なものでした。
楽しいこと、嬉しいこと、悔しいこと、怒ったこと、悲しいこと……新たな生活で感じた様々なことを、彼女は手紙に綴ります。いまだ顔も見たことのない、後ろ姿しか見ることのなかった足の長い紳士『あしながおじさん』に向けて。
いろいろとそれまでに小説を読んできた私にとって、手紙形式で綴られるこの小説は珍しくもあり、新鮮でもありました。
またこのジェルーシャ・アボット(愛称ジューディー)がねぇ、なんとも面白くて楽しいお嬢さんなんですよ。プライドが高いようでいて、やっぱり孤児という引け目もあって、でも孤児であったことすら笑い飛ばすくらい元気だったりして。
しかも当時小説を書き始めた私にとって、ジューディーはある意味同志でもありました。彼女も作中で作家を目指していたから。
この小説を読んで、『類語辞典』なるものの存在を知り、ちょっと大きめの本屋まで探し回って買ったものです。(その類語辞典はまだ現役。ボロボロやけど)
あとはキッド(仔山羊の皮)の手袋の現物を見た時には「おぉ、これがキッドの手袋というやつかぁ!」と、感動したものでした。
そんなジューディーがだんだんと一人の男の人に対して特別な感情を持っていき、「あしながおじさん」に手紙で相談するんですわ。
このあたり、最初に読んだ時は「ふーん」ってなモンだったわけですが、すべてが明らかになった時にはもー! もー! 女子のトキメキ大爆発ですわ。
何回読んでも、もうキャー! ですわ。
キュンキュンですわ。
『キャンディ・キャンディ』好きやったら、そらハマるやろー!
丘の上の王子様やろー! アルバートさーんっっ!!
………………すみません。横道それました。
なにかね、この本を読んだ印象っていうのが『瑞々しい』んです。本の中に『ライムの蜂蜜漬け』と若草物語についての描写があるんですけど、なんかライムの香りさえ漂ってきそうな清新さがあるのですよね、この『あしながおじさん』には。
ちなみに、続編もあります。こちらはジューディーの親友であるサリーの話。ジューディーのいた孤児院の院長になったサリーの奮闘と、気難しいお医者さまとのちょっとしたラブ・ストーリーなんですが、こっちもえぇのよーっ!
ジュディは結婚して子供連れて海外旅行してます。
幸せになってなによりです。
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有名な本なので、色々な出版社の訳があると思いますが、私が読んだのは以下の通り。
『角川文庫 あしながおじさん 厨川圭子訳』
訳者の方にも感謝です。あなたの美しくて楽しい訳のお陰で、最後まで楽しく読めました。今も読み返しています。
ありがとうございます。
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